単語と音をちょっと考える

第3回「英語の発音はなんで複雑?」

 

さて、単語と音の第3回は、英語の発音に絞って話を進めます。

英語の試験を受けてれば、だいたい必ずといって良いほど発音問題が出ます。

例えばant, make, plantの中で、aの発音が一つだけ違うのがありますが、何でしょう?という問題ですね。

答えはmakeです。これだけaを「エイ」と発音し、後のantplantは「ア」と発音します。

こんな感じで、英語のaというアルファベットに絞っても、実にいろんな発音の仕方があります。

 

このように、英語の母音を表すアルファベットには、色々な発音の仕方があります。

(母音とは、a, e, i, o, uの音のこと。ちなみに上の「エイ」は母音を2つ組み合わせたので、二重母音といいます)

(母音以外の音、例えばカ行、サ行の音(英語でいうとk, s, t, dなど、a, e, i, o, u以外の音)などは子音といいます)

次はeに注目してみましょう。

さて問題。次の下線部を引いたeの発音で、一つだけ仲間はずれがありますがどれでしょう?

e-mail, elephant, end, send

・・・答えはe-mailです。これだけ「イー」と発音しますが、後は「エ」と発音します。

もう一つだけ、iに注目しましょう。同じような問題を出します。

ink, like, think, drink

・・・答えはlikeです。これだけ「アイ」と発音しますが、後は「イ」と発音します。

 

さて、もう問題はいらんと言われそうですので、今日の問題は

じゃあなぜこんなに英語の発音は複雑なの?というわけです。

いくつか原因が考えられますが、おそらく一番大きな原因としては、15〜16世紀あたりに起こったとされる、大母音推移というのがあります。

「〜とされる」と書いたくらいですから、確証はありません。また、なんでこんなことが起こったかは誰にもわかりません。

この大母音推移とは、ある一定の母音の変化を指しますが、大体こんな感じです。

ア(a)→エ(e)→イ(i)→アィ(ai)、エィ(ei)

オ(o)→ウ(u)→アゥ(au)、オゥ(ou)

(注:横のアルファベットは一応発音記号ですが、専門的にはこの書き方は正確ではありません。ただ、ここではわかりやすいようにこう書きます)

もちろん全ての音がこのように変わったわけではありませんが、大体こんな感じで変化したらしいです。

例えばこんな感じです。

mine(私のもの)は、今は「マイン」と発音しますが、14世紀くらいまでは「ミーン」と発音してました。

iの発音に注目してください。14世紀は「イー」と発音してたのが、変化して「アィ」となっています。

もう一つ、meet(会う)は、14世紀くらいまでは「メート」でしたが、今は「ミート」です。

これもeeに注目すると「エー」→「イー」の変化に気づくと思います。

ここで繰り返しますが、全部の単語がこんな規則的な変化を受けたわけではありません。

この大母音推移が起こった後に入った単語は、当然こんな変化は受けません。

もっとも、この大母音推移というヤツで説明できるのはまだ良い方です。

例えばbusy(忙しい)のuは「イ」と発音しますし、buy(買う)はuyというつづりから「ウィ」と読みたくなりますが、実際は「アィ」です。

 

ところで、knowはなぜ発音しないの?と考えたことはありませんか?

このkは実は14世紀頃までは発音してたんです。knowなら「クノゥ」という感じでした。

それから、英単語で、単語の最後のeは発音されることはほとんどありません。

例えばmakeの最後のeはなぜ「エ」と発音しないのでしょうか。

理由はわかりませんが、これらは15世紀くらいまでは発音されてたようです。makeなら「マーケ」という感じでした。

 

それから、昔のイギリス人はラテン語やギリシャ語にあこがれをもっていることがありましたが、これがつづりに出る例もあります。

「島」のislandは、なんでsを発音しないのでしょうか。

これはもともとinsulaというラテン語で、このsは発音されていました。今はなぜか発音されていませんが。

 

こんな感じで、英語の発音が複雑に見えるのは、色々な原因があります(ここに書いた以外にもありますが省略)。

結局は一つ一つ発音を覚えていった方が一番楽なのかもしれません。

ただ、たくさん覚えていくにつれて、ある程度パターンも見えてくることがあります。

例えば、○a○eの発音で、aは「エィ」と発音し、eはほとんど発音しないこと。(○には何か子音を入れてみてください)

具体例は、make, lake, tape, takeなどなど。

airというつづりはだいたい全部「エァ」と発音すること。例えばhair, pair, chairなどなど。

こうやってパターンに気づくのは、ひたすら練習しかないようです。

 

さて、今回は英語の発音がいかに複雑に見えるか、その原因をいくつか書いて見ましたが、

フランス語とドイツ語は、発音に関しては実に規則的(例外が少ない)なのです。

次回はその紹介をします。

 

(2003年4月19日)

 

エッセーのインデックスに戻る