外来語の話

第3回「たくさんあります、英語の外来語」

 

さて、外来語の話も3回目。

今までは主に日本語にある外来語の話をしてきましたが、

実は英語にも外来語は存在します。・・・いや、むしろ外来語が多い、と言うべきでしょうか。

後で具体例を交えてお話しますが、ラテン語、スカンディナビア語、フランス語などからの外来語が多いですが、

どれもアルファベットで書くので、ぱっと見て「あ、外来語だ」と気づくのはほぼ無理です。

だから、英語に外来語がある、と言われてもピンとこないかもしれません。

あくまで雑学、豆知識として、ここも読んでください。

 

今日のポイントを先に言ってしまいますが、

英語は外来語が多いこと

外来語が増えたのは英語とイギリスの歴史と大きく関係する、というのがポイントです。

ただし注意して欲しいのは、英語の外来語はもとの語とつづりがそのままというわけではないことです。

上に挙げたラテン語、スカンディナビア語、フランス語を中心に、歴史の順に話をすすめます。

 

まずラテン語とは、古代ローマで使われた言葉です。

西暦597年、ローマからイギリスにキリスト教が入り始めました。

そのときラテン語が一緒に入ってきたわけです。

このとき入ってきたラテン語は、宗教や教会をイメージさせる語が多く入ってきました。

例えばangel(天使)、candle(ろうそく)、demon(悪魔)、nun(修道女、尼さん)、

priest(神父)、shrine(神殿)、temple(寺院)など。

他になじみ深い(日本の中学か高校の最初で習うくらい)のは

elephantfevergianthistorynoonpaperplacetigerなどがあります。

 

次にスカンディナビア語ですが、スカンディナビア半島から連想できるように、昔の北欧の言葉です。

西暦793年、イギリスにスカンディナビア人が入り込み、スカンディナビア語も入りました。

なじみ深いのはbankcalldiedragegggetgivekidknifelegroot

sisterskysteaktaketightwantweakwindowなどです。

ちょっと文法の話になると、they, their, areも元はスカンディナビア語です。

さっきのラテン語のなじみ深い単語と比べ、こっちのスカンディナビア語の方が数が多いことに注意してください。

これは、スカンディナビア人がイギリスの原住民(ケルト人)と共に生活してきたという歴史的事情によるものです。

 

次はフランス語です。

西暦1066年、北フランスにあったノルマンディー公国から、ノルマンディー公ウィリアムが、イギリスに攻め込みました。

いわゆるノルマン征服です。

このときはスカンディナビアの侵略と違い、徹底的に原住民を支配しました。

そのため、イギリスの公用語がフランス語に決められ、フランス語の外来語が多く入ってきたわけです。

行政関係のことばは、liberty(自由)、mayor(市長)、prince(王子)、tax(税)が、

宗教関係のことばは、charity(慈善)、prayer(祈り)、saint(聖者)、

・・・などのような割と堅い言葉のほかに(他に法律関係や軍事関係の言葉も多いですが、あまりに多いので省略します)

飲食物関係のことばは、beef(牛肉)、pork(豚肉)、dinnermutton(羊肉)、salmon(鮭)、sausage(ソーセージ)など、

ファッション関係のことばは、diamonddressemeraldfashionjewelpearlなど、

その他blue、city、hour、mountain、riverなど、普段よく使うような言葉にも、フランス語由来が多いです。

いかにフランス語が、この時代のイギリスで使われてきたか、わかるような気がします。

 

14世紀から16世紀、イタリアでルネッサンスの時代になると、

イタリア語由来の外来語が英語に入り込むことになります。

designoperasolosonatasopranoviolinなどの芸術関係のことばが目立ちます。

ルネッサンスの時代のあたりは、イタリア語だけでなく様々な外国語から外来語が入り込んできます。

フランス語、ラテン語はもちろん、potatotomato(スペイン語)、coffee(トルコ語)、

knapsackyacht(それぞれナップサック、ヨット。オランダ語)。

駅にあるkioskはトルコ語。他に日本語由来の外来語もあります。shogun(将軍)、kimono(着物)など。

そしてteaketchup(ケチャップ)は中国語由来です。

 

16世紀の終わりごろから、イギリス人が今のアメリカ大陸を発見し、アメリカに移住する人々が増えてからは、

当時イギリスの英語には無くて、アメリカの英語にはあるような外来語が増えます。

mooseはインディアンの使っている言葉で、シカに似た動物です。

cookie(オランダ語)、poker(ポーカー。フランス語)、kindergarten(幼稚園。ドイツ語)、

pastapizzaspaghetti(イタリア語)、cafeteria(スペイン語)などがあります。

 

さて、第3回は「こんな外来語ありまっせ」といった紹介ばっかりでしたが、

ふーん、これってもとは○○語だったんだぁ〜、なんて新発見、雑学が増えたかもしれませんね。

とはいえ、ここに出した単語、どれがイタリア語、どれがフランス語などと、

たくさんありすぎていちいち覚えてられません(笑)。

それでも、英語には外来語が多いこと、外来語が入ったのは英語とイギリスの歴史に大きく関係する、

ということだけは分かってもらえたかと思います。

 

第4回は、もともとイギリスにあった英語と外来語とを比べると

いくつか傾向が見られることをお話します。

 

(2003年3月22日)

 

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