*2003年11月5日に早尾がパレスチナ・フォーラムMLに投稿した文章の一部抜粋です。

 

ヘブライ大より:壁を越えて受け渡される本

昨日たまたまヘブライ大のパレスチナ人学生の友人といっしょに、アルコッズ大学のアブ・ディース・キャンパス(アルコッズ大のキャンパスないしオフィスはあちこちにある)に行きました。アブ・ディースとエルサレムのあいだには、もうだいぶ前からコンクリートの壁が設置されていましたが、とうとういまはカルキリヤのように「包囲網」になりつつあります。二ヶ月前くらいだったかの新聞で、そのアブ・ディース・キャンパスの敷地内に分離壁が入るという計画に反対するデモのことが出ていましたが、「幸いにして(?)」、分離壁は現在のところ敷地に沿うようなラインに変更をされて、建設中です。ともあれ、その包囲壁の建設がだいぶ進んだアブ・ディースは、ここ一ヶ月ほど、いくつかの新聞に写真付きで出ています。壁を乗り越えて出入りする人びとの写真がよく使われています。高さが2〜3メートルであるため、足場になるものがあるところでは、あちこちでそれを乗り越えて人が出入りしているのです。

ヘブライ大の友人(イスラエル国籍のパレスチナ人)といっしょにアルコッズ大に行って、そこの学生らと待ち合わせをしました。ラマダーン中で食べ物も飲み物も出ないカフェはただの談話室となっています。そこでの本来の用件はまた別だったのですが、ついでに友人は一つの用件を済ませました。ヘブライ大の図書館から借り出した、およそ10冊もの本をアルコッズ大の学生にまた貸ししていたのです。それをどうするのかとその学生に聞いたら、「自分がアシスタントをしている教官が、いま博論を執筆中なんだけれども、そのために使う資料。アルコッズ大の図書館はもう資金不足で本も不足している。その教官は西岸のIDしか持っていないから、東エルサレム住人で、ヘブライ大の学生にも友だちのいる自分に頼んで、ヘブライ大の本を持ちだしてきてもらっているんだ。」と。

その教官というのは、EC/EUの研究をしていて、ともかくそのテーマ関連の本をだいぶ人づてに借り出してきてもらっているようです。東エルサレムの学生にアシスタントをお願いして、ヘブライ大に通うパレスチナ人学生とのコネを利用して、自分の論文執筆。それ以外のケースでも、学生の研究や論文執筆でも、そうやってヘブライ大から友人をつてに本を借りることは珍しくないとのこと。隣の大学なんだから、「相互利用」の制度的なフォローぐらいしたっていいだろうにと思うのですが、現実には壁越しに学生が本を運んでいるのが実態です。

ヘブライ大のしかもユダヤ人の学者・学生にだって、アラビア語・アラブ思想・社会・文化を勉強している人はいます。であれば、図書館の相互利用以外にも、いくらでも研究交流っていうことも考えられるし、まがりなりにも「共存」を謳ったヘブライ大なら、そのぐらいのことを率先してしてほしい。けれども、いまその大学間にも壁が入り込み、実際に「交流」しているのは、その壁をよじ登って越えているヘブライ大とアルコッズ大の学生だけになってきているような感じです。