「シトラス」


風が吹く
やわらかな海風
雨も上がった

雨粒一粒に
溢れる東国情緒

ひんやりと冷たい岩場に
一人で寝そべってみる

静かに広がる海
薄い霞みの取れない空

ほのかなシトラスの香りに
心和ませるひととき

ひんやりと冷たい岩場に
そっと目を閉じてみる

小さくなり大きくなる
いくつもの渡り鳥の鳴き声

二日前に通った最後の船を
思い出した

そして
身に纏った
かすかなシトラスの香りに
心和ませるひととき

大きく息を吸い込んだ

そしたら
時間の流れなど
どうでもよくなった気がした