山形国際ドキュメンタリー映画祭から
-パレスチナ関連の映画の紹介-

ミシェル・クレイフィ/エイアル・シヴァン監督『ルート181』

前号でも紹介しましたが、山形国際ドキュメンタリー映画祭で最優秀作品賞を受賞したこの作品は、映画祭前から国際的に注目を集め高い評価を得てきた。パレスチナ人監督クレイフィと、イスラエル人監督シヴァンの共同製作。「ルート181」とは、1947年の国連のパレスチナ分割決議181の地図上の分割線のこと。この映画で2人は、そもそも「イスラエル建国」とは何だったのか、「ユダヤ人国家」とは何かを根本的に問い返そうとしています。

映画祭直後に東京で『季刊前夜』主催により3ヶ所で上映会が行われました。フィルムが山形の事務局に残りますので、今後も断続的に各地で上映会が持たれることが期待されます。また、上映運動にあたって、『前夜』が紹介本を刊行しました。『季刊前夜別冊:ルート181』(影書房発売)。歴史的・地理的な背景やこの映画が持つ意義について知るには必読の一冊です。

詳しいサイトができました。

 

ルーシー・シャツ/アディ・バラシュ監督『ガーデン』

この映画が描いているのは、イスラエル・テルアヴィヴ郊外で男娼をしている十代のパレスチナ人の少年2人。一人は東エルサレム出身のドゥドゥと、もう一人は西岸出身のニノ。ニノは以前父親とぶつかり家出をしたときに、西エルサレムのユダヤ人の家にかこわれていたことがあり、そのために「スパイ」の嫌疑をかけられパレスチナ自治政府により投獄されていたのを、2002年のイスラエル軍の侵攻に乗じて脱獄、イスラエル側に逃げ込んできました。しかし、イスラエル内でも保護を受けられるわけでもなく、生き残りのために男娼と麻薬の密売をしています。

そのニノと路上抗争でケンカをしたことで親友となったドゥドゥもまた同じく男娼としてまた密売人として生きていますが、彼は出身の東エルサレムがイスラエルに「併合」をされてしまったために滞在身分が比較的安定しています。そのためドゥドゥがやや兄貴分として、パレスチナ送還に怯え少年院に出入りをするニノを叱咤します。この二人の背景を理解するには、それこそ解説本一冊を要するほどの複雑な問題があり、それが集約されているこのドキュメンタリー映像はそれを単純化していないところがすばらしかった。

監督は舞台挨拶で、「これは政治ではなくヒューマニズムだ」「彼らはイスラエルに自分からやってきた」と言いました。

しかし、想像されるイスラエルでの観客の受け止め方を考えると、問題がなくもない。おそらく監督もこの映画を観るイスラエル人も、「良心的穏健派」と自任することでしょう。自分自身が差別する側にあるという自覚がないままに。

この子たちのその後は?この子たちの家族は?パレスチナ側での取材はできなかったのか?

いろいろ考えさせられる映画でした。(早尾貴紀)

 

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