私に「愛する事」を教えた人


それは、とってもとっても昔の話。
「付き合ってちょーだい」と言って来た人が居た。まあ、20歳前後の頃の話。その時、私には、お付き合いしていた人が居たので
お断りしたのだが「ど〜しても・・」と言うので「では、お友達なら、いいよ〜。」と言う事になった。
ところが・・その、おにーさんは「友達」と言う契約を結んだ筈なのにガンガン迫ってきた。
「なんだ・・この人は・・」私は何でも間に受ける人なので「友達って言ったんだから友達でしょ〜!!!」と、だんだん腹が立って
来た。そして順次物事が進むに従って「なにすんのよ〜!!」と思って来た。
丁度その時、私は、その時「付き合ってた彼」に、バッチリ振られてしまった。就職して遠距離恋愛になったら「さよ〜なら〜」だった。
で・・私は荒れたね・・と言うか「くっそ〜荒れてやる〜〜〜!!!!」と思った。
「男なんて嫌いだ〜恋愛なんて嫌いだ〜愛なんて嫌いだ〜。次から次と愛を弄んでやる〜!!!」と、思った。
で・・まずは・・と言う事で、その「お友達になってちょーだい」の彼に「八つ当たり」をしまくった。当たった。当たった。
めちゃめちゃ八つ当たりをした。私の人生の前後でこれだけ人に当たった事はなかった
でも、その人は、いつも何だか仕方なさそうな顔をして黙って見ているだけだった。私がどうして荒れてるのか、よく判っていたから。
「お嫁さんに来てくれたらなあ〜・・・あはは、夢だけどね・・・」そう言った事もあったなあ。私は耳を疑った。これだけ暴れてる人を
「夢」に思うなんて、ど〜かしてるんじゃないかと思った。そんな付き合い方だった。
で、ついに私は、その人を振る決心をした。弱気な態度とは裏腹に妙に実行力のある人で「力ずく」寸前で怖かったってのもあるけど。
ああ・・お互い、若かったのね・・。
で、最後に会った時、バス停で、私は「さよなら、もう会わない。」と口まで出掛かって、ど〜しても、ど〜しても言えずにいた。
30分位、ど〜しても言えずに口をぱくぱくさせていた。今まで自分が、この人に当たりまくってた事を思うと、さすがに申し訳なくて最後
の一言が、どうしても言えなかった。ぶん殴られても仕方ないと思った。その人はそんな私を、ずっと黙って見ていた。
やがてバスが来て「ああ・・とうとう言えなかった。」と思いながらバスに乗ろうとした、その時。
「さようなら」はっきりとした声で・・その人が言った。そして私を、ずっと見ていた。走り去るバスもずっとずっと見送っていた。
・・私は・・驚いていた・・私は殴られても仕方ないと思っていた・・いや、そこまでじゃなくても恨み言のひとつも言われるものと
思っていた。きっと怒るだろうと思っていた。・・でも彼は怒らなかった。何も言わず・・最後の言葉まで私の代わりに言ってくれた。
申し訳なかった・・心の底から、申し訳なかった。「ごめんなさい」そして、その人の目的が欲望ではなく本当の愛情だったと言う事
を私は、その時、始めて理解した。彼は一言も責めなかった。最後まで私を大切にしてくれて最後の言葉まで代わりに言ってくれた。
「愛」ってこんなに凄いものなんだ。「本当にやさしい」ってこう言う事なんだ。「人を愛する」ってとてもとても大切な事なんだ。
バスに揺られながら私は大混乱していた。ただひとつ・・判っていたのは「人生における愛」ってのは、とても大切な物で決して
粗末にしてはいけないと言う事だった。それは哀しそうにバス亭にたたずむ彼の姿が教えてくれていた。
彼からは、それきり何の連絡も来なかった。時々街でばったり出会ったが彼はいつも「登山姿」で私は「ああ・・この人は山に逃避
してしまった」と思った。
結局、私の「愛を弄ぶ計画」は第一弾で見事に敗退してしまった。私は身を謹んで本当の愛を待つ事にした。
私は彼のことを恩人だと思っている。第一弾が彼じゃなかったら私は、きっと「遊び人の女の人」になってただろう。
彼はブルトーザー並のパワーで落ちていこうとする私を水際で食い止めてくれた。身をもって愛と言う物の力と美しさを私に教えて
くれた・・ごめんなさい。何も恩返しはしなかった・・・。でも一生の恩人だと、ずっとずっと思ってる。そして本当に申し訳ない事をしてしまった人とも・・。
2年後私が旦那と付き合っていた頃、東京に遊びに行って帰りの新幹線がとても混んでて座れず結局私たちは出口付近に立って乗っていた・・結婚寸前だったので私は、とても幸せだったし見るからに楽しそうにはしゃいでいたと思う。わいわい言いながら、ふと斜め横に
目をやると・・・なんと直進2メートル先に、その「バス亭の彼」が立っていて、こっちを見てるじゃないですか・・・私は大パニックだったけど
どうしようもなくて結局東京から福島まで、その状態で過ごした。
「今さら、どうしようもないじゃない。お願いだから、なにも、そこにたってなくたって良いじゃない。こんなにはしゃいでる私を見てたって
あなたのためにもならない筈だよ・・・」そう思いながら・・・。彼は福島で降りていった。もうひとつ出口があるのに、わざわざ私と旦那の
真ん中を抜けて降りて行った。ごめんなさい。どんな気持ちで彼は、あそこに立っていたんだろう。あのバス亭から2年もたっていたのにその時、私はどんなに、その人を傷つけていたのかを思いしった。本当に申し訳ない事だった。新幹線の中での彼の気持ちは想像するのも恐ろしい・・・。私は最も恩ある人を最も傷つけてしまったんだろう。ごめんなさい。
そのまた2年後位に最後に彼を見かけた時、彼は立派な社会人になっていて妙にカッコよく見えた。その時は私はすっかり主婦で
おしゃれもしてない自分がちょっと恥ずかしく思えた。
そして見違える様に素敵な男性になってる「バス亭の彼」に心の中で「ブラボー」と言った。ちょっぴりホッとしたな。
彼は今ごろ私の事なんて忘れてるだろうな。でもきっと私はずっと覚えている。私に愛を教えてくれた人。人生の恩人として。
長くなっちゃったな・・でも、これ位は書きたかったんだ・・恩人のために・・・・。

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