パレスチナの中のヘブライ語

パレスチナ・オリーブのオリーブオイルは、イスラエル領に入っているガリラヤ地方のパレスチナ人の村デイル・ハンナから来ています。(「ガリラヤのシンディアナ」は、前号にも書いたように、パレスチナ自治区西岸のカーフィーン村などからもオリーブ・オイルの買い入れをしています。)また、スタッフのパレスチナ人もイスラエル国籍を持っているし、ユダヤ系のイスラエル人スタッフとともに働いています。

シンディアナの中で使われる言葉は、基本的にはパレスチナ人の母語であるアラビア語で、ユダヤ系のスタッフもアラビア語を勉強すべきだという信念に立って、みんなアラビア語が使えます。が、実際には、イスラエルで学校教育を受けたパレスチナ人たちは、完璧にヘブライ語を使いこなせますので、いっしょに仕事をするなかで、ヘブライ語を話すこともあります。あるいは、もう双方の言語がチャンポンに混じっているんですね。単語レベルで混じるとか、一文ごとに入れ替わるとか。

でも、どうしてそういうことが可能かと言うと、そもそもの語源が共通であるため、文法構造や単語が相当共通している。歴史的にもそうだし、またヘブライ語の場合、古代ヘブライ語から現代ヘブライ語を作りだす際にも、多くの現代的な単語をアラビア語から取り入れているという事情もあります。

先にも言ったように、パレスチナ人でもイスラエル国籍者はヘブライ語教育を受け、日常的な情報(新聞やテレビ)の多くはヘブライ語。どうしても、母語であるアラビア語から疎外されて、ヘブライ語に依存せざるをえない状況にあります。だからこそ、シンディアナの連携団体は教育活動を行なっていて、パレスチナ人が、語学の問題だけでなく自らの歴史と文化を学ぶことさえもが妨げられていることを問題として取り組んでいます。パレスチナ人の母親学級やユース・キャンプなどがそうです。

ヘブライ語がどのような言葉か。実は、昨年まで輸入していた630ccの大瓶が、ヘブライ語のラベルでした。そのことでお客様からお問い合わせをいただいたことがります。

シンディアナでは、イスラエル国内の市場向けにも出荷しているので、ヘブライ語のラベルを作っていたのです。コストの問題もあって海外向けも、そのラベルをしばらく兼用していました。もちろんいまは大瓶(500cc)にもきちんとアラビア語ラベルを使っています。

シンディアナに限らず、イスラエルとパレスチナ自治区は経済関係が深いために、そしてイスラエル国内でも20パーセントの人口がパレスチナ人であるために、「ヘブライ語表記=イスラエル産」、「アラビア語表記=パレスチナ産」というふうには決して分けられません。イスラエル国内でもアラビア語表記の商品も製造していますし、パレスチナ自治区(西岸・ガザ)でもヘブライ語表記の商品を製造しているのです。

もちろんそれは、「お互いの市場に売るため」ということではあるのですが、でも決してそれは対等な経済関係ばかりではありません。いわば「従属経済」のような仕組みの中で、パレスチナ側がイスラエル企業の下請けをしていたり、またパレスチナ人労働者がイスラエル国内のいわゆる「3K労働」に従事せざるをえないとか、最近はそこからさえも排除されつつあるという問題もあります。シンディアナや同じグループの労働組合(WAC)も、このような労働者の問題に積極的に取り組んでいます。

本当は、パレスチナ人学生や労働者の中のヘブライ語の位置や、イスラエルの中の現代国家語としてのヘブライ語そのものにおいてさえも、さまざまな問題があるんです。が、その話は、また別の機会に。 (早尾貴紀)