『ぜいとぅーん』25号(2006.6.15発行)


ガザ空爆は何のため?

パレスチナのガザ地区では昨夏でイスラエル軍・ユダヤ人入植地が「撤退」をし、「占領終結」を宣言したはずでしたが、実際には毎日のようにイスラエル軍が攻撃を行ない、平穏な日など一日もありません。戦闘機やヘリコプターからの空爆だけでなく、艦船からの砲撃や、戦車や装甲車による部分的な侵攻もあり、ガザ地区が包囲攻撃下に置かれているのは以前と何一つ変わりありません。今年初めにハマス政権が誕生して以降は、旧政権のファタハ内の一部過激派がガザ地区からイスラエル領に向けて手製ロケットをときおり飛ばしており、それに対する報復と防衛という名目で空爆が続けられているのです。

しかし、イスラエル軍は、「標的」の活動家を白昼堂々街中で狙うために、毎回必ず無関係のパレスチナの民間人を、ときには10人を超える規模で巻き込み殺傷します。つまり、イスラエルの空爆は、直接の暗殺対象の数倍に達する民間人死傷者を出しているのです(もちろん暗殺自体が不法行為です)。狙われた活動家の党派組織はひるむどころかいきり立つ一方だし、一般市民もイスラエルへの反感を深めています。こうしてイスラエルの軍事作戦は、ますます暴力のエスカレートを呼び込んでいくのです。しかし、何のために?

おそらくこれは、一方的国境画定を正当化する戦術ではないかと思われます。つまりイスラエルは、大半のユダヤ人入植地をヨルダン川西岸地区に残したまま、それを隔離壁でイスラエル側に取り込み、その線に沿って恒久的国境を確定しようとしているのです。その前提は、「パレスチナ側に信頼できる交渉相手はいない」ということであり、パレスチナを国際的に信用が置けない存在、つまり「テロ集団」としたいのです。そうであれば、あえて挑発をするように砲撃を継続することは、イスラエルとしては理にかなっています。事実ハマスも、民間人の死傷者が多数出てきたことで、とうとう「停戦解除」を宣言してしまいました。

「西岸とガザの占領終結」を言うのであれば、40万人が住む入植地すべてを一つ残らず撤去し(東エルサレムのも!)、西岸地区の内部に作っている隔離壁を撤去し、イスラエル軍の基地と検問所を撤去し、グリーンライン(1949年の停戦ライン)で国境画定をし、双方で和平合意を結ぶことのはずです。イスラエル側の本音は、相手がハマス政権であれファタハ政権であれ、主要入植地の撤去は論外であり、それについての交渉はしたくない、「交渉相手はいない」のではなく交渉したくないということです。そのための挑発的ガザ空爆である、つまりガザ地区住民の命を利用して西岸の一方的国境画定を正当化する。これが狙いなのではないでしょうか。

 

イスラエル国内のパレスチナ人つまりアラブ系市民らへの排斥傾向も強まっています。各種の世論調査で、6割以上のイスラエルのユダヤ系市民が、「アラブ系市民とは同じアパートには住めない」とか、「アラブ系市民は人口政策上の脅威である」と答え、さらには「アラブ系市民が移民として出国することを政策的に促すべきだ」という考えを支持していることが明らかになりました。ここまであからさまに民族差別が語られるようになっていることに、恐怖を感じます。(早尾貴紀)

 

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