むかしかどうかわからないとき、にほんっぽいきもするくににひとりのおうさまがいました。おうさまはとてもかしこく、つよく、おこるとこうせんをぶっぱなすこわいところもありましたがきほんてきにはやさしいおうさまでした。
りそうともいえるおうさまですが、ただひとつけってんがありました。それが、わらわないこと。あまりにきまじめなため、わらうことをわすれてしまったのです。
「笑わないなら笑わしてしまおうセイバーをって感じね」
ついんてーるのだいじんは、ぶっちょうづらのおうさまをしんぱいしてくにじゅうのえいゆうをあつめてちえをかりることにしました。
いちばんては、とりあえずてじかでということできゅうていまじゅつしです。
おしろでがくもんをおしえているせんせいとらぶらぶとうわさされるまじゅつしは、るんるんきぶんでおうさまのまえへでました。
「せっかく可愛いのにいつも鎧姿にロールパンみたいな髪型なのが駄目なのよ。ふふ、私特製のこのドレスを着れば気分も晴れやかになって笑えるに違いないわ」
とりだしたのはまっしろなどれす。ふりふりがみょうにおおいのがきになりますが、あんがいまっとうなていあんです。
「・・・いいわね、それ」
というか、だいじんもおうさまをおきがえさせたいなぁというよくぼうにとらわれたというべきでしょうか。
「では王様。とりあえず裏で着替えてみましょう」
「・・・ええ。わかりました、リン」
おうさまとだいじんがうらにひっこみごそごそとおとがします。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ひろまにあつまったへいしたちは、きぬずれのおとにからだのいちぶをたいへんなじょうたいにさせながらまちます。
あ、おしろづきのそうりょが喝!とかさけんでみんなをしょうきにもどしだしました。
「お待たせしました」
「セイバーにすら負けてる・・・」
しばしして、どれすにきがえたおうさまとむねをおさえてしょぼくれているだいじんがもどってきました。
「おおおおおおおおおおおおおっ! せぇいばぁたーん!」
「俺、俺! もう死んでもいい! セイバーたんさいこーっ!」
「大臣も萌えるな」
「せ、せ、セイバーたん・・・うっ・・・」
とたんまきおこるだいかんせい。おうさまもえのきしたちはこのしゅんかん、ぜったいのちゅうせいをこころにきめました。
このひとたちがのちのえんたくのきしなのですが、それはまたべつのおはなし。
「で、どう? 笑えそう?」
「・・・彼らを見ていると引きつった笑みは浮かびそうですが・・・『約束された勝利の剣』ぁああっ!」
だいじんのといにおうさまはこめかみをひきつらせ、きしたちにじぶんのほうぐをたたきこみました。
「うぉー! あいかわらず熱ぃいいいいっ!」
「あ、でもセイバーたんにやられるならこれはこれで」
ふつうのしろならかるくふきとぶこうねつはですが、しろもきしもげんそうをそのみにまとうそんざいなのでぽーんとふきとぶていどですんでいます。
「とりあえず失敗ね・・・キャスター、ごくろうさま」
「セイバーにドレスを着させただけでとりあえず満足したからいいわ・・・ふふふふ、次は私が式で着る番・・・」
ぽっとほおをそめてまじゅつしはさっていきました。かのじょのこいびとはほんらいわふうのひとなので、きものでけっこんしきなようなきもしますがどうでもいいです。
「じゃあ、次! あ、セイバー。座って座って」
「こ、これを着替えてはいけないのでしょうか?」
「駄目に決ってるでしょ」
なれないふくそうにとまどいながらおうさまがぎょくざにすわると、つぎのえいゆうがやってきました。
「■■■■■■■■■■ッ!」
だめそうです。もう、まるっきりみこみなしです。
「■■■■■■■■■■ッ!」
「・・・ええと」
ねがまじめなおうさまはひろまのちゅうしんで■■■とさけぶきょじんのことばにいっしょうけんめいみみをかたむけます。
「■■■■■■■■■■ッ!」
「・・・腹の底から叫べ、と?」
「いや、どうかしらそれ」
だいじんのつっこみにめげず、とりあえずおうさまはそのあいであをじっこうしてみることにしました。
「■■■■■■■■■■ッ!」
「おーーーーーーーーーっ!」
「■■■■■■■■■■ッ!」
「おーーーーーーーーーっ!」
「■■■■■■■■■■ッ!」
「おーーーーーーーーーっ!」
