外来語の話
第4回「もともとの英語と外来語」
今回は、もともとイギリスにあった英語と外来語とを比べると、いくつかおもしろいことがあるので、それをお話します。
(おもしろい、というのは、前にお話したことと関係するからです)
トピックは3つありますが、一つ目は、もともとの英語より外来語のほうが洗練していると思われていることです。
これって、日本語よりも外来語の方がしゃれた感じがする、というのと似たようなものですね(外来語第3回を参照)。
前回、英語の外来語で特に多いのはラテン語とフランス語だと言いましたが、昔のイギリスの人々も同じで
ラテン語やフランス語に一種のあこがれやコンプレックスを持っていたんじゃないかな、と想像できるわけです。
具体例を3組挙げましょう(もともとの英語、フランス語からの外来語の順です)
「pig・pork」、「bull・beef」、「sheep・mutton」
さて、この3組の意味を知って、ある一つの傾向に気づいたでしょうか。
・・・それはこの3つ、「動物・その食肉」というペアになっていることです(それぞれ豚、牛、羊)。
加工されてないままの動物の名前がもともとの英語で、加工された食肉の名前がフランス語由来。
加工するほうが作業としては当然高度で洗練されているわけで、そのような洗練された意味には外来語が使われている、というわけです。
(ちなみによく知られているcowは乳牛です。牛は大人・子供、オス・メス、去勢された・されない、で名前がそれぞれ違いますが
ここでは面倒くさいので省略します。気になる人は英和辞典でbullかcowを探してください)
二つ目は、動詞の活用に関する話です。
中学1年の終わりか中学2年の初めに、過去形というものを習うはずですが、
このとき、規則活用と不規則活用というのがあって、不規則活用を丸暗記させられた記憶があるかと思います。
規則活用とは、動詞にed(場合によってはd, ied)をつければ過去形になるもので、不規則活用とはそれほど簡単でありません。
例えばplay-played、like-likedで、規則活用。しかしmake-made、write-wrote、teach-taughtは不規則活用。
不規則活用はとりあえず形を丸暗記するのが手っ取り早いです(もっとも、たくさん覚えてればパターンが見えますが)。
実はこれも外来語と関係がありまして、全部に当てはまるとは限りませんが、
不規則活用の動詞はもともとの英語が多く、不規則活用の動詞は外来語が多いのです。
何でかを簡単に言いますと(細かいことは私も覚えてない)、昔の英語というのは活用が面倒くさい言語だったことがあります。
「彼が作った」「彼女が作った」・・・いちいち「作った」(makeの過去形)の形が変わってたのです。
ところが、いろんな理由で外来語の動詞も入るようになって、
そのたび、こんな複雑な過去形の作り方をしてられるか!となり、色々あって、一律で今のedをつけよう、となったわけです。
最後に、もともとの英語と外来語の意味が微妙に違う場合があることをお話します。
(外来語の方が洗練された意味であるとは必ずしも限らない)
これも、日本語の外来語と、その元となる英語との意味が微妙に違う場合があるのと似てます。
(第1回参照。例えばボーイフレンドとboyfriend)
例えばlustとdesire。どちらも「希望」という意味で似ているのですが
(前がもともとの英語、後がフランス語由来の順。以下同様)、
今のlustには、ほとんど性欲の意味にしか取られません(昔はもっと一般的な欲望も表していた)。
次に、earthとglobeです。どちらも「地球」ですが、earthが他の天体と対比しての地球(地球は太陽の周りを回る、の時はearthを使う)
globeは、丸いことを強調したいときに使います。だから地球儀という意味もあります(earthに地球儀の意味はなし)。
次にdeerとanimal。今はそれぞれ「シカ」「動物」という意味ですが、
もともとdeerというのは「動物」という意味だったのですが(昔はdeorと書いた)。
・・・他にも色々あるでしょうが、覚えてないので(笑)ここまでにしておきます。
これで外来語の話は終わりです。
第1回と第2回で日本語の、第3回と第4回で英語の外来語の話をしましたが、
外来語に対して一種の憧れがあること、
もともとの英語・日本語と外来語の意味が違う場合があるという類似点がありました。
これだけ見ても、英語と日本語は似た部分もあるんだな、ということが実感できたかと思います。
次からは、単語と音・発音の関係について、いくつか書きたいと思います。
(2003年3月29日)