『ぜいとぅーん』29号(2007.6.7発行)


オススメ新刊本

ジョー・サッコ『パレスチナ』 1800円、(小野耕世訳、いそっぷ社、2007年)

1991-92年(第1次インティファーダ期)にパレスチナに滞在した、コミックジャーナリスト、ジョー・サッコの作品。『パレスチナ』というコミックブックのシリーズとして計9冊刊行されたものが2001年に1冊にまとめられました。その待望の日本語訳です!

最初は、濃い絵柄に圧倒されましたが、内容は文句なしにおもしろい。そして、15年も経っているのに、残念ながら内容は古くありません。パレスチナの占領の構図が変わっていないからです。

まず、この作品は、独特の筆致による生き生きとした人物描写と細かな背景描写によって、鮮烈に現場の空気まで伝えている点で傑出しています。

私たち自身が絵も描けないし動画も撮れないし、写真でさえヘタクソなので、パレスチナについて語るとき、行ったことがない人に対して、具体的なイメージをもって想像してもらうということがとても難しいと感じます。でも、サッコの漫画を読んでいると、「ああそうそう、こんな感じ」と思うことが何度もありました。パレスチナの人びとの様子がありありと浮かんできます。

もう一つ、この漫画の特徴は、サッコというマルタ生まれでアメリカに移民をした「外国人」が、パレスチナで、イスラエルで、人びととどのように接したのか、どのように見られ、それに対してどのように自分が感じたのかが、ひじょうに具体的に克明に描かれていることです。サッコは、外国人としてとにかくあちこちを歩き回り、さまざまな人びとと(パレスチナ人ともユダヤ人とも)話をして回ります。「聞いてくれ、聞いてくれ」という感じで、占領下に置かれたパレスチナ人からは、多くの辛い証言を聞かせられます。これは、初めて被占領地に入った外国人が共通に経験する部分でしょう。

しかし、サッコの漫画は、登場人物の多様さ、その複雑な表情や態度、著者サッコの困惑、どれをとっても漫画でしか表現できないパレスチナが描かれています。大判で300ページ近くあり、エドワード・サイードの序文付き。お買い得です。(早尾・皆川)

 

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