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空振り<見逃し(原色の空4)

2000年3月 のほほ


野球の話ではない。お天気の話である。

先月20日、本州の南岸を低気圧が通り過ぎ、関東に雨が降った。
この前日、気象庁は「関東に大雪のおそれあり」として、注意を呼びかけた。
東京でも5センチ程度の降雪量(積雪量ではない)が予想された。

ところが、実際は最初に言ったとおり雨で、雪にはならなかった。
結論から言うと、低気圧が予想以上に陸地に接近して通ったため、南からの暖かい空気が入り込み、雨になってしまったわけだが、大雪に備えて準備した企業などからの非難の声が、気象庁に寄せられたという。

 当日の天気図

この時期、関東地方が悪天になるパターンとしては、南岸を低気圧が進む場合がほとんどだが、雨か雪かを見極めるのは、非常に難しい。目安として、
  • 地上の気温が0度以下なら当然雪だが、3度以下でも雪の確率が高い。
  • 低気圧が、鳥島から八丈島の間を通過すると、雪の確率が高い。それ以上陸地に接近すると雨。
  • 上空1500メートル付近の気温が−4度以下だと、雪の確率が高い。
今回の場合も、見極めが難しかったと思われるが、ではなぜ気象庁は大雪にこだわったのか。それは、
「空振り」より「見逃し」の方が批判が大きい
からである。 たとえば、「雨」と予報して雨が降らなかった場合と、「雨は降らない」と予想して雨が降った場合とを考えていただきたい。
おそらく、雨を「見逃した」後者の方が、世間一般の受けが悪いだろう。

気象庁の予報は、結構、世間の反応を考えながら出されているのだ。
今回の場合も、「雪」と予報しておいた方が、予報しないで雪が降ったときよりも、文句が少ないと踏んだにちがいない。

もっとも、だからといって気象庁を非難するのは、少々酷であろう。
かつて、天気予報がいまほど普及していなかった時代、台風や嵐を「見逃した」ばかりに、数千人単位の死者が出たこともあった。
気象災害の被害をなくすのが、気象庁の使命とされてきたのである。

しかし、時代は変化し、天気予報の的中率が上がるにつれ、いまでは「空振り」も「見逃し」並に批判にさらされるようになった。
利用者の側としては、気象庁が「空振り」してもいいように、対策を練っておくことが必要だ。
そのためには「確率予報」を上手に利用するとよいのだが、これは話すと長くなるので、次回に譲ることにする。

※降雪量とは、降った雪が溶けずに、しかも重みで潰れずに積もった場合の量を言います。実際は、降雪量1センチと言っても、地面をぬらすだけで、積もらずに溶けてしまったりするので、降雪量をそのまま積雪量と受け取らないように注意して下さい。
ちなみに、雨の1ミリが降雪量の1センチに相当します。

2000.2.20 南岸の低気圧の影響で雪が降ると予想されるが、はずれて雨。



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