『ぜいとぅーん』28号(2007.2.20発行)


ハマスとファタハは内戦状態なのか?

この1月で、ハマス内閣を誕生させた昨年のパレスチナ議会選挙から丸一年が過ぎました。ここ二ヶ月ほど、そのハマス勢力と、それ以前まで政権の座にあり、いまでもアッバース大統領を擁するファタハとが、激しい武装抗争を続け、60人にも達する死者を出す事態になりました。それについての新聞報道は、「内戦の様相」と評するものばかりです。でもこれを「内戦」と呼ぶ前に、何が本当に問題なのかを考えなくてはなりません。

一年前の総選挙は国際的な選挙監視のもとで行なわれた民主的なものであったにもかかわらず、イスラエルもアメリカや日本やEU諸国も、ハマス内閣を代表と認めず、パレスチナ自治政府に対して事実上の経済制裁を科し、すぐさま深刻な困窮状態を招きました。公務員の給与不払いが続いたり、今まで無料だった教科書が有料となり教科書を買えない家庭が出て来たりしています。選挙でハマスを選んだパレスチナ人全員が悪いという論理で、世界が集団懲罰を行なったのです。まずここに民主主義を自ら否定する先進諸国の矛盾があります。

次に、なぜハマスを排除するのかを考えると、端的にハマスが1993年のオスロ合意を認めないからです。オスロ合意は、ファタハを中心とするPLO(パレスチナ解放機構)とイスラエルとが「相互承認」をした和平合意であり、ハマスはそのPLOに参加せず、つまりイスラエルを承認していません。オスロ合意の内実は占領を終わらせるものではなく、「とにかくイスラエルを承認せよ、代わりにPLOがパレスチナ人の代表であると認めてやる」というものでした。それに対してハマスは、占領の終結(例えばユダヤ人入植地の撤去など)がまず先であり、イスラエル承認はその後という立場であり、選挙でのハマス勝利も、民衆のオスロ合意への幻滅とファタハ批判の結果でした。

しかし国際社会は、このオスロ合意の土台の上でしか交渉をしようとしません。イスラエルや欧米は、露骨なファタハ支援を始めました。湾岸諸国などからの海外送金を規制するなどしてハマスの資金源を断ち切るとともに、イスラエルが代理徴収したパレスチナの税の自治政府への引き渡しを停止して自治政府の収入源を断ちました。他方でイスラエルとアメリカは、アッバース大統領個人に資金援助を行なったり、ファタハの武装組織に武器供与を行なっています。経済的恩恵はファタハ周辺にしか行き渡らず、そして与えられた武器でハマスと闘うように促し、またこうしたファタハ援助を公然と行なうことで、ハマス側のファタハへの不信感も誘発させる。つまり、内戦は仕組まれたものなのです。もちろん、そうした構造がわかっていながら、止めることができないパレスチナの組織にも問題はあるのですが。

2月半ば、サウジアラビアの仲介で、ハマスとファタハの連立内閣の協議が行なわれました。大筋で合意に達したようですが、連立協議とその破綻をこの一年ですでに4、5回は繰り返しています。また、すでにイスラエルと欧米からは、「連立をしたところで、ハマスがオスロの枠組みを全面的に認めなければ、パレスチナ自治政府ボイコットをやめることはない」という意向が示されています。オスロ批判こそがパレスチナの人びとの「民意」であったはずなのですが、つまりこれは、世界がパレスチナ人の民主主義を踏みにじっているということでもあるのです。(早尾)

 

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