Y(事)マニアック




横須賀線から見たK(技) いやいやながら、 1998年10月から1999年3月まで、私は“Y(事)”という所で仕事をしていました。 JR横浜線“鴨居駅”から徒歩5~10分の所にあります。

毎日毎日、通勤で使う横須賀線から見えるK(技)を見ては (右の写真参照)、帰りた~い帰りた~いと思いながら1年半を過ごしました。 (ちなみに横須賀線からはK(技)だけでなくT(事)も良く見えるが、どちらに行くにしても不便である。)

で、さすがに一年半もいると、怪しいノウハウなども身に付つものです。“何だあれは?”という事も、色々発見しました。 そこで皆さんに、“Y(事)”についてのマニアックな情報をお届けすることにしました。 何かの拍子に、皆さんも行く羽目になるかもしれませんしね、ふっふっふ。


[やたら広い]

廊下 Y(事)は、やらたと広いとにかく広い、知らない所を歩くと迷う! K(技)がダンジョンの地下1Fレベルだと仮定すると、Y(事)地下4Fのレベルですね。 私を含めて毎日ここに通っている人でも、自分達が行かない所については知らないですから、迷っってもその辺を歩いている人に聞けばいい…という手は効きません。 どこに何があるかは、自分でしっかり覚えなければなりません。何気なく歩き回ると、大変な事になります。遭難する可能性があります。恐ろしい所です。

ここの広さを一番表しているのは、長~い廊下です。私のいる部屋から食堂に行く時、長~い廊下の一つ (右の写真) を端から端まで (写真を撮った位置から突き当たりまで) 歩くのですが、初めての頃はその長さに驚きました。歩いてみると、そんなでも無いのですが、最初に観た時にびっくりします。

で、ここの広さとか長さを、更に強調しているのが、天井をむき出しで走っている“パイプ”です。一体この中には何が流れているのだろうと、考えずにはいられません。 これについては、後述します。

また、“銀行”“トラベル会社”などはもちろんのこと、様々なお店が存在し、 更に日替わりで色々な出店が現われます。

体育館もあるようで、中を覗くとバレーの練習をしています。 時々、髪の毛が短くて一見男の子のような女の子が、ジャージで歩いていたりします。 弊社が持ってるVリーグチームの選手予備軍なのでしょうか…。

また、試合に来たらしい外人バレーボール選手達が、食堂で食事をしていたこともあります。 この食堂のものを食べて、これが日本の料理のレベルだと思って帰ってしまったらどうしよう … と本当に心配になります。

も広く、昼休みはあちこちでお弁当を食べる団体が輪を作っています。 また、体を鍛えている人も多く、昼休みはスポーツマンであふれています。

という訳で、ここはもう小さな“街”ですね。



[売店、出店]

Y(事)にある売店は、 電気屋薬局 (化粧品屋) 本屋コンビニがくっついたような感じです。でかいっす。

食堂と同じエリアにあって、食事を終えた人たちが、吸い込まれるように入っていきます。

電化製品コーナーではテレビやパソコン等が売ってるんですが、何が悲しくて会社の売店でそんなものを購入するでしょうか。 しかもIDカードで買うんでしょうか。次の給料がマイナスになってしまいます。

薬局コーナーは、高いです。矢向のあちこちにある薬局は、本当に安いなぁと改めて思います。

本コーナーは雑誌と小説の文庫本が中心です。音楽CDやパソコン・ゲーム機用ソフトも売ってます。 本コーナーの横にあるサービスカウンターでは、各種チケット切手の購入、 写真のプリント依頼受付、CD・本などの予約注文等を扱っています。 よく大学の生協にありますよね、こーゆーコーナー。

コンビニコーナーには、一般的にコンビニで手に入るような類は大体あります。 必ず安売り特集みたいなものをやっていて、結構それが楽しみです。お弁当もあります。 もう食堂の飯はやだぁ~と挫けた時には、これを食べてます。

さて、問題は出店です。売店の入口に4店舗分のスペースがありまして、そこに日替わりで出店がでます。

やはり代表格は「亀屋万年堂」ですね。 出店の中でも確固とした地位を確立していて、売店のコンビニコーナーにも亀屋の製品がレギュラーで置いてあります。 また、出店がある時には、和菓子の実演販売というのを行っています。目の前でお饅頭とかを作ったりしています。

