ある日、主人公“玲音”の通う学校で、自殺したはずの女生徒“千砂”からメールが届くという事件が多発する。 帰宅した玲音は、自分のNAVIを立ち上げてみる。すると、“千砂”からのメールが届いていた。
「私はただ肉体を捨てただけ。みんな、どうしてこっちに来ないの?」
“ワイヤード”に疎かった“玲音”だったが、 “ワイヤード”の中で生きていると主張する“千砂”からのメールを読み、 “千砂”と話がしてみたいという思いから、 最新式の“NAVI”を手に入れ、更に改造を加えていく。
“NIGHTS”は、最強の部類に属するハッカー達の集まりだが、 その根底に、彼らを組織として結びつける共通の信念が存在するらしい。 そう、それは「“ワイヤード”には神様がいる」という信念である。 “NIGHTS”は、玲音が“ワイヤード”に乗り出す際に、 様々な手助けをしてくれた。
一方“Lain”は、“ワイヤード”内で最強と言われるハッカーである。 しかし、その正体は不明。
玲音は“NIGHTS”や“神様”について調べ始める。 その一環として、過去に「子供達の持つ微弱な超能力を集めて物理的な現象を引き起こす実験」を行ったホジソン教授に会いに行く。 とは言っても、教授は“リアルワールド”では寝たきりで意識のない状態。実体は“ワイヤード”にいる。 教授の作った装置“PSY”を、“NIGHTS”は改造・強化して実用化したらしい。
玲音は、“ワイヤード”内での自分の性格が“リアルワールド”にいる時とは異なることを自覚し始める。 自信に満ちあふれ、強気で、攻撃的だ。それは、あの“Lain”に通じるところがある。 しかし、“Lain”は玲音が新型NAVIを手に入れるよりも前から“ワイヤード”に存在していたらしい。 玲音は考える。「もう一人の“Lain”がいるのだろうか。」
「ワイヤードとリアルワールドの境界が崩れ始めている。 それには“NIGHTS”と“Lain”が大きく関わっていると思われる。 我々としては、ワイヤードはあくまでのリアルワールドの補助的存在に留まっていて欲しい。」
想像もつかない話に戸惑う玲音。
「ところで、君は何者なのだ? 君の両親は本当の両親か?」
何故そんなことを聴かれるのか理解できなかった玲音だが、 考えてみると、両親の誕生日はおろか、自分の誕生日や子供の頃のことですら思い出せないのに気がつく。 自分は何者なのだ? ショックに泣き崩れる玲音。 その時、玲音の人格と入れ替わって“ワイヤードのLain”の人格が現れた。 謎の組織の男達を“つまらない奴らだ”と一蹴して、その場を去る玲音。
しかし、その信頼が裏切られる時が来る。 ありすが自分の部屋で好きな人(学校の講師)のことを想像しながら自慰をしている最中、 玲音がどこからともなく部屋に現れたのである。 真っ青になるありすを玲音は笑い飛ばす。
「あんたが誰が好きで、自分の部屋でどんな恥ずかしいことしてるか、私は知ってるよ!」
「じゃあ、やっぱり本当に玲音だったの!? “ワイヤード”にあんなことを書き込んだのは!」
信じていた玲音に裏切られたことで泣き崩れるありす。 しかし、この玲音は“もう一人のLain”だった。 このことを知った“Lain”は“もう一人のLain”を責める。 しかし“もう一人のLain”は平然と告げる。
「私はあんただし、あんたは私なんだよ」
「ワイヤードはリアルワールドの上位レイヤである。 君は、ワイヤードとリアルワールドの境界を崩すための、 肉体を持った実行プログラムなのだ。 そして君を作り上げたのは、この私だ。」
“デウス”は、ワイヤード内に存在する残留思念プログラムである。 肉体は、もう以前に死んでしまった。 “デウス”は生前、あることに気がついた。 もうすぐ地球上の全人類の人口は、人間の脳内のニューロンの数に達する。 また、地球には、まるで脳波のような固有周波数振動が存在する。 地球というものは、人類というニューロンの結合からできた巨大な脳、 言い換えれば人間というコンピュータを接続した巨大なネットワークなのではないか? 人類は、何らかのデバイスを必要とせずに、既に繋がっているのではないか?
