アンシュッツのフォーカルプレン・シャッタ                         2000-12-1 


■今まで何の意識もせず、フォーカルプレンシャッターと呼び慣わしてきたが、その意味は何なんだろうとふと思った。だれしもバルナックが設計したゴム引き幕を思い浮かべる。先幕の後を後幕が追っかけるスリット・シャッタである。しかし、このイメージは二重に誤りであるようである。フォーカルプレン・シャッタを発明したのはバルナックではないこと、スリット・シャッタはフォーカルプレーン・シヤッタと同義でないことによる。

■フォーカルプレンシャッタについて「カメラメカニズム教室2:金野剛志,現代カメラ新書No.82,朝日ソノラマ]が以下のように書いてある。「その定義にははっきりしないところがある。……大変常識的ではあるが……シャッターを形成している羽根、幕などの射光部材が、撮影レンズの近傍に置かれているものをレンズシャッターといい、感光材料の近傍に置かれているものをフォーカルプレーンシャッターと言う。……この中間的なものが出てくると果たしてレンズシャッターと呼ぶかフォーカルプレンシャツターと呼ぶか迷うことになる。」ということである。

■上の文章もいかにも頼りない。フォーカルプレーンとは言われてみれば当然なように「焦点面」である。今までこんなことさえ知らないのだからラチはない。つまり画像が焦点を結ぶ感光面に設置してあるものをフォーカルプレーンシャッターと呼ぶ。だから定義は明快である。とすれば、ペンFのロータリシャッターもフォーカルプレーンシャッタと呼んでよいことになる。

■19世紀の後期、プロシャのオットマール・アンシュッツは鳥の飛翔を写しとめるために高速シャッタの必要性を感じて、従来からあった布幕製のローラーブラインドシャッタを改良、細いスリットを設ければ高速シャッタになることを考え出し、1888年に可変式スリットシャッタのドイツ特許を取得した。これをゲルツ社がゲルツ=アンシュッツ・フォーカルプレン・シャッタとして製品化したものである。……と、酒井修一さんの「ライカとその時代」は書いている。

■その時から1/1000シャッタをもっていたというのがすごい。一般に技術開発は低速から高速へ向かうが、このフォーカルフレン・シャッタでは、むしろ低速シャッタを設計する方が困難であったというのも面白い。ところで、最初のバルナックに戻るとして、バルナツクは35mmカメラを発明していないし、フォーカルプレン・シャッタも発明していないし、レンズはテッサーの真似だし、一体何を発明したのかとおっしゃる方もおられようが、バルナックはただ一つ「ライカ」を発明したのである。