番外編

北海道弁「なまら」を言語学する

 

「なまら」というのは、どの世代にも使われる北海道弁の一つではなかろうか。

今回のエッセーでは、Langの番外編として、この「なまら」というのはどういう使われ方をするのか、

それを言語学的に言うと(といってもそう堅苦しいものではないが)どうなるか、書いてみよう。

 

まず、「なまら」の意味は、「とても」「すごく」くらいなもんだろうか。あえて英語で言えば、veryに相当する。

次に、「なまら」の品詞(名詞、動詞など○○詞と呼ばれるもの)は何か・・・答えは副詞である。

前にどこかで、名詞と形容詞と副詞の使い方を書いた記憶があるが、

副詞の使い方は、動詞、形容詞、副詞を修飾するのを思い出して欲しい。

例えば「彼は速く走る」の中で、「速く」は「走る」という動詞の意味を狭めている。

(どんな状態で走る?に答える形)。これが動詞を修飾する、ということで、

すなわち、「速く」は副詞ということになる。

ではこれを踏まえて、「なまら」の使われ方を、実例で見てみよう。

 

@「あの子、なまらかわいいよね」

A「あの先生、なまら早くしゃべるから聴き取れねぇや」

B「今日の部活で、なまら走ったぞ」

 

さて、@の「なまら」は「かわいい」を修飾している。

そこそこかわいいというのでもなく、少しだけかわいいというのでもなく

「とても」かわいい、といっているのだから、「かわいい」の意味を狭めているといえる。

ちなみに「かわいい」は形容詞である。

同じようにAでは、「なまら」は「早く」を修飾していて、

この「早く」は副詞である(「早く」が「しゃべる」という動詞を修飾しているから)。

Bの「なまら」は「走った」という動詞を修飾している。

つまり、「なまら」は動詞か形容詞か副詞を修飾するわけだから副詞、というわけである。

 

さて、なんで急にこんなことを書いたかというと

巨人戦札幌シリーズの中継で、清原が特大ホームランを打った後、日テレの某アナウンサーがこんなことを言っていたからである

「そういえば、北海道では「すごい」とか「ものすごい」というのを、「なまら」というそうですね。

そうなると今の清原のホームランも、「なまら」なホームラン、と言うんでしょうねぇ」

・・・「いいや、言わねぇ」と即座に突っ込んでやった。北海道の人なら、まちがってもそう言わない。

さて、この「なまらな」というところに注目してもらいたい。

これは「ホームラン」という名詞を修飾している。名詞を修飾する品詞は何か?・・・それは形容詞である。

さっき、「なまら」は副詞、と言った説明と思いっきり食い違う。

このアナウンサーの「なまら」の使い方が違うというのを、

言語学的に分析するならば、こうなるのである。

 

今日言いたいのは「なまら」は副詞だ、ということである。

それと、言葉で飯を食うアナウンサーだけに、もっと言葉について勉強しておいて欲しいもんだ(笑)。

 

(2003年6月29日)

 

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