単語と音の話

第1回「微妙に違う外来語の音」

 

今回からは、単語と音の関係について4回連載します。

初回は、前回までとつなげたいので外来語の話をします(今回は英語の外来語に限定)。

今日の大きなポイントは一つだけ。

もともとの英語と、日本語で外来語になったときの音は、実は微妙に違う場合がある、ということです。

具体的な現象は、今回は大きく2つに分けてお話します。

今回は発音の仕方について書くところがありますが、イメージしやすいように書きます。気楽に読んでください。

(「f」を発音するときは上の歯を下のくちびるにつける、みたいに)

 

一つ目の話題は、もともとの英語と外来語の発音が微妙に違うことがある、ということです。

例を一つずつ比べましょう。(それぞれ、下線部を比べます。以下も同じ)

まずは英語のfとvの発音の例です。

(1)coffee(カフィ、のように聞こえる)とコーヒー

ffeeの方の発音は、上の歯を下のくちびるにつけて息を出すように発音します。ファックスのファの部分と同じです。

ヒーを実際に発音して、ffeeと比べると、この二つは微妙に違うことがわかると思います。

(2)videoヴィディオゥ、のように聞こえる)とデオ

viの方の発音も、上の歯を下のくちびるにつけてにごったウを意識して発音します。

(1)のcoffeeと発音の仕方は似てますね。ffeeのほうはにごりませんが。

やはりビを実際に発音してみると、違いがわかるはずです。

他にこのような違いがあるものは、violin(ヴァイオリン)とバイオリンがあります。

英語のfとvの発音は、もともと日本語にはない音の種類なので、特にvは日本人には発音しにくいと思います。

(fの発音は、ファックス、フェリーなどでだいぶなじんできましたが)

だから英語のvの発音は、日本語では、似たような発音の「ばびぶべぼ」で言い換えられる傾向にあります。

次に英語の二重母音の問題です。二重母音とは、文字通り母音(あ、い、う、え、おの発音のこと)が二つくっついたものです。

アィとかエィ、アゥ、オゥとかがそうで、このとき二つ目の母音がちょっと聞こえづらいのが特徴です。

(だから二つ目のカタカナを小さくしてます。日本語でも母音を二つ以上重ねますが、片方が聞こえにくいということはありません)

さっきのvideoとビデがそうです。

他にboatボゥト、に近い)とボート、gameゲィム)とゲーム、goalゴゥル)とゴール、shakeシェィク)とシェークがそうです。

こうしてみると、エィはエー、オゥはオーのように、日本語の外来語では、音を伸ばしている傾向がわかります。

しかし逆、つまり外来語のオーやエーをそれぞれオゥやエィに言い直せば英語っぽくなる、というのはいつも正しいわけではありません。

例えば、教室にあるチョークは英語(chalk)でもオーと伸ばすし、豚肉ポークも英語(pork)も同じです。

一つ目の話題のポイントは、発音が微妙に変わっていることです。似ていなければなりません。

上のboatを、勝手にボアトなんて発音してはいけません。全然ちがうじゃん、というわけです。

 

余談ですが、お菓子のcandyは英語っぽく発音するならキャンディです。

これを私の高校の英語の先生が、英文を読んでいるときにキャンデーと、思いっきり日本語発音してたのでガッカリしたことがあります。

(この人、他にpartyをパーテーと読んでました)

 

さて、二つ目の話題ですが、英語のLとRの発音についてです(Lを小文字で書くと数字の1に似てるので、わざと大文字で書きました)。

LとRの発音の区別は、日本人が特に苦手な英語の発音の一つです。

Lは日本語のらりるれろとほぼ同じように発音すればいいのですが、Rの発音は、いわゆる巻き舌です(練習あるのみ)。

だから日本人でLとRの区別が苦手な人は、らりるれろと同じ発音をするのが手っ取り早いです。

例えばLIGHTとRIGHTは、両方ライトと読み、FLYとFRYは両方フライと読めばとりあえずは結構です。

しかし、ここから先が重要です(特に英会話の場面で)。

実は、LとRの発音を使い分けないと、意味が全然違ってしまうことがあるのです。

その例が、上のLIGHTとRIGHT、FLYとFRYです。

LIGHTは「軽い、正しい、(光る)ライト」でRIGHTは「右」です。

道案内で「右に曲がってください(Turn to the right)」というときにLIGHTをいうと意味がわからなくなります。

次。FLYは「(虫の)ハエ、飛ぶ」でFRYは「(食べる)フライ」です。

レストランで間違ってもFLYと言わないように注意しましょう。

LとRは似た発音なのでやっかいですが、他に、see(見る)とshe(彼女)も似てます。

seeは「スィー」でsheは「シー」と読めば英語っぽいです。

もう一つ、座るsitは「スィット」と読むのが英語流。

しかしこれを「シット」と発音してしまえば「畜生!」とか「糞」(お食事中の方、すみません)という意味になってしまいます。

まぁ、LとRについては、英会話で間違ったとしても、大体の場合は場面の状況からちゃんと相手も聞き分けてくれます。

右をLIGHTと言ってしまっても、「あ、RIGHTといいたいんだな」、とわかってもらえますのでご安心を。

ここまで脅しておいてなんですが。

 

今日のポイント。英語と外来語の発音、微妙に違うときがありますので注意してくださいね・・・これだけです。

例が多くなってダラダラ書いちゃった気がしますが。

次回は、アクセントの話をします。

一口にアクセントと言っても、日本語と英語とでは微妙に違うんだよ、ってことを話す予定です。

 

(2003年4月5日)

 

エッセーのインデックスに戻る