“デウス”は生前、次世代IP(インターネットプロトコル)の仕様を決定できる立場にいた。 そこで、そのプロトコルの中に、自分についての全ての情報と、 地球の固有周波数振動を利用した“各人の無意識およびコンピュータを接続した地球規模のネットワーク世界” を実現するための仕組みを入れ込んだ。 彼の死語、そのプロトコルは採用され、それによってワイヤードが実現した。 “デウス”はワイヤードの中で復活し、自分を信仰するNIGHTSという組織を作り、 “PSY”システムの実現によってリアルワールドへの影響力をも確立した。
玲音は、自分が本当は“存在しなかった”ことにショックを受けるが、 次第に“自分の持つ力”を認識し始める。 “デウス”はそのことに満足を覚える。 LainがNIGHTSの個人情報をワイヤードに流したことで、 NIGHTSメンバは対抗組織によって全員暗殺された。 しかし“デウス”は動じない。
「僕には君がいるよ、Lain」
「記憶に無いことは、無かったこと。記憶なんて、ただの記録。」
Lainは、学校の友人達の記憶とリアルワールド&ワイヤードの記録を操作し、 玲音の悪い噂はもちろん、ありすに関する悪い噂も“無かったこと”にする。 玲音は、再度自分の力でリアルワールドに居場所を作った。 友達は笑顔で彼女を向かえてくれた。 しかし、“ありす”だけは違った。 彼女だけは、何故かLainによる記憶の操作から除外されていたのである。
「記憶に無いことは、無かったこと。記憶なんて、ただの記録。」
そう言って微笑む玲音に、ありすは恐怖を覚える。
自分だけ記憶が消されなかったことや、得体の知れない玲音の存在に恐怖するあまり、 ありすは玲音の家を訪れる。
「何故、私の記憶を消してくれなかったの? これじゃ気が狂いそうだわ。」
「ありすだけは、何もしなくたって、最初から私の友達になってくれたから。 だから記憶を消さなかったの。 私、分かったの。人間なんて、ただの実行プログラムなの。 肉体なんて、いらないの。」
その言葉に戸惑いながらも、ありすは微笑み、玲音の手を取って、 自分の胸に押しつける。
「よく分からないけど、玲音の言ってることは間違ってるよ。 ほら、温かいでしょ? ドキドキしてるでしょ? 玲音も私も、生きてるんだよ。」
その言葉に戸惑う玲音。 でも、自分のことを素直に“生きている”と認めてくれた彼女の言葉や、 彼女の体から伝わる暖かさや鼓動によって、 玲音の中に“肉体”や“生”の大切さが伝わってくる。 ありすの言葉を、素直に認め始める玲音。
その反応を見た“デウス”は、 “肉体を捨ててワイヤードに来ることこそが真実だ”と玲音にささやく。 その言葉に応える玲音。
「あなたは地球の固有周波数振動に気がついて、リアルワールドとワイヤードの境界を崩す方法を思いついた。 でも、それは本当にあなたの力で気がついたことなの? 既に仕組まれていたことだとは思わないの?」
「まさか、本当に“神”が存在するとでも言いたいのか!」
「あなたはもう死んだ存在なのよ。生きていないの。あなたにとって、肉体はもう不要なんでしょ?」
怒りに駆られて、リアルワールドに実体化しようともがく“デウス”。 その姿を見て恐怖に駆られる“ありす”。 “PSY”のテレキネシスによって、実体化した“デウス”を葬り去る“玲音”。
あまりの恐怖に半狂乱になっている“ありす”をみて、玲音は呟く。
「私がありすの為にすることは、いつもありすを苦しめることになっちゃうんだよね。」
玲音は決断し、今回の件について、全て“リセット”をかけることにした。 全ての人の記憶、リアルワールド&ワイヤードの記録を操作し、 死んだ人間を復活させ、事件に関係した全組織の存在を消滅させた。 世界は、何事も無かったように動き出した。
「記憶って、過去のものとは限らないんだね。」
ある街角、大人になった“ありす”が婚約者と歩いている。 ふと見上げると、歩道橋の上に見覚えのある少女がいる。 どうにも気になって、歩道橋を駆け上がる“ありす”。
「どこかで会ったことあるよね?」
「ううん、初めまして、だよ。」
「 … そう、私の勘違いか。あたしの名前は“ありす”。あなたは?」
「玲音」
「じゃぁ、またいつか、どこかで会おうね、玲音。」
振り返り、去っていく“ありす”の背中に、いつまでも手を振る玲音。
画面から語りかける玲音。
「私はいつでもここにいる。いつでもあなたと一緒にいる。」