私の嫌いな言葉
こないだ日記で少し触れたのだが、
中島義道「私の嫌いな10の言葉」(嫌いな人は嫌いだと思う)を読んで、
私が嫌いな言葉は何か、考えた。
・・・すぐに思い浮かんだ。
「冗談の通じないヤツだ」
この言葉が使われる文脈は、大体こんな感じではないだろうか。
AさんとBさんがいて、AさんがBさんをからかった。
ここでAさんが本当にただ冗談のつもりだったのか、悪意があったのかは別にして、
とにかくBさんは気分を悪くしてしまう。場合によっては怒り出すかもしれない。
そこでAさんは「冗談の通じないヤツだ」と言う、という状況だ。
さて、私がなぜこの言葉が嫌いかというと、
このAさんは、仮にもBさんの気分を害したのであって、それをちょっとでも謝るどころか、
「冗談の通じないヤツ」とBさんを判断することにより、さらにBさんの気分を悪くする効果があるからである。
「冗談の通じないヤツ」という言葉は、すなわち「これくらいの冗談でも怒る、心の狭いヤツ」と同じ意味で使われることが多い気がするのだが、
相手を「心の狭いヤツ」と下げることで、自分を相手より上に位置づけようとする、ズルさを感じるのである。
そして、こういうとき、周りの人は大体Aさんの意見に沿うもので、なぜかBさんの味方をして
Aさんに「おまえBに謝れよ」と言うのを私は聞いたことがない(これがあればBさんはまだ救われるのに)。
大体、Aさん同様「Bさんは冗談の通じない心の狭いヤツだ」という判断を下すのである。
こうしてBさんは、気分を悪くさせられた上、周りからも孤立するのである。
考えたら、恐ろしい言葉である。言われた方はたまったもんじゃない。
私がこの言葉を嫌うということは、
私はどちらかというとBさんの立場に置かれることが多い、ということなのだが、
考えてみればこの言葉、Aさんの立場からすれば便利な言葉である。
だって、相手の気分を悪くしても、謝らなくて良いのだから。
「冗談の通じないヤツ」という言葉を、相手の気分を悪くしてしまったことの隠れ蓑として使えるのだから。
ということを意識してから、
私は絶対「冗談の通じないヤツだ」という言葉は使わないにしようと心に決めた。
(もちろん他の人にこんな言葉を使うな、と強制するつもりはないし、できないであろうが)
(2005年1月21日)