『ぜいとぅーん』26号(2006.9.13発行)


オススメ新刊本

吉田敏浩『反空爆の思想』(NHKブックス)

この本は、空爆という戦略の歴史を批判的に分析したものであって、いわゆるパレスチナ/イスラエル問題についての本ではありません。しかし、いまガザ地区やレバノンで起きていることを考える上で、大きな示唆を与えてくれます。事実、著者は本文ではまったくパレスチナ/イスラエルに触れていないものの、あとがきでは、本文を書き終えた直後にイスラエル軍によるレバノン侵攻が始まり、イスラエル軍とヒズブッラーの双方による空爆やロケット攻撃が激しくなってきたことを憂慮していると記してあります。

航空機の技術が飛躍的に向上しはじめた第一次世界大戦以降、戦争における空爆の重要性が高まってきたとされます。それ以降、二次大戦、ベトナム戦争、湾岸戦争等々と、空爆は絶えず、民間人の大量虐殺という悲劇を生み出しつづけています。

ガザ地区では、今年だけでゆうに200人を越えるパレスチナ人が、イスラエル軍によって殺害されていますが、その犠牲者の大半が民間人であり、無差別な空爆によって殺されています。このあいだのイスラエルのレバノン侵攻では、1000人以上のレバノン人が殺害されていますが、これまた同様に大半が市民であり、戦闘行為に参加していない市民はやはり空爆によって殺されているのです。

空爆のスイッチを押す攻撃者が、直接に死傷者を、血を見ることなく攻撃をし続けられること。攻撃する側とされる側とのあいだに、圧倒的な断絶があり、それこそがこの無慈悲で残虐な攻撃を可能にしていること。著者は、ビルマで反政府ゲリラに同行をした現地取材で、政府軍による空爆を目の当たりにし、九死に一生を得ています。歴史研究だけでなく、自らの体験にも裏打ちされた、「反空爆の思想」の問いかけは、切実な響きを持っています。


もっと知りたい方に

パレスチナ問題入門書

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レバノン侵攻の被害などについて

 

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