次に「ワコール」を挙げるべきでしょうか。時々“計測会”なるものを開いています。 「あなたにピッタリのブラをお選びしましょう」という感じなのでしょうか。仕切りを作って何かをしているようです。 K(技)からY(事)に行ったメンバーで相談して、誰か一人が犠牲になって、わざとよろけてあの仕切りを破壊してみようという作戦をたてたことがあります。 しかし、中が若い姉ちゃんじゃなかったら犬死にだということで、作戦は未遂に終わりました。

その他としては、スポーツ用品、健康用品・食品、靴、布団、輸入雑貨、背広、和服着物などの出店がでています。

私は靴屋で2千円の靴を購入したことがあります。でも、2万5千円くらいする背広はまだ許せるとして、20万円もする着物や反物を売店で購入する人がいるのでしょうか。 布団だって結構します。う~ん、解せん。

また、このコーナー以外の所にでる出店もあります。

代表格は、八百屋です。火曜日と木曜日に来ます。食堂前のスペースを使って、野菜や果物を売ってます。 奥様方が群がっています。私はここでミカンを買ったことがあります。

また、同じスペースを使って、車の展示会をしていることもあります。月曜日や水曜日だったと思います。

その他、やはり同じスペースを利用して、花屋、甘栗屋、お茶屋などが店をだしていることがあります。 甘栗なんかは安いし焼き立てだしで大好評! でも、いつも買いたいと思うのに混んでて買えません。

あと、売店と労働組合事務所の間の廊下に、オモチャ屋が出ていることがあります。 昔のオモチャ屋にあったようなオモチャが満載で、懐かしいです。意外に人気です。

綺麗なお姉ちゃんが、タバコのお試しパックなんかを配ってたりもします。

これらの団体は、Y(事)にお金を払って出入りを許されているんですかねぇ。だとすると、結構それだけでも事業場は儲かってそうですね。


[社員食堂]

食堂は、1Fと2Fがあり (建物自体は3Fまである)、その広さはK(技)の比ではありません。また、メニューの多さも比ではありません。

とりあえず、ここでは各コーナーを説明します。

で、時々これらのコーナーから、実に奇妙な料理達が我々に提供されることがあります。それは次のコーナーで…


[奇妙な料理達]

ここでは、忘れられない奇妙な料理達について、語らせていただきます。

まず始め。時々、アラカルトのコーナーに“料理長のおすすめ”なるメニューが登場します。

シーズンメニューとして洋物中華の二種類の料理がペアで用意され、その二つが水曜日隔週で交互にメニューに並びます。

味は通常メニューよりもおいしいものが多いのですが、名前がわかりづらくて困ります。

春に出た“ブッフブプーレ・アッラ・プランタニエ”には驚きました。 全部カタカナなのに読めない! 何度か練習して、やっと読めるようになりました。 で、これとペアだったのが“グーラオロー” (漢字を忘れてしまいました)。これは梅肉を入れた酢豚で、なかなか美味しいものでした。

そして夏にでたのが“魚香牛肉塊 (ユイシャンニュウロウクワァイ)”“コート・デ・ポーク・シャルキュティエ”。 秋が“芋頭肉片 (ユイトウロウピェンヌ)”“子牛のインド風煮込み”でした。 インドって、牛を大切にするんじゃなかったかなぁ…。いいのかなぁ、インド風に煮込んで食っちゃって…。

で、冬が、フランスの伝統的な家庭料理というふれこみの“カッスレー”と、“辣醤鶏丁 (ラージャンヂィディン)”でした。

この“料理長のおすすめ”メニューの特徴について記述したボードがテーブルに置いてあったりするのですが、 その特徴というのが実に訳のわからない日本語で書いてあって説明しない方がよっぽど良いのではと思わされる上に、 最後の特徴として「シェフが心をこめて作りました」 とか 「是非一度ご賞味下さい」とか書いてあります。 おいおい、それって特徴か? それに、全メニューに心をこめて作れって!

