本&映画コーナー

新刊紹介

『テロリズム(1冊でわかるシリーズ)』チャールズ・タウンゼンド(宮坂直史訳、岩波書店、2005年)

新聞やテレビでも、パレスチナ/イスラエルのニュースでは、当たり前のように「テロ」や「テロリズム」という言葉が使われています。とくにアメリカ「9.11」以降は、アメリカと同盟国に歯向かうすべての動きに対して「テロ」のレッテルが貼られるようになったので、イスラエル政府もその便利なレッテルを利用して、これまで以上にパレスチナ批判を強めています。

この本は、そのような状況に対して、どのような文脈で「テロ」という言葉が使われてきたのかを、単純な分類を避けて批判的かつ具体的に分析をします。アメリカの言う「対テロ戦争」のような使い方だけでなく、反対に「アメリカやイスラエルこそテロ国家だ」とか、「自爆攻撃は正当な抵抗運動だ」という批判の仕方の問題性も指摘します。日本の報道は、あまりに無自覚なまま「テロ」という煽動的な用語を使っていますが、それに毒されないように、一度この本を読むことをお勧めします。

折しも日本ではまもなく、スピルバーグ監督の最新映画『ミュンヘン』が全国上映されるところです。前評判では良くも悪くも問題含みのこの映画で焦点が当てられているのも「テロ」です。冷静な目を持って観てみたいと思います。『ミュンヘン』感想

『ミュンヘン』の原作
『標的は11人-モサド暗殺チームの記録-』ジョージ・ジョナス著(新庄哲夫翻訳)

映 画(DVD)紹 介

『壁』シモーヌ・ビットン監督(英語版のみ:Simone Bitton, The Wall, 2004)

世界の映画祭やパレスチナで話題となったこの映画が、米アマゾン(amazon.com)からDVDで購入できるようになりました。現在パレスチナに建設中の「分離壁」の本質に迫るものです。この映画の特徴は、「アラブ系ユダヤ人」(アラブ世界出身のユダヤ教徒)を自任する監督が、強くその二重のアイデンティティを意識しながら、ヘブライ語とアラビア語の両方を駆使して、分離壁に関係のあるユダヤ人やパレスチナ人双方に深く取材していることです。分離壁に関する報道も少しずつなされてはいますが、壁に接する入植地の人びとや壁建設現場の労働者(パレスチナ人の雇用者までいます)、通勤や通学のルートを分断されてしまった人びとに、ここまで迫れている作品は他には観られないと思います。

いずれ日本語字幕で発売されるといいのですが、とりあえず英語版で購入しやすくなりましたのでお勧めします。(早尾)

 

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