厄払い体験記

 

私は今年23歳になる。

男性の23歳とは、つまり前厄。そう、厄払いに行くことができるのだ。

私は本来、霊の類は一切信じないタイプである。厄なども然りである。

しかし今年は、正月早々熱を出すなど、年初めとしては最悪の滑り出しだったため、

やはりきちんと厄払いには行っておこう、さもないと来年の正月は交通事故に遭ってしまう

・・・というわけで今日2月3日、厄払いに行ってきた。

ここでは、その厄払いの体験談を話そうかと思う。

 

朝、神社に向かうと、まず社務所で記名してくる。

そこで名前の書いた札と、青い色のついた札をもらってきた。

ちなみに費用は7000円。

(他に赤い色の札もあったが、何を基準に青と赤とを分けているかはわからない)

記名を済まし、私は控え室に入った。

参加者は皆スーツなどの正装だった。厄払いはやはり正装で来るべきなのだ。

余談だが、うちの父はかつて厄払いのとき、ゴルフにでも行くような格好で会場に行き、

神主にしっかり説教を食らっている。皆さんも気をつけて欲しい。

社務所の控え室には、なぜかバラエティ番組をテレビで流していたので、妙に俗っぽさを感じたものだ。

私は、外で厄払いの儀式を行うと思っており、しかも今日はとても寒いので、やや憂鬱気味だった。

しかし社務所にみんな集まっているではないか。ということは社務所で厄払いをするのだ・・・

これは暖かくていいや、そう思っていた。

するとしばらくして神主が「それでは、外に出て会場に向かってください」とのたまう。

こんな寒い中、外で厄払いやる気か、厄払いの日に風邪を引かす気か、と私は思った。

しかし文句も言えるわけもなく、皆おとなしく外に出て会場へ向かった。

 

寒さにも耐え、会場に到着。

そこでコートを脱ぎ、会場に一礼してから入場。

会場は暖房完備。とりあえず風邪を引く心配はなさそうだ

運動会で外にすわるような作りのいすが並べられていた(今日は参加者が多くていすが足りなかったが)。

私は慣れないいすに座ったせいか、座るときに転びそうになった。

3列ほどあっただろうか、私は目立たないように後ろの列に座った。

ここで失敗したのは、その席が暖房直撃の位置だったこと。暑いを通り越して眠くなってしまった。

そうして全員が着席し終わり、いかにも「まろは・・・」としゃべりそうな格好で神主が登場。

神社らしい格好といえばそれまでだが、

この神主も、神社の仕事が終わったら我々と同じ、普通の格好をするんだろうなと思うと

しょせんあの格好も一種のコスプレじゃないか、と私などは思ってしまった。

 

その後、社務所でもらった、人の絵の書いてあった紙で、健康祈願をこめて

頭→両肩→胸→腹・・・という順でその紙で体をなでるよう言われた。

その後は、自分の身体の悪いところ(病んでいるところ)を自由にこするよう言われた。

私は即座にをなでまわしたものだ。腰痛が治りますように・・・

頭・・・これ以上頭がおかしくなりませんように・・・

腹・・・とりあえずもう少し引っ込んでくれますように・・・

 

儀礼を一通り行って、神主から玉櫛の使い方など、諸事の説明があった。

しかし、この神主、いかんせん声が小さい。語尾など聞こえたもんじゃない。

おまけにこの日は、赤ん坊が2人ほど参加していて、その泣き声が、神主のか細い声を掻き消す。

一人の赤ん坊が「帰りた〜〜〜〜い(泣)」ならば親も帰らせろや

私は初の厄払いなので、玉櫛の使い方をしっかり聞いておきたかったのだが、

赤ん坊の泣き声でまったく聞こえないため、てんで使い方を覚えられず、不安を抱えることになった。

まちがったら説教されるんじゃないか、と。

 

ちなみに、玉櫛の扱い方自体は難しいものではない。

受け取る時に、右手は上から、左手は下から持つこと、そして胸の高さに持ち上げて祈りをすること、

それが終わればあとはおさいせんを投げた後の動きと同じ要領である。

 

その後、神主が念仏みたいなものを唱え始めた。そこで参加者全員の名前を読み上げる。

「○○(苗字)の○○(名前)」のように読み上げる。ちゃんと私の名前も読まれた。

呼ばれなかったら今年一年不幸なんだろうな、という心配は取り越し苦労に終わった。

その後、ついに来たのが、玉櫛を使っての参拝儀式。

玉櫛といっても、何かの植物の枝切れ(葉もついているが)を使う。

それを神主が一人一人に手渡すのだが、私のところで、ちょうどその玉櫛がなくなってしまった。

困った神主、なんと前の人が使ったものをそのまま私に手渡した。

おい、人の使いまわしかい・・・思わずつぶやきそうになったが、説教されるのを考えると言えなかった

 

45分ほどして厄払いは終わり、神主から一人一人にお札と豆と神酒を頂いた。

その酒はうちの母によって、料理に使われるのだろう。

とりあえず、今年の厄払いは無事に終わったのだった。

 

ちなみに、家に帰ってきてから、ズボンのすそにガムがついているのを発見。

厄払い直後からこれかよ・・・と思わずにはいられなかった。

そして、今年一年の運について不安を感じたのは言うまでもない。

 

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