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さむーい渦(原色の空3)

2000年2月12日 のほほ


「2月8日の天気について解説せい」というリクエストがあったので、ごく簡単に書いてみよう。

まず、大前提として、次の事柄を知っていなければ、残念ながらお話に参加できない。
  • 冷たい空気は暖かい空気より重い。
  • 上昇気流は、空気を上空に送り込んで雲を作る原因となる。

この2点をふまえて、解説してみる。

この日、2月8日の天気図を見ると、日本海に小さな低気圧がある。

 この日の地上天気図
この日の高層(700hpa=約3000m)天気図

この低気圧がくせ者で、見た目は弱いのに、上空には強い寒気を持っている。
高層天気図(上空の天気図)を見ると、普通の天気図では弱っちく見える低気圧が、実は結構強いことに気づく。
こういう低気圧を「寒冷渦」つまり「さむーい渦」という。

「なぜ、強い寒気=強い低気圧」なのかというと、ここで最初にあげた前提が生きてくる。
つまり、上空の方が地上より寒いということは、重い空気が上にあることになる。
ということは、重い空気は重力によって下に降りてきて、代わりに下にあった空気が上に持ち上げられるわけだ。
空気が持ち上げられれば、上昇気流が発生して雲ができる。
上空と地上の温度差が激しいほど、上昇気流は強まり、上昇気流が強ければ強いほど、雲は発達して、強い雨を降らせる。
寒い空気が下に降りてくるのだから、地上の気温は急激に下がる。しかも真冬。雨ではなく雪になった。
発達したこの雲は、夏の夕立を降らせる雷雲と同じ種類で、突風や雷を引き起こす。

 この日の気象衛星画像

でも、この強い嵐は、所詮夕立とおなじように範囲が狭いので、数時間経てば去っていく。


ちょっとくそまじめになってしまっが、おわかりいただけただろうか。
注意してほしいのは、この手の「寒冷渦」は、冬だけではなく一年中あらわれるという点である。
初夏などにこれが通過すると、雪ではなく「ひょう」が降って、ガラスを割ったりする。
さらに、勢いよく上空の寒気が降りてきたりすると、「ダウンバースト(マイクロバーストともいう)」という現象が起こって、飛んでいる飛行機を地面にたたきつけたりもするす
また、竜巻を発生させたりすることもある。

天気図で、このようなちっこい低気圧を見つけたら要注意ということである。

2000.2.8 寒冷渦の影響で、全国的に荒れ模様。吹雪や雷、突風が各地で荒れ狂う。

この後も、この年の5月には寒冷渦が関東地方を通過して雷雲が発達、でかい雹(ひょう)を降らせ、農作物や外に駐車していた車などに被害を与えています。
小さく見える低気圧には要注意。



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