不条理な永田町

 

何が不条理って、そりゃあ田中前外務大臣の更迭である。

 

たまたまテレビを見ていると、臨時ニュースが入った。

「野上(外務省)事務次官も更迭」

アフガン復興会議にNGOの組織を参加させないように、鈴木宗男前議運委員長が圧力をかけただの

それを外務省がいいなりになっていただの、騒がれている時である。

野上氏の更迭は無理もない気がした。国民の多くの見方は、鈴木氏が圧力をかけ、野上氏もそれを容認する格好だったからだ。

 

そんなことを一瞬考えながら、ニュースを見ていると気になったのが、「野上事務次官更迭」。この「も」の字。

つまり、野上氏のほかに更迭された人物がいるということである。

私はこの時点で、更迭されたのは重家局長だと決め付けていた。国会答弁で、鈴木氏が圧力をかけたことを暗に認める発言をしたり、

かと思えば、「そんなことはなかった」だの発言を二転三転させ、国会を混乱させた責任をとらせたのだろう、と思ったからだ。

ところが、皆さんもご存知の通り、更迭されたのは田中真紀子外務大臣だった。

 

「信じられねぇ」ってのが私の感想である。

 

NGOを巻き込んだこの騒動で、少なくとも国民(ていうか世論は)は田中外相のほうが真実を語っている、

つまり、鈴木氏が圧力をかけたことを徹底的に追究し、問題解決へと動いていたはずだ。

関係者の証言からも、鈴木氏が圧力をかけていたのは本当であろう、と見られていた。

それなのに、いの一番に更迭されたのは外相の方である。

 

世論とは完全に逆行させる形での、更迭の実行。そりゃあ小泉首相も苦渋の選択ではあっただろう。

しかし、それにしても、今回の更迭騒ぎで、内閣はまたも国民から背を向けた形となる。

支持率急落は避けられないだろう。私の父も私も、この内閣は今年は持たないな、と思っている。

もっとも、鈴木氏も辞任、野上氏も更迭だから、形としては「みんな悪い」ということだが、それにしても納得いかない。

理由は大きく二つ。小泉首相は、国民的人気の田中前外相の後押しで首相になれたようなものだからである。

これは今までの高支持率からも読み取れるだろう。

もう一つは、一番悪いタイミングで更迭してしまったことである。

真相を解明しようという野党や世論の動きが活発になろうとしていた矢先の更迭だ。

また、自民党で孤立状態だった田中氏は後ろ盾が弱い。

一方鈴木氏や野上氏は、旧態依然としている外務省の味方をしていたからいわゆる抵抗勢力などのサポートは強い。

自民党で生き残れるのは、どう見ても鈴木氏と野上氏という、今回の黒幕と思われる人たちだ。

 

予算案を成立させねばならない、という気持ちはよくわかる。

早く予算案を決めて、アフガン復興資金も決めたい、と首相は言っていた。それは十分賛成だ。

・・・しかし。やはり世論、国民を裏切ったように見える、今回の更迭騒動の余波は大きいだろう。

 

更迭後、後任に緒方貞子氏にラブコールを送った内閣。そしてそれを断った緒方氏。

あんなだらしない外務省の姿を見れば、断るのは当然だ。

私も、緒方氏は外相にならないほうが良いと思っていた。

官僚に縛られるず、彼女自身の人間力で世界貢献をしたほうがよっぽど世界のためだ。

そして結局、後任は川口順子前環境相である。

適任かどうかは、ここでは問題にできないが、外務省はこの人事を歓迎しているという。

「田中さんほどうるさく言わなさそうだから、やりやすくなる」

これで、田中前外相が更迭されたことに、余計不条理を感じたのである。

 

小泉政権が何をしたいのか見えなくなってきた。

そして、政治に期待できないというマイナス発想が、また国民の間に広がってしまうのだろう。

 

(2002年2月1日)

 

エッセーのインデックスに戻る