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夫の独り言


映画「落下する夕方」と映画「幻の光」(Aug.6, 2000)

 映画「落下する夕方」を観ました。一回は映画館で、二回目はビデオを借りて。
 この映画は撮影になることを知ってすぐに、「観に行かなければ」と思いました。それは江國香織さんが原作であると言うことも当然あるのですが、脚本・監督を合津直枝さんが手がけるということもありました。合津直枝さんは江角マキ子主演、是枝裕和監督の「幻の光」(原作宮本輝)のプロデューサーを手がけており、「幻の光」が好きな私は彼女がどのような手法でこの作品を映画化するのかに興味があったのです。
 これら二つの映画には、いくつかの共通点があると思います。一つは、小説を原作としているということ。もう一つは、近しい者の「死」を含むこと。そしてそのために、静謐な映画に仕上がっていること。
 映画「落下する夕方」を見た感想は、比較的長い小説を映画化するために必要十分に削るところを削って原作にない脚色を加えているなというものでした。「幻の光」は原作が短いので、原作に忠実に映画化することができ、それがとても良かったのですが、「落下する夕方」は小説としては短くないので、すべてを映画に入れることは無理だろうとは思っていました。小説の映画化は、映画として成り立つ時間という制約もあるので、だいたいは小説の方が良かったと言う人が多いと思いますし、小説の「落下する夕方」を好きな人は、そんなにこの映画を好きにならないのかもしれません。それでも、私は合津直枝さんの脚色の仕方をとても好きになりました。私には彼女が加えた脚色は江國香織さんらしさをたくさん含んでいるように思えるからです。
 例えば、映画の中でリカがプールで泳ぐシーンがあるのですが、江國さんの小説にはよくプールがでてきます。「つめたいよるに」の「デューク」にも「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」にもプール(しかも渋谷のプール)が出てきます。
 また、映画で華子が自分が子供の頃好きだった本は「バンビ」だったと言うシーンがありますが、「泣かない子供」の中に「『バンビ』のこと」というエッセイがあり、江國香織さんが「バンビ」に思い入れがあることがわかりました。
 原作ではリカは幼稚園で絵を教えていますが、映画では英語を教えていて、映画の中で留学中の友人がリカに対し「私も1年で見切りをつけてさっさと帰国すれば良かったな」と言うシーンがありますが、江國さん自身も米国留学を経験していますよね。
 私の全くの憶測でしかないのですが、合津直枝さんは脚色を加える時に、江國香織さんの本を読むなり直接本人にコンタクトをとるなりして、かなり神経を使ったように思えます。
 原作も好きですが同じくらい好きな映画ができてうれしいです。