更に、“料理長のおすすめ”メニューでもないのに、我々に大きな話題を提供したのが“怪味肉片”です。 Y(事)のウェブサイトに食堂のメニューが掲載されているのですが、その中にこの名前を見つけた時の我々の衝撃と言ったら…。 この名前を聞いて、食べたいと思いますか??? でも、我々のような一部マニアにはたまらないネーミングで、登場を心待ちにしていました。

そしてついて登場の日になり、我々は勇んで食事に出かけたのです…が、陳列棚に並んだそれを見たとき、 私は「ううっ!」っとしか言えませんでした。 あまりにもやばそうな実物を目にして、私は遺憾ながら、食べるのをあきらめてしまいました。

しかし勇敢な我が後輩“F(酒暴)氏”は、そのメニューに果敢に挑戦! そして大変後悔したのでした。その名の通り怪しい味の肉片だったそうです。 でも、その名の通りなので、今回ばかりは文句も言えません。これってアリなのかなぁ。単なる失敗なのではないかという疑惑が…。

で、失敗といえば忘れられないのが「マーボーナスゼリー事件」です。

ある晩、私達はいつものように夕飯を食べに行きました (独身寮時代だったので)。その日のメニューは「マーボーナス」。 基本的にマーボー系が好きな私は、全くためらわずにそれを手に取りました。しかし、それを手に取った時、私の脳裏に“何かがおかしい”という考えが走りました。 ちょっとしてから、私達は気がつきました。手に取った時、当然少し皿が傾いたりするのですが、マーボーナスの表面が全く動かなかったのです!

嫌な予感を覚えながら、我々がマーボーナスにスプーンを入れたその瞬間 ‥‥‥‥‥ ザクッ! ‥‥‥

「な、何だ、この確かな手応えは…」
まるでゼリーにスプーンを入れた時のような、この確かな手応え。 そしてスプーンを持ち上げると、ニョーッと水面が盛り上がり、スプーンに付いてきてしまうではあ~りませんか!!
「うっ、うわあぁぁぁぁぁぁー!」
あまりのことに、我々は呆然としてしまいました。

いつもマズい料理も我慢して食べている我々ですが、 この時ばかりはさすがに怒り心頭!!! これはあんまりだわ! でも腹は減っているし、別の所に行くには時間が無いし、 ぶつぶつと文句を言いながらもこのマーボーナスゼリーをナスの部分だけ掘り返したりして食べたのでした。 私はかなり残してしまいましたが。

この後、トロミ系の料理全てがゼリーのように異常に硬い時期があり、私はしばらくトロミ系の食べ物には手を出しませんでした。 でも、ある時期からフッとノーマルなトロミに戻りました。失敗した料理人が闇に始末されたのだったら良いのですが…。

さあ、食堂で出る奇妙な料理はこのくらいかな。強いて言えば、“指の跡”料理を話すべきかなぁ。

焼き系料理や揚げ系料理の付け合せとして、ビーフンやクズキリ系の細い麺類をサラダっぽくしたようなものが皿の片隅に盛られていることがあるのですが、 これらは (もちろん手袋をつけてはいるのでしょうが) 手で盛りつけされるらしく、思いっきり指の跡がついています。 恐らく彼らは形を整えているつもりなのでしょうが、非常に食欲を減退させます。


[あの味]

スティーブン・キングの恐怖小説に 「IT(イット)」というものがあります。 メイン州のある街に“何者か”が巣食っていて、住民はその気配になんとなく気がついているのですが、それが何かがわからないので、 “あいつ”とか“そいつ”とか、つまり“IT”と呼んでいる…という話です。

なぜこのような話をするかと言うと、実はY(事)の食堂メニューにおいて、我々が“あの味”と呼んで恐れているものがあるのです!

それは、恐らくは何らかの調味料だと思うのですが、何とも表現が難しい味です。 “まずい”としか私は表現できません。これが、いつ、どのような料理に混入されてくるのか分からず、 Y(事)に来たばかりの頃は、その影に脅えながら食事をとったものです。

しかし、半年ほどかかって、やっとある程度の混入パターンが解明されてきました。“あの味”は、主に以下のようなメニューで出てきます。

しかし、その他のメニューにも混入されている場合が多々あり、 油断すると痛い目にあいます。

例えば、パスタフェアミートソースに混入されていたことがあり、私はこれにやられてしまいました。

その他、エビピラフにかけられていたこともあります。

ですので、結局は陳列棚に並んでいるものを見て判断するしかありません。

我々くらいになると、見ただけで大体わかるようになります。

いかにも“あの味”だと分かるものがあると、我々は「お~、あれ、電波でてるよぉ~」と言って、お互い警告し合います。

しかし今では、私以外のメンバーは逆に“あの味”を求めるようになってしまいました。 ここから私は、“あの味”とは“会社に忠誠を誓う薬”なのでは? という疑いを持っています。

