| 「釣りの話」 2001.10.16 近頃、久しく止めていた釣りをまた始めた。 釣りといってもバスフィシングの様なメジャーなものではなく、鯉の浮釣りという極めてマイナーな類の釣りである。 休みの日には、まだ夜が明け切らぬうちに起きて目的地に向かう。朝食はいつも、コンビニで買うサンドイッチと缶コーヒーである。ハンドルを切りながらの朝食は危なかしくもあるが早朝のこと、すれちがう車とて稀だ。早朝ラジオの妙に生真面目な番組を聴きながら、目的地に向かっているという期待感が高まる。缶コーヒーを飲み干したら一服つけてあとは運転に専念するだけ。 あたりまえのことだが、鯉はもちろん海にはいない。したがって海辺に住む僕は自ずと山間に向かって走行することになるのだが、周囲が段々と緑におおわれてくる感覚は素敵だ。思うに、海辺から山間に走る感覚と、山間から海辺に走る感覚とではやはりニィアンスが異なるだろう。海へ向かう感覚が解放的とするなら山へ向かうそれはちょっと禁欲的な感じがするのだが如何だろう。 やがて山深い中、突然に視野が開ける場所がある。「湖」・・・目的の場所である。 夏場の風の無い朝なら、薄っすらと靄が立ち上り 湖面は鏡の滑らかで一様だ。ただ魚が水面でジャンプする「もじり」だけが静かな波紋となって湖面を揺らしている。 あとは車を置き そそくさとポイントに向かうだけだが、この時は流石に一分一秒が惜しいという感じでセカセカしてしまう。浮釣りには最初、ちょっと面倒なセッティングがあるのだが、それを終えると座を構えて最初の一振りとなる。 ハリに付いた練り餌が宙で大きな弧を描いて、やがてポチャリと水面に落ち水中に沈んでゆく。餌が完全に沈み切ると浮が立つのだが、水面からチョコと出た浮のトップがこの釣りの生命線である。 あとはひたすら餌を打ち浮が動くのを待つのみ。ただ動かぬ浮を一日見続けるだけの日も珍しくはない、そんな釣りである。 でも浮が沈み、竿が折れる程撓る瞬間があるからそんな日でも辛抱できるのかもしれない。見ることの出来ない水中で今巨鯉が餌を吸い込んでいるかも・・・そんな想像がこの釣りというイメージのゲームを成立させている。 |