「風に揺られて」


静かな住宅街の真ん中で
公園の木の下
今日も首を吊る人がいた
ここは首吊りの街

夕暮れ時
一人の家
回想の世界へ行く前に
刃物を持った少女が
立ちはだかる
そう
昨日電車の通る踏切の下へ
消えていった十三歳の少女
虚ろな瞳はそのままで

そして日が暮れた

一人
また一人
首を吊る人が居る
目を見開き
それぞれの思いを封印したまま

「あたしには首吊りは効かないのよ」
少女は言った

その横には
首を吊った人たちの体が
風に揺られていた