単語と形・文法をちょっと考える

第4回「単語の作り方:〜する、〜的、〜系」

 

今回から話を変えて、単語と形・文法についてちょっとお話したいと思います。

日本語でも英語でも何語でも、文字があれば必ず形があります。それは今回のトピックである、語の作り方にも大きく関連します。

そして、後でお話するのは、単語と文法の関連です。文を作るルール(=文法)に、単語がどう影響するのか、

いくつか現象を見ていきたいと思います。

 

さて、その第1回目は、「単語の作り方」というタイトルでございます。

例えば日本語にはいくつ単語があるんでしょうか?と聞かれてはっきり答えられる人は少ないと思います。

なぜなら、常に新しい単語が作られているからです。

また、どの言語を話す人でも、言語を扱う脳の部分に障害がなければ、新しい語を作り、分析する能力があります。

いわゆる派生語というやつです(importantを名詞形に直せ、みたいな問題で出ます)。

のっけから抽象的な話になりましたが、以下、具体例を使ってこの「単語の作り方」について説明したいと思います。

単語の作り方は、もともとある語に何かをくっつけてできるという単純なものですが

(例えば交通と渋滞をくっつけて交通渋滞、のような複合語と呼ばれるものが代表例)

ここでは、いわゆる派生、という作り方に絞ってみます。

派生とは、単語に、接頭辞(「不可能」の「不」がそう)や接尾辞(「冒険者たち」の「たち」がそう)をつけることです。

そしてその派生の仕方で、品詞が決められます(品詞とは、名詞、形容詞、動詞、副詞、接続詞など、○○詞と呼ばれるもの)。

日本語では、その派生の代表例が、「〜する」「〜的」「〜系」があるように思います。

 

まず「〜する」ですが、これはかなりポピュラーなものです。

「看病する」「読書する」「研究する」などのように、漢字熟語+「〜する」というパターンがあります。

また、カタカナの外来語に「〜する」をくっつける例も最近は多く見られます。

例えば「ネットする」「メールする」「プリントする」「チェックする」「ゲームする」など。

このように「〜する」という語がつけば、最終的には動詞になります。

「〜する」ほどポピュラーじゃないですが、「る」をつけて動詞にする例もあります。

「メモる」「サボる」(「サボ」はもともと「サボタージュ」の略)など。

あまり一般的ではないですが、お好み焼き屋「風月」に行くことを「風月る」と言った人もいます。

また、コピーすることを「コピる」と言う人もうちの大学にはいます(実際にコピー機の近くに「コピる」という文字があります)。

割と簡単な、動詞の作り方の一例です。

 

次は「〜的」ですが、これもたくさん例があります。

「現実的」「積極的」「批判的」など、漢字熟語+「〜的」というパターンが多いですが。

それ以外の語にくっつける例もあります。

最近多いのは「オレ的」「私(わたし)的」「ゆーた的」など、人を呼ぶ名称に「〜的」をつけるパターンです。

「オレ的には」という使い方が多いようですが、これは「オレとしては」「オレの意見としては」という意味で使われているようです。

「〜的」というのは、「〜に似た性質を持つ」という意味です(あまりわかりやすいもんじゃないですが)

例えば「現実的」なら「現実に似た性質をもった」と言い換えられるでしょうか。

「〜的」をつけてどういう品詞になるかというと、「〜的な」といえば、名詞を修飾するので形容詞になり(現実的な問題、の「問題」は名詞)、

「〜的に」といえば、動詞を修飾するので副詞になります(現実的にものを考えろよ、の「考えろ」は動詞)。

似たような単語の作り方に、最近なら「〜チック」というのがあります。

「乙女チック」など、結構前から使われているものもありますが、この「〜チック」は「〜っぽい」くらいの意味になるようです。

例えば「田舎チック」だと田舎っぽいだし、「漫画チック」だと漫画っぽいだし。他にもたくさん作れます。

 

最後に「〜系」ですが、「〜に関連するものを系統的に集めたグループ」という意味があるようです。

例えば「太陽系」なら、太陽とその周りの星を集めたものですし、「文系」なら、人文科学・社会科学の学問を集めたグループになります。

これも新しく作りやすく、例えば「渋谷系」なら、渋谷にいる若者を一まとめにした言い方ですし、

私がよく使う「ごはん系」などは、例えば夕食何にする?といわれたときに使いますが

要はどんぶり、チャーハンなど、何かご飯ものが食べたい、というときに使います。

この「〜系」がつくと、その単語は名詞になります。

 

ここでは日本語の例に絞りましたが、このような単語の作り方は、他の言語にも見られます。

例えば英語なら、mentが付けばだいたい名詞です(movement, supplimentなど)。

izeが付けばだいたい動詞ですし(memorize, realizeなど)、iousが付けばだいたい形容詞です(precious, consciousなど)。

派生のうち、特に接尾語は、その単語の品詞を決める働きをしています。

こんな感じで、これからも新しい単語は増えていくのでしょうね。

 

次回は、名詞にも男性・女性があるということを話します。

 

(2003年5月3日)

 

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