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BI論支持者に思うこと

2010年3月16日 のほほ


珍しく権丈教授が新聞に登場していた。

対論「新社会のデザイン――吉川洋東京大学教授・経済財政諮問会議議員」 『朝日新聞』2006年2月24日朝刊
 国民の間で、「政府は信頼できない」というイメージが根強いのはわかるが、冷静に考えれば「もう少し住み心地のよい社会を作るために、政府を道具としてうまく活用する」という選択肢は十分にありうるし、いずれその方向に動くと思っている。

 「国ってのは滅びるものなんだよ」と言っていた権丈先生にしては、まだ希望を持たれているご様子。
 個人的にはそうあってほしいが、どうも世の中にはそう思わない人がたくさんいるようだ。

ベーシック・インカムへの違和感 「労務屋ブログ」2010年3月15日  (以下抜粋。全文はリンク先をご参照下さい)
今朝の日経新聞の連載記事「インタビュー領空侵犯」で、経済評論家の山崎元氏がベーシック・インカム(BI)の導入を主張しておられます。

「例えば1人月5万円を配ると、家族4人なら月20万円。なんとか暮らせます。生活保護や年金、失業給付などはBIに一元化します。…社会を維持するためには所得の再配分が必要です。…”中抜き”無しでやる方が効率的です。BIは社会保障を単純化し、透明・公平・低コストにします」

「収入の少ない芸術家などの世帯でも、生活のベースとしてのBIがあれば成り立つし、会社員が大学に入りなおすことも可能になります。多様な生き方を促し社会が面白くなりそうです。…給付金の範囲内の生活でよければ、働かない自由もあっていいでしょう」

 なお、余談ながら、どこかでコピペできないものかと思ってウェブ上を渉猟していたら(結局コピペはできなかったのですが)、あちこちのブログでこのコラムが取り上げられていて、しかも大半は好意的に評価しているので驚きました。で、その大半、とまではいかないにしても相当部分は、ここに反応してるんですよねぇ。

「…例えば年金は積立金で無駄な施設が作られ官僚が天下りします。」
「非常に困難です。今の社会保障の仕組みで食べている官僚が多いからです。BIは官僚機構をシンプルにして権限と天下りを取り上げる、行政改革のツールでもあります。それゆえに大きな抵抗が必至です。…」

 うーん、官僚が抵抗するものはすべて正しいとか、天下りをともなうものはすべてけしからんとか、きわめて情緒的に短絡した議論が多いこと多いこと。印象としてはザクザク出てくるという感じです(もちろん誇張です:具体的なブログ名を出す気もありませんのですべて私の印象論としてお読みください)。まずはなんとなく良さそうな話を上手にされたあとで、続けて「でもこれは官僚が抵抗するからできないんですよねぇ」と言われると、もう最初の話が無批判にすばらしいものに思えてしまうという、何なんでしょうかねこのメンタリティは。催眠商法に使えるかもしらん。いやホント、シャレにならなかったりして。(冗談ですよ、冗談)


 ま、予想通りの反応ですな(苦笑)
 前段の「芸術家にはいい制度」というあたりが、そっちの世界に民主支持者(いまはどうだかわからないけど)が多い理由なのだろう。
 そして、「政府」「国家」「官僚」が嫌いな人たちが、民主党を政権につけ、BIを支持している、という見立てはほぼ正しいのではないかと思っている。
 (政権交代マンセー本を出したロキノンの渋谷社長とか、おそらくBI支持なんだろうな。あとはアニメや芸術の専門学校経営者とか劇団主宰者とか…ここは筆者の妄想)

 でも、「子ども手当」の不正受給を懸念する声がこんなに大きくなっている中で、BIを支持する人はどう対応するのだろう。
 普通だったら「不正受給がないかこまめに確認」なんだろうが、「中間搾取する役所」が大嫌いなのだから、人手は掛けたくない。

 そこで出てくるのは、おそらく「国民総背番号制」。
 労務屋さんのブログでも、このエントリーの一つ前にそんなコメントがついてるしね。
 「全国民に口座を登録させ、そこに金を自動的に振り込むだけで済む」というわけだ。「これなら役人無しでできるでしょ?」と。

 うまくいくのかなあ。
 奈良時代の「班田収授法」の頃のように、戸籍に架空の家族がたくさん増えることを想像してしまう。
 そんなことを言ったら、次はこんな話が出てきそう。

 「全国民にICチップを埋め込む。生命反応にリンクして情報を…」
 おいおいSFかい!
 笑い話じゃない。それだけ実現は困難だよってこと。官僚の抵抗とかそれ以前に荒唐無稽過ぎなのさ。



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