Challenge No. 71 (2002年1-2月号)
イスラエルの良心的兵役拒否問題
「NO!」と言う人々

Dani Ben Simhon


 

2001年12月23日、良心的兵役拒否者であるヤーイル・ヒルの家に憲兵隊が来て、彼を逮捕した。憲兵は彼を徴兵委員会に連れていき、審問にかけられ28日間の刑務所収監を宣告された。ヤーイルは、8月に首相に手紙を送りイスラエル国防軍(IDF)の任務に就くことを拒否する表明をし、他の人々にも自分たちに続くように呼びかけた62人の12年生(高校3年生)らの一人である。彼らの主張では、IDFは防衛軍として機能せずに、むしろテロリスト的行動をパレスチナ人に対してとることになるという。(この手紙は、前号Challenge70号に掲載。)

ヤーイルは62人のうちで最初に逮捕されたが、彼は驚きはしなかった。手紙を書いて以来、彼と友人らは、拒否者のサークルを広める活動をし、個人的な闘いをおおやけのキャンペーンへと展開してきた。

次のデータは、イスラエルの若者のあいだで、軍務を回避する傾向が強くなっていることを示している。徴兵可能性のある要員のうち、25パーセントがまったく徴兵に就いていない。残りのうち20パーセントは義務期間を全うしていない(男性3年、女性2年)。だが、こうした人々のうち、兵役を避けた理由がパレスチナ人の弾圧に加担することを拒否するためであると表明した人はわずかしかいない。

この12年生の手紙には政治的次元が含まれている。もしオスロ合意が受け入れられているならば、彼らは、アラファトがイスラエルに治安統制をさせているB地区とC地区で任務に就く根拠がなくなるのだ。だが、新しいインティファーダはオスロ合意の欺瞞を暴露した。それは貧困と屈辱の生活をパレスチナ人の側にだけ押しつけるものなのだ。パレスチナ人の蜂起に対する反応として、イスラエルのほとんどの中・上流階層は右傾化し、挙国一致内閣がインティファーダを潰そうとしていることを支持している。しかしこれは全体図ではない。インティファーダは、イスラエルの左派が持っている幻想をも打ち崩したのだ。つまり一方的な合意でしかないオスロ合意が自分たちの国とパレスチナ・アラブ世界との関係を正常化できるものと彼らが信じていた幻想をだ。

徴兵拒否者らは、シャロンへの手紙のなかで、占領がイスラエルにもたらしている損害に首を振ってばかりいる左派を超えたところまで踏み込んでいる。彼らはパレスチナ人の運命への懸念を直接表明しているのだ。このような立場は、イスラエルにおいては新しく重要なものだし、真のインターナショナリズムを反映していると言える。

イスラエルの占領地政策を別として、国内の社会的格差は最近10年間でますます明らかになってきている。イスラエルは、中東のグローバリゼーションの先頭を切る役割を担おうとしてきた。そのために90年代にはビジネスマンとハイテク産業従事者は一時的に裕福になったが、それ以外の人々は置き去りにされた。このギャップはユダヤ人の一体性を掘り崩しつつある。この一体性というのは、ほぼ全国民による軍務を背景にした軍隊のことでもある。昔からのエートス(精神)によれば、IDFで任務に就かなければ、一人前の人間とは数えられないのだ。だがもはやこれは真実ではない。今日では、軍務を回避することが裕福な若者のあいだでも広まっており、彼らはむしろ個人の利益を求めることを好むのだ。

イスラエル社会における多くの相容れない潮流なあいだでも、62人の12年生のグループが際立っているのは、イスラエルの政策の倫理的な基礎について疑問を呈しているためである。この62人がIDFの活動を「テロリスト」と呼んだときに、彼らは自分たちの民族(Nation)の自己イメージに異議を唱えたのだ。つまりここに、新しくこれまでとは異なる世代がいるのだ。この数年、この国の若者らは政治家たちに自分たちの代弁をさせている。だが、この徴兵拒否のグループについては、我々がまず最初の指摘をしておこう。「時代はいま「変化」のときだ」。

ひじょうに多くの西欧諸国が、良心的徴兵拒否の正当性を認めている。イスラエルはその西欧に属したいと望んでおり、そのために自らジレンマに陥っている。一方では、資本主義のグローバリゼーションへの熱中者として成功優先の個人主義の発展を目指し、他方では、古い軍国主義政策に固執している。もしこの新しい運動が、イスラエルは良心的徴兵拒否を認めるべきだと主張しつづけるのであれば、政府は徴兵拒否者を「フリーク(変人)」だとか「健康上の免除者」と分類する策略をあきらめざるをえなくなるだろう。

(早尾貴紀訳)