Challenge No. 74 (2002年7-8月号)
サーレム、囲まれた村

ミハエル・シュワルツ


 

北部にあるアラブ人の村サーレムは、グリーンラインの西側、つまりイスラエル側に位置している。この村のすぐ南では、オリーブの茂みを通る形で防御用フェンス(実際にはコンクリートの壁)の建設が始まっている。私は6月16日にサーレムを訪問した。【訳註:サーレムの場所は「安全確保を口実に境界を変更」を参照下さい】

村に着く少し前に、爆発がおこって工事用重機の一部が揺れ動いた。すぐに射撃が始まった。一機のヘリが飛んできて、砂埃にまみれた軍用ジープがあたりを埋めつくした。だが、サーレムの村人は、それほど驚いた様子でもない。建設現場で彼らに会って話を聞いた。彼らは建設には反対だと言い切って、防御壁の建設はイスラエルの安全のためだという説明を一蹴した。村人のMuhammad Sbeiatは「壁がどれだけ高くても、パレスチナ人はイスラエルに入る方法を見つけるさ」と言う。隣人のTufik Rafa'iyyahが言葉をつなげた。「この壁は役に立たない。パレスチナ問題の解決にはつながらないからだ。壁を作ればユダヤ人入植地が解体されて、イスラエルが西岸から撤退するというのなら、建設には反対しないよ」

2000年9月の第二次インティファーダ開始以来、サーレムの村人1300名は、事実上の軍政下で生活してきた。イスラエルと西岸の町ジェニンを結ぶ道路にあるバリケード(サーレム・チェックポイントと呼ばれている)は拡張されて常設の軍事キャンプになり、村の主要な出入り口を取り込んでしまった。装甲車や戦車の騒音が寝室まで響くようになった。赤ん坊は、昼夜を問わずに拡声器から流れる大声に怯えて泣き出してしまう。イスラエル軍の兵士が屋根に陣取り、階下に暮らす人々は生きた心地もしない。

Wissam Abu Bakkerは、巡回路になった道路の側で暮らしている。防御壁が建設中の場所だ。Bakkerによると「兵士らは、私たちが占領軍の下にいるような言い方をする。つい先日、玄関先に座っていただけでIDカードを要求された」。Muhammad Sbeihatによると、イスラエル兵らは、Khader Muhammadという名の5歳の少年に銃口を向けて狙いを定めていたという。この少年は、父親といっしょに道路を横切っていたところだった。

グリーンラインが通っているのは、サーレムのすぐ側にあるオリーブ林の中だ。積み上げられた石とサボテンが境界線を表している。かなりの土地が防御壁の東側にとり残されることになり、村人が作業に出向くことはできなくなるだろう。家の窓からは、オリーブの木立ではなくて高さ26フィートの壁を見ることになる。まるで牢獄にいるみたいだ。

だが、村人が何よりも心配しているのは、親戚がどうなるかということだ。防御壁の東側には血のつながった親族が暮らしており、オリーブの茂みを抜けてサーレムまでやって来る。

Tufikには二人の姉妹がいて、両名ともにジェニン難民キャンプ出身の男性と結婚している。Muhammad Sbeihatの妹は、隣村に嫁いでいる。隣村までは歩いて二十分だが、防御壁によって隔てられることになる。Wissamにも二名の姉妹がいて、西岸地区に嫁いでいる。一人の嫁ぎ先はジェニンの難民キャンプだ。「防衛の楯」作戦では、彼女の家も破壊された。Wissamは怒りもあらわに言葉を続けた。戦闘がピークに達していたころ、彼女は子どもたちと一緒にオリーブの茂みを抜けてきたという。サーレムに避難するためだ。巡回路にいた兵士が彼女の前に立ちはだかった。彼女は上着の前をあけて女性であることを示し、通行を許された。Wissamが言った。「その場面をこの目で見ていたんだ」

イスラエル軍によるジェニン占拠中、サーレムの村人らは衣類と食糧を集めて難民に届けようとした。Tufikが痛む肩をさすりながら当時の様子を語った。一人のイスラエル兵が集めてきた衣類を下に降ろすように命令したという。兵士はライフルの銃床でTufikの肩を強打し、荷物を運べないようにした。その時の衣類や毛布の一部は、私たちのそばに落ちていた。

国ではなくて、居留地に暮らしているみたいだと村人は言う。村に入るには、軍のバリケードを通らなくてはならないが、遠からず、村じゅうが壁で囲まれることになる。北には別の防御壁ができる予定だ。その防御壁には電気が通されることになっており、キブツ・Givat Ozの果樹園を囲む予定だ。ボールを追いかけていった子どもたちが防御壁に触れると、220ボルトの電圧が流れることになる。

インタビューが終わりかけたころに村人の一人が口にした言葉に、他のメンバーがうなずいていた。「イスラエルとパレスチナ人の間には、あまりにも深い溝がある。その場しのぎの対策はすぐにだめになる」

(西尾ゆう子さん訳)

 

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