『ぜいとぅーん』32号(2008.3.8発行)


オススメ新刊本

イラン・パペ【語り】、ミーダーン〈パレスチナ・対話のための広場〉【編訳】『イラン・パペ、パレスチナを語る――「民族浄化」から「橋渡しのナラティヴ」へ』(つげ書房新社、2008年)2,940円

イスラエルのユダヤ人としてイスラエルを鋭く批判し続ける歴史家イラン・パペ氏が、2007年春に来日しました。東京の3ヶ所で、それぞれ異なる聴衆層を対象に内容を変えて行なわれたパペ氏の講演と、講演本体以上に充実した質疑応答のすべてを収録しました。丁寧な脚注、地図・年表付きでお買い得です!

今年2008年は、イスラエルが建国されたことでパレスチナ人の村が破壊され大量の難民が発生した1948年の「ナクバ(大破局)」から60年。その出来事を明確に、「民族浄化」として位置づけることで、ユダヤ人国家建国がいかに意図的な武力行使によってもたらされたのか、そして現在のイスラエル国家の対パレスチナ人政策がいかに差別的・暴力的なものかを、一貫して説明してみせます。「48年に発生し、現在も続く民族浄化」として。

さらに、パペ氏の講演は、たんなる告発にとどまりません。加害者・被害者の関係性、占領者側の責任を明確にしたうえで、なおパレスチナとイスラエルが和解し今とは異なる枠組みで共存するための歴史教育を、つまり双方を「橋渡し」する歴史認識を提案します。

 

早尾貴紀『ユダヤとイスラエルのあいだ――民族/国民のアポリア』(青土社、2008年)、2,730円

パレスチナ・オリーブのスタッフの早尾の単行本、自薦で恐縮です。イスラエル国家が、戦後世界の新しい国民国家として創設されました。しかしそれは同時に、先住パレスチナ人および世界中からの多様なユダヤ教徒や偽ユダヤ教徒を含むモザイク状の移民国家でもありました。単一民族の神話に開き直るのか、パレスチナ人との二民族共存国家を目指すのか、市民権思想に基づく多民族国家となるのか。建国当時から現在にいたる、ユダヤ人思想家たちの矛盾をえぐります。

 

ジョナサン・ボヤーリン、ダニエル・ボヤーリン『ディアスポラの力』(赤尾光春、早尾貴紀訳、平凡社、2008年)4,410円

元来のユダヤ教文化は、実は領土的な国家主義とは相反するものでした。離散の地(バビロニア)で発展した聖典タルムードの教えでは、離散を人為的に終わらせユダヤ人国家を建設することも、ユダヤ人が他民族を攻撃・支配することも、ともに神の意思に反する禁忌です。むしろ「異教徒」(ユダヤ人から見た)に囲まれたなかで、自分の宗教文化をひっそりと保持するという、ある種の共存関係を理念とし、それを実践してきたのです。しかし近代のシオニズム、つまりユダヤ人ナショナリズムによって、ユダヤ教は歪められました。国家と国土のために命を捧げて戦うことを厭わない兵士をつくりあげ、そしてそのことによって多様な文化背景を背負うバラバラなユダヤ人移民を国民として統合していったのです。世俗的なユダヤ・ナショナリズムによって、伝統的ユダヤ教が国家宗教に作り替えられたことを詳しく描きます。(早尾)

* 一般の書店やパレスチナ・オリーブでお買い求め下さい。

 

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