でも最近なぜか“あの味”の料理がなかなか出なくなってしまったので、彼らは禁断症状に苦しんでいます。


[ビア・コミュニケーション]

恐らく2~4ヶ月に一度くらいの周期で催されるもので、定時以降、食堂がビアホールになるというものです。

生ビール、あるいは色々な種類の缶ビール、そして日本酒などが販売され、何種類かのつまみも販売されています。

結構お安い上に、社員証 (IDカード)で飲めるし (給料天引きだからお小遣い制のお父さんには嬉しい!)、何しろ会社で飲んでるんだからということで、 いつもは飲みになんて来ないような女性社員「ちょっと寄ってこうか!」と言って来ちゃうらしく、おじさん達は大変喜んでいるようです。

この“ビア・コミュニケーション”が開かれる日は、もちろん夕食の販売が無くなる訳で、その日も遅くまで仕事をするので夕飯が食べたかった私とF(酒暴)氏は、 酒抜きでつまみだけ食べてこようと思い、会場 (食堂)に出向きました。

しかし、気がつくと二人とも手にビールを持っていました (F(酒暴)氏なんか日本酒も既に購入していた)。

なお、後にこの“ビア・コミュニケーション”の様子を載せた壁新聞が貼り出されたのですが、 ある団体が乾杯をしている写真の後方に小さく、それに便乗して一緒に乾杯している、見覚えのある怪しい2人組が写っていました。


[宇宙]

私はY(事)に来てしばらくの間、この建物は2階建てだと思っていました。 というのも、私が利用する階段の全てが、私のいるフロアのある2階までしか無いからです。

ところがある日、2階フロアのいつもは通らないような通路を歩いていたら、何と3階に行ける階段があるではないですか!

# 確かに外から見れば3階建てなので、すぐに気がつくべきだったのですが…。

上ってみようかと思ったのですが、何となく怖かった私は、この建物を良く知っている人に、3階には何があるのか聞いてみることにしました。

するとその答えは …

「ああ、宇宙ですよ。」

な、なんと宇宙!!

私の席の上には、なんと宇宙空間が広がっていたのです!

で、よくよく聞いてみると、どうやら3階には (最近は評判が悪いですが…) ロケットや人工衛星など“宇宙事業関係”の業務担当部門が入っているのだそうです。それで、通称“宇宙”

また、それらの部門に勤めている人達のレクリエーションを受け持っている通称“宇宙レク”なる団体 (正式名は不明)があるらしく、 そこが様々なイベントを行っているのですが、そのネーミングが凄い!

例えば“宇宙オリンピック” (どうやら運動会らしい)。例えば“宇宙スーパーカップ” (どうやら球技大会らしい)。

どんな凄い大会なのかと思ってしまいます。ワールドカップなんて目じゃありませんね。だって宇宙規模の大会だもん。


[市水、工水、空気]

パイプ このページの最初の方で、天井に無数にはしるパイプの話をしたでしょ?

一体何が流れてるのかなぁって、皆で話してたんですよ。そしたら、あるところの3つ平行してるパイプに、こんな札が下がってたんです。

な、何だこれはぁっ! っと私達は驚きました。

まず“市水”って何でしょう。

簡単に考えれば、東京都水道局みたいなのが横浜市にもあるでしょうから、“横浜市水道局の水”ってことかなぁ。 じゃあ、飲み水のこと? でも、それにしてはあんまり太くないパイプなんです。

次に“工水”。これはじゃあ、“工業用水”ってことでしょうか。どこから手に入れている水なのでしょう。 “市水”とは違うんでしょうか。“Y(事)”と“鴨居駅”の間には、大きな川が流れているのですが、それでしょうか。

それとも、“下水”なんでしょうか。そんなのを天井に、しかもパイプ剥き出しの状態で流さないで欲しい。 もしも…もしものことがあったらどうするんだ!

最後に一番問題なのが“空気”です! 何で空気をわざわざパイプに流す必要があるんだ。 じゃあ、今そのパイプを見ている俺達が吸っているものは何?

そこで我々は “はっ!” と気づきました。そう、宇宙です! この建物の3階には、宇宙があるのでした。これらの3つのものは、きっと宇宙空間で仕事をしている人達のライフラインなのです!!

