「一方的措置が戦争をおこした」

2006年7月16日
民主行動機構(DAAM)声明


訳者補足:ダアムはイスラエルの反シオニストのグループで、主にイスラエル内のパレスチナ人とユダヤ人からなっています。


イスラエルは、政治的変革を達成しようとするときには、軍事力に依存する。軍事力の論理が、イスラエルの政策決定においては、つねに中心的要因をなしてきた。このことは、1982年にイスラエルがレバノンのPLO(パレスチナ解放機構)の壊滅を図り、レバノンに親イスラエル体制をもたらそうとしたときにもあてはまる。また、パレスチナ自治政府がイスラエルに対し完全に従順になり切らなかったために、2002年にイスラエルが「防御の楯」作戦と遠回しに名づけたパレスチナ自治区の再占領作戦を展開したときにも、そうであった。そして今回、ガザ地区でハマース政権を転覆させ、レバノンでヒズブッラーを弱体化させるために、イスラエルが行なっている二正面の戦争についても、やはりそうなのだ。

現在の戦争はいずれも、イスラエルがもはや支配するつもりはないと宣言をして、一方的に撤退をした地域で起きている。イスラエルは、2000年5月にレバノンから、2005年8月にガザ地区から、それぞれ撤退した。新しい首相であるエフード・オルメルトは、選挙キャンペーンの最重要争点として、西岸地区の一部から撤退する――またしても一方的に――という決意を明らかにした。だがその宣言にもかかわらず、現在の戦争が証明しているのは、相手方との合意を欠いたこうした撤退が自滅的であるということだ。

それぞれの撤退には隠された戦略的目的がある。レバノンからの撤退の目的は、シリアの子飼いであるヒズブッラーの存在意義を消し去ることであり、それによってイスラエルがゴラン高原を永続的に領有するのを可能にすることであった。ガザ地区からの撤退は、西岸地区のなかで入植地群がある地域を将来的に併合するにあたって、生じうる反対を和らげることを意図していた。

現在の危機は、イスラエルが包括的な解決を模索することを拒否したことから生じている。イスラエルは、原理主義運動が活発になっているこの機会に、むしろアラブ世界の分裂につけこむことを選んだ。つまり原理主義の興隆は、「交渉相手はいない」という口実を正当化するために利用されたのだ。預言は自ら実現させたのである。

イスラエルは、自らが制圧した地域から退避するにあたって、そこに住む人びとの将来にはいかなる責任をも負おうとしなかったが、結局それは、たんに対立を深めただけであった。このことに関しては以下のような疑問も湧くが、それについてはイスラエルは自ら説明をしたがらない。なぜイスラエルは交渉のテーブルにつくのを避けるのか? なぜイスラエルは隣国の人びとの諸権利と経済上のニーズと治安上のニーズを認めようとしないのか? なぜイスラエルは、好き勝手に国境線を画定する権利をもち、しかもその線の反対側になる人びとへの説明をしないですませられるのか?

ハマースとヒズブッラーは、いずれもイスラエルの政策のおかげで主要なプレーヤーへと成長したが、その二つの組織とも、武力行使によって政治的利益を得ようとしている。そのいずれのケースも、イスラエルの撤退を背景に発生した内政問題を切り抜けることが目標とされている。

イスラエルのガザ撤退はたしかにハマースの選挙戦勝利に貢献したが、しかし、その成功は勝者であるハマース自身を混乱させた。ハマースは、政府の役割を果たすか、武装抵抗運動を継続するかの選択を迫られ、結局ハマースは統治と闘争の両方を同時に行なうことを決めた。そのもたらした結果は、戦略なしの軍事的冒険の連続であった。

ヒズブッラーもまた厳しい政治的危機に直面した。シリアのレバノン撤退と、レバノン国民議会選挙での反シリア派の勝利によって、[シリアに庇護を受けている]ヒズブッラーが武装民兵組織として存続することは困難になった。新しいレバノン政府は、この民兵組織を排除することを望み、「イスラエルはいまや国際的に認められた国境へと戻ったのだから、もはや抵抗運動は必要ない」と訴えた。この発言は、シリアの撤退とヒズブッラーの武装解除を求めた国連安保理決議[1559]に沿ったものだ。

ヒズブッラーもハマースも、今回の「高度な」攻撃を開始する前に、他の組織や民衆に諮ることはなかった。しかも彼らは、レバノン政府とパレスチナ自治政府がこの結果を受け入れるだろうと考えていた[が、そうはならなかった]。イスラエルはこの微妙な状況を理解している。イスラエルは、内部分裂を深めるように打撃を与え、これらの抵抗運動を、他の政治勢力からを切り離し、さらには一般大衆からも切り離すことを目論んでいる。

この二正面の戦争は、間違いなく、この地域全体の政治的混乱をもたらす。民衆に幻想を売りつける者は、遅かれ早かれ、政治的代償を支払わされる。それは、イラクに侵攻したジョージ・ブッシュ米大統領の身に起こったことだし、解放の約束で民衆を騙したヤーセル・アラファートの身に起こったことだ。そして今度は、「生きる喜びのある国」を約束しておきながら、たんに破壊のスパイラルをいっそう上昇させただけのイスラエル政府が支払わされることになるのだ。