「夜明け」
暗い夜に
一人で曇った空を見上げ
眠らないように
少しだけ閉じた瞼を開けた
広げた両手に
浮かび上がる風
子供の頃の
初めて海を見た記憶に似る
さらさらと
流れて染み込んで
何も目に見えない
ロウソクの小さな火
ゆらゆらと
海藻たちが祝福
暗い木立の中
眠れぬふくろうの声
ふわふわと
辺りに溶け込んで
つかまえた香りは
手のひらをすり抜けて
夜空に拡散
眠らないように
少しだけ開いた目と
松の防砂林
砂浜に
遠く眺めて
その先には
夜明けの近い空が赤かった