ああ、パイプを壊してみたい。特に“空気”。きっと、壊したとたんに3階から「ぎゃぁぁぁぁぁ! く、苦しいぃぃ! 空気がぁぁぁ!!」 という叫び声がするに違いない…。


[ゴードン]

私のいるプロジェクトには沢山の会社が参加していますが、その中にオーストラリア支社の人達もいます。

オーストラリア支社の人達が初めて日本に来た時、彼らが我々の席の向かい側に陣取ったため、私はやむを得ず彼らと名刺交換をしました。 それが、私とゴードンとの出会いでした。

実はゴードンという名前は、彼らが日本に来る前から我々の間に知れ渡っていました。 良くオーストラリア支社の話が出ると、彼の名前も出てきたからです。

で、彼らが初めて日本に来た時、2人組で来たのですが、そのうちの一人がいかにも“ゴォードォーーーン”という外見だったので、 彼が“ゴードン”に違いないと我々は話していました。 どんな外見かと言うと、口の周りにひげを伸ばしていて、頭頂部が禿げてるんだけど頭周りの金髪を長髪にしていて、 ハルクホーガンをちょっと上から潰したような感じなんです。

で、いざ名刺交換をしてみると、何と彼はゴードンではなく、その横の東南アジア系の人物 (外見だけでは日本人と大差無い) こそが“ゴードン”だったのです。

しかし納得できなかった我々は、この二人を“ゴードンのゴードン”“ゴードンじゃないゴードン”と呼んでます。 または、ゴードンじゃ無かった方を“外見ゴードン”などとも呼びます。ちなみに“外見ゴードン”の本名は“デビッド”です。似合わん。


[五右衛門]

“鴨居駅”から“Y(事)”に行く途中にミニストップがあります。 そのすぐ近くに、いかにもミニストップができる前からあったと思われるパン屋がありました。

そのパン屋は手作りのサンドイッチとかを売っていたのですが、ちょっと変わっていて、なんと店内に“立ち食いソバ”のコーナーがあったのです。 なぜにパン屋の中で立ち食いソバ!!

しかし毎日前を通っていても、客が入って行くのを見たことがありません。 何となくかわいそうに思った私は、(一人暮し時代だったので) 朝ご飯をそこでとろうかと思ったこともあるのですが、 パンを買うにしても、ソバを食べるにしても、どうにも入りづらい店で、ついミニストップに行ってしまいました。 これはいずれ潰れるなぁと思っていたら、案の定、ある朝そこを通ると、建物から看板が外されていました。

「ああ、ついに潰れたか…。」
何となく寂しい気持ちになっていたのですが、実はそこは潰れたのではなく、 パン屋を諦めて立ち食いソバに専念するための店内改装だったのです。 パン屋の方が仮の姿だったのかお前!!

五右衛門 そうして出来たのが、立ち食いソバ屋“五右衛門”です。

でも、新装開店して綺麗になったものの、外から丸見えのその店内には、やっぱり私からすると入りづらく、案の定あまりお客も入っていません。 しかもこの店、あまりに狭くてイスを置くことも出来ません。だからマジに立ち食いです。それでも6人くらい入ったらもう満員な感じ。 どうしてこんな狭さで店開こうと決心したのか疑問でした。

日が経つにつれて多少客が入るようになってきましたが、私が朝に店の前を通ると、まあ一人か二人くらい客がいる…という程度でした。

「やっぱり潰れるな…」
私がそう思い始めた頃です。“五右衛門”は夜の部の営業をはじめました。 夜だけ、もつ焼きや、ちょっとしたおつまみを出し始めたのです。
「立った状態でも我慢して飲んでくれる客が、どれだけいるかなぁ。まあ、駄目だな。」
そう思っていたのですが、夜の部を始めたとたんに、何と店内は連夜超満員! カウンターすら無い場所に、ビールジョッキだけ持って立ち話してる人までいます。 端から見ると、混雑気味の電車の車内に立って酒を飲んでいるような、何とも奇妙な情景です。

単独飲みに行ってきたF(酒暴)氏の話によると、

「つまみもビールも安いし (生ビール300円)、ちょっと1杯だけ飲んで行こうかなと思った時には便利っすよ!」
とのこと。

また、毎日店内の様子を見てみるに、お店のママさんも客引きに一役かっている様子。 特に美人というわけではないのですが、非常に良く客のおしゃべりに付き合ってくれているみたいです。おじさん受けしますよね、こういう人。

この成功を機に、昼にお弁当なども始めたり、メニューを増やしたり、店の外にメニューの写真を貼ったりという工夫をし続け、 私の心配を尻目に、結構成功をおさめてしまった“五右衛門”でした。


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