外来語をちょっと考える

第1回「外来語の豆知識」

 

外来語って何ですか?と言われると、

わかりやすくいえば「外国から入って、自分の国の言葉と同じように使われるようになった語」となりましょうか。

後半が大事です。でないと、外国の単語はなんでも外来語になってしまいます。

カタカナで書けば全部外来語か、というとそうではありません

例えば、メディタレーニアンなんて言葉を聞いて、ぱっと意味がわかる人は多くないはずです(Mediterranean「地中海」という意味です)。

だってメディタレーニアンって言葉は、普段使うことはまずないと思いますし。

でも、ビデオとかテレビとかというのは、皆さんもよく使うでしょうし、意味もぱっとわかるはずです。

 

じゃあカタカナで書かれていて、よく使われる単語は外来語ですか?・・・いいえ、違います。

日本人が勝手に作ってカタカナで書いた単語も多いのです(和製英語というやつです)。

特に長い単語を短くしてできた単語は、この和製英語が多いです。

例えばリモコン、ワープロ、パソコン、エアコン、ラジカセ、カーナビ、デジカメ(こうしてみると、機械の名前が多いです)などは外国では通じません。

ていうか、そんな単語は英語にはありません。

(ただし元に戻した単語はもちろん通じます。例えばエアコンなら、エアーコンディショナー"air conditioner"はOKです)

 

次に、カタカナ表記されていれば、それは全部英語からできたというのも間違いです。

例えば、食べるパン。これはフランス語です(painと書く。ちなみに英語ではbreadです)。

フランス語由来も割りと普段使うのが多いです。英語の次によく使われる外来語かもしれません。

なじみ深いのはほかにがカフェオレ、グラタン、ガトーショコラ、クレヨン、フォルム、メゾン(アパートの名前で多い)があります。

病院で使われるカルテ。これはドイツ語です(Karteと書く。ほかにバームクーヘン、フランクフルトももとはドイツ語)。

ヨーロッパ系の言語が元になる外来語が多いのですが、これは日本人がもともと欧米志向であることが原因の一つです。

じゃあカレーは?インドが由来だからインド語由来だな・・・違います。これは英語です(curry)。

どこから来たかなんて見分ける方法はありません。語源を覚えるしかありません(そんな物好きいないと思いますが)。

ただ、イタリア料理の名前はイタリア語が多いでしょうね。○○料理のメニューは○○語が多い、というのは正しいと思います。

つづりを見ればわかるでしょうが、カタカナで書かれてるのでそれも無理ですね。

あ、「つづり」で思い出した。よく英語の先生でも「スペルを間違えるなよ」って生徒に言いますね。

実はこのスペルと言う単語、これは元の英語(spell)とは意味が違います。英語のほうは「まじない、呪文」という意味です。

正しくはスペリング(spelling)と言います。英語の先生でも知らない人がいますが、これで一つ先生を超えました(笑)。

 

スペルとスペリングの話が出てきましたが、最後に外来語の意味について、もう少し突っ込んだ話をします。

外来語は、自分の国の言葉のようにたくさん使われる余り、

外国で使われている本来の意味と、程度はともかく変わってしまうことがよくあるのです。

いくつか例を挙げましょう。

「ボーイフレンド」と「ガールフレンド」というのは、それぞれboyfriendgirlfriendからきた外来語です。

日本語の方は、わりと気軽に使うことが多いんじゃないでしょうか。

いわゆる彼氏彼女の関係でなくても、単に「男友達」「女友達」という意味でも使えますよね。

しかし英語の方は、この「彼氏彼女」という意味が強いんです。

つまり、英語でThis is my girlfriend.などと紹介すると、「私はこの女性と性的な関係にある」と伝わりやすいです。

だからもし、例えばあなたが日本人男性で、アメリカ人女性と交際しているとき、

単なる女友達のつもりで、This is my girlfriend.と間違って言うと、たぶん彼女から引っぱたかれるでしょう。

もう一つ。よく大学生が学期末に「レポートまだ書いてな〜い」と言いますが(かくいう私もそうです)、

このレポート、英語ではreportですが、英語のほうには、この「学期末に出すレポート」という意味はありません。

英語ではこの場合、term paper、あるいは単にpaperと言います。

コンプレックスという外来語はどうでしょう?私たちは劣等感という意味で使いますが、

英語のcomplexに「劣等感」という意味はありません(inferiority complexと言います)。「強迫観念」「複合体」という意味です。

このように、外来語と本来の語(つまり元になる語)の意味がどのように違ってきたのかを研究することもできます。

 

さて、今回のポイントは、黄色の太字で書いた4つです(いやぁパソコンで書くとこういうときに便利だ)。

どれも、外来語に対して私たちが誤解しがちなポイントだと思います。

 

第2回は、外来語を日本語に言い換える動きがあることについて書きます。

 

(2003年3月6日)

 

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