『ぜいとぅーん』31号(2007.11.20発行)


ファトヒさん来日

パレスチナ・オリーブの早尾が、パレスチナを訪問しました。

10月下旬、「パレスチナの平和を考える会」(大阪)の招聘で、11月末に来日する予定のパレスチナ人、ファトヒ・クデイラートさんを訪ねました。ビザ取得の書類を届けるためでした。ファトヒさんは、ヨルダン川西岸地区の「反アパルトヘイト・ウォール・キャンペーン」という地元NGOの中心メンバーです。このNGOは、イスラエル軍が作った分離壁や検問所によって西岸地区が分断され、人々の生活が破壊されている現状を調査し、それを世界に向けて告発しています。ファトヒさんや、ここの代表であるジャマル・ジュマさんなどは、欧米ですでに何度も会議や集会に招かれていますが、日本では初めての講演ツアーになります。(パレスチナ・オリーブは仙台の集会にかかわっています)

ヨルダン川渓谷地帯

ファトヒさんの出身は西岸地区のなかのヨルダン渓谷地帯と呼ばれる地域で、また自身の調査担当地域もそこです。以前の通信でも書きましたように、このヨルダン渓谷地帯は、@パレスチナと隣国ヨルダンとの境界地帯なのでイスラエルが両者を分断しておく緩衝地帯として確保したい、A温和な低地でユダヤ人入植者・イスラエル企業がそこに集中し灌漑農業による大規模なプランテーションをすでに持っている、そういう場所です。

そのため、イスラエル軍は、西岸地区の中でも、とくにこの地帯に対する軍事封鎖を強くしており、地元住民に対する通行規制を厳しくしている他、家屋破壊、建築禁止などの措置もとられています。さらに、イスラエルは第二の分離壁とも言えるものを、西岸地区の中心部(ジェニーン、ナーブルス、ラーマッラー)とそこから東側のヨルダン渓谷地帯とを分断するように南北に建設する計画をもっていると言われています。これはもはや、「イスラエルへのテロリストの侵入を阻止する」という治安目的などでないことは明らかです。

人々の仕事

この一帯の低地を歩くと、ひじょうに緑の濃いさまざまな種類の畑が集中していることに気がつきます。西岸地区の中心部ではオリーブ畑と岩肌ばかりが目につくのとはだいぶ異なります。オレンジ、バナナ、レモン、アボガド、ナツメヤシ。すべて水を自由に引くことのできるユダヤ人入植者のプランテーションです。しかし、その農場や加工場での主たる労働者は、近隣に住む地元パレスチナ人です。もちろん雇用主でありいっしょに働くのはユダヤ人。かつてのようにイスラエル国内の建設現場や工業地帯に出稼ぎ労働に行くことができなくなってしまったため、西岸地区の入植地での雇用は貴重な現金収入源になっているのです。

しかし、そこでさえも最近は、パレスチナ人を嫌う雇用主が、東南アジアなどからの出稼ぎ労働者を雇い始めています。植民地経済と世界経済の構造が、パレスチナ人の職の形態や職を得る機会を揺さぶっているのです。

ファトヒさんは、僕が訪問したときに、ちょうどこれから日本講演用のパワーポイント映像の編集を始めるところだと言っていました。今度の来日時には、現地のたくさんの写真とともに、生活者の生の証言が聞けるものと思います。

「平和と繁栄の回廊」構想

(地図はこちらを参照ください。)

またヨルダン渓谷地帯は、『ぜいとぅーん』29号でも書きましたように、日本政府・JICAが、イスラエル政府・パレスチナ自治政府(と言ってもファタハのみ)といっしょに「平和と繁栄の回廊」構想という開発計画を進めているところです。この問題点については、前の通信を読んでください。この構想に対しては、「日本は中立の第三者だからいい」とか、「イスラエル企業を利することになってもパレスチナ人の雇用につながればそれでいい」といった賛成論は聞かれます。もちろん地元の人も生活がかかっていますし、正確な情報は公表されていませんので、単純に賛成か反対かという聞き方はできないでしょう。

しかし、地元の人々に不信感があることは否定できません。ファトヒさんも、会ったときに、構想の意図のいかがわしさや、イスラエルの意図の危険性、効果への疑問などを指摘していました。今度の講演ツアーのなかでもこの問題に触れる機会はあるでしょう。また、日本滞在中に、外務省担当者や国会議員との会見や協議の場も設けられると聞いています。

ファトヒさんの日本滞在が、有益なものになってほしいと思いますし、また私たちも自分たちの関わり方を考える機会にしたいと思います。今度は、もはや直接的にこの地域に対し、私たちの税金が使われて政府・JICAが関与しているのですから。(早尾)

 

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