単語と形・文法をちょっと考える

第3回「I, my, me・・・格って何?」

 

皆さんは中学1年英語の時間で、「I, my, me」「you, your, you」「he, his, him」「she, her, her」「it, its, it

・・・などのようなセットで暗記させられた記憶はありませんか?

そしてこのとき、左から「主格、所有格、目的格」という文法用語に触れた記憶はありますでしょうか?

今でこそ、これから「格って何?」という話をしようとしている私でも、

習った当初は「主格って何よ?」みたいなことを考えつつも、「まぁ覚えりゃいいや」と流していた記憶があります。

 

・・・というわけで、今回の話題は「格って何?」という話ですが、

ここではわかりやすく、「文の中での単語の働きを決めるもの」としておくことにします。

今言った「働き」が、英語では次の3つに分けられてきたわけです。

@主語の働き:「〜が」「〜は」など、動作をする人・物。

A所有者の働き:「〜の」など、何かを持つ(所有する)人・物。

B目的語の働き:「〜を」「〜に」など、動作を受ける人・物。

(もちろん、上のような説明だと専門的には不十分ですが、ここでは単純に考えてこう言っておきます)

@の働きを表す格を「主格」、Aの働きを表す格を「所有格」、Bの働きを表す格を「目的格」と呼びます。

これらの働きと、さっき挙げたセットの単語とを対応させると、次のようになります。おさらいしておきましょう。

@主格:I, you, he, she, it

A所有格:my, your, his, her, its

B目的格:me, you, him, her, it

 

ここまでで、とりあえず「格って何?」の質問に答えられたかと思います。

話を変えましょう。

このような格は、英語のいわゆる代名詞というものに備わっている、と教わったかと思いますが、

では、代名詞以外の名詞(例えばpenなどの普通名詞や、Johnなどの固有名詞)には、格はないのだろうか、と思いませんか。

Johnの主格は?所有格は?目的格は?・・・こんなことを考える奇特な人もそういないかと思いますが。

 

で、答えはといいますと、「ある」なのです。いや、正確には「ある、と考えるほうが良さそう」です(だまされたとか思わないでくださいね)

その根拠は、Johnの所有格は、John'sという形が確かに存在するからです。

それと、大昔の英語(1000年ほど前にさかのぼる)は、どの名詞にも格があった、という歴史上の根拠もあります。

今でこそ、「私はペンを持っている」も、「そのペンは役に立たない」も、

英語ではそれぞれI have a pen. 、 The pen is useless. と言い、主格でも目的格でもpenという共通の形で出ていますが、

昔はそれぞれ形が違っていたのです。

話はちょっとそれますが、この点でドイツ語はかなり面倒です。

ドイツ語は、冠詞が格によって形がいちいち変わるからです。

例えばドイツ語で「犬が」という主格だと、der Hundとなりますが、

「犬の」という所有格だとdes Hundesと、冠詞がderからdesに変わります(あ、名詞の形も変わってる・・・)。

私がドイツ語を勉強して、早々と挫折しそうになったのも、ここが原因です。

 

そういうわけで、「どの名詞も、格を持っている」ととりあえず考えておいて良さそうですが、

じゃあpenが主格だとか目的格だとか、あるいはJohnが主格だとか目的格だとか、どうやって決めるんだ、と思う方もいらっしゃるかと思います。

これの答えも一つで、「格は語順で決まる」です。

思い出してください。英語の語順は、だいたいが主語+動詞で始まります。

ということは、動詞の前にpenが来ていたら、それは主格で、逆に動詞の後ろだったらそれは目的格、と考えればよいのです。

(上にpenを使った例文がありますので、よーく見てくださいませ)

1000年ほど前の英語は、実は今の英語よりは、語順の自由度が高かったのです。

つまり「主語+動詞+目的語」でも「目的語+主語+動詞」でもよかったわけです。

これの理由も、格が関わります。昔はどの名詞にも格によって形が変わったわけですから、

単語の形さえ見れば、主格か所有格か目的格か、はっきりわかったわけです。

今の英語は、penにせよJohnにせよ、主格と目的格の形はいっしょなわけで、そういう場合は語順を見るしかないわけです。

 

さて、今回は「格って何?」の話をして、そこから語順の話へと発展しました。

まずは「文法で格というのは重要なんだ」というのがおわかりいただけたかと思います。

次回は、これまた中学校か高校の英語で出てきた、「品詞」という文法用語についての話をします。

 

(2003年5月17日)

 

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