単語と意味をちょっと考える
第4回「昔と今とで意味も変わる」
さて前回は、意味がたくさんある単語には、何らかの意味同士のつながりがあるんだ、ってことを話しました。
今回は、ちょっと時系列に沿って、昔と今とで意味が変わる例もあるってことを見たいと思います。
ちょっと古文で出てくるような単語を使います。
また今回は荻野文子「マドンナ古文単語230」(学研)をかなり参考にしています。
日本語の例から行きましょうか。
まず「かげ(影)」という単語。今は「物が光を遮って、光源と反対側にできる、そのものの黒い像」(大辞泉)、
まぁ太陽の光が自分に当たってできるかげ(影)を思い出してください。英語でいうとshadowです。
ところが、昔はその正反対の、「光源」つまり「自ら光るもの」という意味で使うこともよくあったようです。
例文「木の間から漏れてくる月のかげを見る」・・・この「かげ」は、自ら光るものの意味です。
自ら光るものそのものにshadowの影はありませんよね。
次に「ことわる」の例を見ましょう。
これの語源は「事割る」で、物事を割って細かくする、という意味から
昔は「説明する」という意味で使われることがあったようです。筋道立てて物事を解説したりすることです。
今の「ことわる」は「拒絶する」の意味で、「デートの申し出を断る」みたいな例で使われます。
昔と今とでは全然違うようですが、「物事を割る」というのは共通しているような気がします。
申し出というものを割って台無しにする→拒絶する、なんて考えることもできると思われます。
最後に「逢う」を見てみましょう。
今と違うのは、昔の「逢う」は「結婚する」という意味があったことです。
これは昔の文化と関係があるようで、昔、男女が顔を合わせる=結婚する、だったようです。
今と違って、男が女にほれるきっかけは、覗き見や評判などでちらっと見たり聞いたりする程度で、
その後和歌を交わして、気が合えば男が女の所に夜這いをして、肉体関係を結び、朝方になって男女は初めてまともに顔を見る・・・
というわけで、顔を合わせる=結婚するだけの深い関係になるのです。
だから昔の「逢う」=「結婚する」になるわけですが、
今こんなことをしたら、たぶん不法侵入で逮捕されることでしょう(笑)。
英語の例も1つだけ見ておきましょう。
humorという単語は、今は「ユーモア」という意味ですが、
その語源(つまり昔のhumorの意味)は、「体液」という意味だったようです。
おう、全然つながりがないじゃないか、と思われますね。私も初めて聞いたときはそう思いました。
しかし、よーく考えると共通する意味がないでもないのです。
いずれも「うるおすもの」ですよね。つまり、体液なら身体を湿らすことで潤し
ユーモアなら、笑いを呼んで心を潤す、というわけです。
まぁなんとなくでも意味のつながりがある、ということですね。
さて、こんなふうに昔と今とで意味が違う場合ほんの少しだけ見てきました。
もちろんこんな感じで、昔と今とで意味が変わる場合に、何らかのつながりが必ずあるとは限りませんが、
何らかの意味のつながりが見出せる場合もあって、その場合は、そのつながりを知っておけば
複数の意味があっても、何とか対応できるようになります。
意味と意味とでつながりが見出せた場合は、それをしっかり覚えましょう。
すると古文と現代文の力(特に語彙力)がちょっとは上がります。
意味と意味とのつながりが見出せない場合は、あきらめて丸暗記しましょう。
さて、今回で、単語と意味の話はおしまいです。
同時に、単語と何かを関連させて話をするのも一旦おしまいにします。
次回からは、英語や国語の時間で勉強するであろう項目について、少しずつ話をする予定です。
(2003年8月14日)