鉄の写真家マーガレット・バークホワイト                             2000-9-17 



クライスラービルの頂上近くで仕事をするマーガレット・バーク=ホワイト,ニューヨーク市,1934年
マーガレット・バーク=ホワイト写真集:ショーン・キャラハン解説,岩波書店,1999年第1刷 より

■Margaret Bourke-White(1904--1971) 上の一枚の写真が何よりも彼女の仕事ぶりを物語る。まず目立つのがカメラ。乾板式のレフレックスカメラである。手元の雑誌類からは機種名を特定できない。命綱は見えない。ウエストを絞るベルトをしているから見えないように装着しているものと思われる。問題はカメラの向き、彼女は空を向いて写真を撮ろうとしている。1934年にはエンパイヤステートビルは建っているから、それを狙っているのか。ようするに効果を計算した作為的な写真ではある。このようにして撮影された彼女の写真がフォーチュンやライフのグラビアを飾ったのである。

■上の写真集の解説に「……劇的な効果、ロマンティックな雰囲気、幾何学模様、大胆な背景といった彼女が作り出すイメージ群は、たちまち、大衆に受けいれられるところとなり名声を獲得する。これらによって、日常のありふれた光景が、堂々とした風格のある産業写真に変貌することになった。」とある。彼女の建造物や巨大装置の写真はどれもアオリがよく効いてパスペクティブより垂直に伸びる線が強調される。スターリン体制における写真やポスター表現を彷彿とさせる。ライフ創刊号の表紙がその最たる例である。

20世紀の妖怪の正体:荒俣宏編,角川書店,
平成7年初版より
ライフ創刊号(1936-11-23)の表紙写真:
フォーベックダム(モンタナ州),
マーガレット・バーク=ホワイト写真集より


■事実彼女の写真に対してソ連政府は同志的感情を持ち、1929年にソ連革命政府から第一次5ケ年計画の成果の取材を許可された最初の外国人となるのである。しかし彼女の写真集におけるロシアでの写真には彼女のスタイルともいうべき壮大な造形物は採録されていない。むしろ、ロシア側が期待したような体制賛美的映像より、ロシアの市民にその目は向けられる。

■しかし彼女の撮る人々はみな硬直している。基本として彼女が機械を撮るのと同じ手法である。それが被写体の強さとして訴えてくるのが特徴である。だから、それが明らかに演出であることが分かるようなシーンでもつい引き込まれてしまう。まさにグラフ誌向きの写真家であった。



【カメラの触感】