単語と意味をちょっと考える
第2回「意味が反対というのは?」
前回は、「単語が同じというのは?」と言うタイトルで、
2つ(あるいはそれ以上)の単語の意味が同じと言っても、主観的な違いが有る場合がよくある、ってことを話しました。
今回はその逆で、「単語の意味が反対というのは?」ということで、
いわゆる「この2つの単語は意味が反対です」と言われるものに注目して話をします。
・・・と、その前に軽くウォーミングアップを。次の単語の反対の意味になる語を答えてください。
(1)男性 (2)死んでいる (3)未婚の (4)長い (5)美しい (6)新しい
・・・さてさて、「バカにするんじゃない」というお叱りを受けそうですが、
それぞれ答えは(1)女性、(2)生きている、(3)既婚の、(4)短い、(5)みにくい、(6)古い、となります。
と、これだけだと今回のエッセーの意味がないわけで。
実はこの(1)〜(6)、ちょっと抽象的に見ると、大きく二つに分けられるんですよ。
(1)〜(3)と(4)〜(6)とに分けるんですが、ではこう分けた根拠は何でしょう?というのが今回のテーマです。
これだけ見て、違いが分かった人は、言語学を勉強したことがある人でしょう。
ヒント。
(1)〜(6)の単語とその反対語の間に、「○○でも××でもない」という文を作ってみましょう。
例えば、「男性でも女性でもない」というのは、人間であればありえませんよね。
同じように「死んでいるのでも生きているのでもない」というのも変だし、「既婚でも未婚でもない」も変です。
これが(1)〜(3)です。
ところが、「長くも短くもない」や「美しくも醜くもない」や「新しくも古くもない」はどれも日本語として自然だと思います。
これが(4)〜(6)です。
じゃあ(1)〜(3)と(4)〜(6)は何が違うのでしょうか?
(1)〜(3)は、どっちでもないというのがありえない場合です。つまり男性でなければ、必ず女性になりますし
生きていなければ、それは死んでいるということだし、未婚でなければ既婚ということです。
つまり「Aでなければ必ずBになる」というのが(1)〜(3)の特徴です。
この特徴がないのが(4)〜(6)です。
長くもないけど短くもない、その中間かな、というのは自然にありうるだろうし、
美しいというわけじゃないけど、みにくいとまではいかない、そんな人はごまんといることでしょう。
つまり「Aでなければ必ずBになる」とは限らないのです。AとBの間には中間段階があるのです。
このように、意味が反対、と一言で言っても、大きく二通りに分けられるのです。
つまり、「Aでない=B」に必ずなるものとならないもの。
「この2つの単語は意味が反対ですよ」と言われたら、だいたいこの2つのどれかになるはずですので、
もしそういわれたら、ちょっとそこのところ意識してみてください。
(2003年8月8日)