のぶといおたけびとしょうじょのきあいがひろまにひびきわたります。
「・・・どう? セイバー」
ころあいをみてだいじんがはなしかけると、おうさまはすっきりしたかおでびしっとおやゆびをたてます。
「とりあえず、ストレスは解消できました」
「・・・ま、一歩前進かしら」
うーむとだいじんがなやんでいると、きょじんはくるりときびすをかえし、ひろまからでていってしまいました。
「そろそろ幼稚園が終わる時間ですので、イリヤスフィール様を迎えに行ったのでしょう」
「きょうは土曜だから幼稚園半ドンだもんね」
ふしんげにそのせをみおくるだいじんに、おしろのめいどがおしえてくれました。ちなみに、だいじんはこのふたりがきらいです。むねがでかいから。
「セラはそうでもないよね?」
「殴りますよ」
そんなことをしているうちに、さんにんめのえいゆうがやってきました。
「私にできるのは剣のみなのだが・・・同じく剣マニアの貴女には楽しんで頂けるかもしれんな」
おしろづめのけんじゅつしなんやくはぽにーてーるをゆらしてすずしげにわらいます。
「私は別にマニアというわけでも」
こまりがおのおうさまをよそにけんじゅつしなんやくはふところからうすいぴんくのかみをいちまいとりだしました。
「では・・・桜吹雪でも見せようか」
つぶやきとともにそのかみをなげあげ、けんじゅつしなんやくはすらりとかたなをぬきます。
「秘剣・・・燕返し」
こえとともにぱちんとかたながさやにもどります。なにもせずかたなをおさめるすがたに、へいしもきしもきょとんとしてくびをかしげ。
はらり、と。
ちゅうをまっていたかみがこなごなにきりさかれ、かみふぶきとなってあたりをまいました。
うすももいろのせんぷうは、たしかにさくらのまうさまににています。
「綺麗・・・どう、セイバー?」
げんそうてきなこうけいにだいじんはひょうじょうをゆるめ、きたいをこめておうさまにといかけます。が、
「63閃・・・?」
「おしいな、騎士王。もう2往復追加で69閃だ」
「く・・・未熟・・・」
おうさまは、さきほどのうごきがみきれなかったことでたいそうおちこんでいました。
「逆にへこましてどうすんのよ! ああもう! そいつを門に連れてきなさい! しばらくそいつは門番に降格!」
またかよとしょっくをうけるけんじゅつしなんやくがれんこうされるのをみとどけてだいじんはゆびをぱちんとならします。
「次!」
よばれてやってきたのはくろいれざーのぼでぃこんすーつにみをつつんだじょせいです。
「一応、サクラの命なので来ましたが・・・」
かおのはんぶんをかめんでかくされてなおこまってるのがまるわかりのかのじょは、だいじんのいもうとにちゅうせいをちかっているおしろのしいくがかりでした。
なんだかえいゆうえいゆういいながらおしろのしたっぱばかりよばれてるきがしますが、きにしないでください。しようです。
「えっと・・・ライダー、何か芸とか出来たっけ」
「・・・夢の中では誰もが主役」
「そんなディ○ニーなフレーズはいいから」
しいくがかりはそのなのとおりどうぶつをそだてるのがとくいですが、にちじょうせいかつではわりとじみなひとです。いんむをみせられてもしょうがないので、そうそうにたいじょうさせられました。
「はぁ・・・次は誰?」
「・・・私だ」
こたえたのはおしろづきのあんさつしゃです。くにのうんえいはきれいごとではありませんので、こんなひともひつようです。
「・・・なんか笑いとはほど遠いように見えるけど」
あんさつしゃはくろいぬのをからだにまきつけ、ゆいいつみえているかおもどくろのかめんでおおわれています。
たしかに、こどもがなきそうなすがたらんきんぐいちいかくじつなすがたでした。
「心配無い。魔術師殿から授かった秘策がある」
あんさつしゃはそういってみぎうでをのばしました。ふだんはふたつおりにしてかくしてますが、かれのみぎうではめーとるたんいのながさです。
ぐたいてきにいうと、けんのれんじが1〜2、やりのれんじが2〜4でかれのうでは3〜9。やりの2ばいのちょーながうででした。
「いくぞ」
あんさつしゃはゆびをそろえたかたちでてのひらをくいっとまげました。てくびとのかくどが90どになったところでうでをうえへとのばし。
「キリン」
ぼそっとそうつげます。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ひろまに、なんともいえないちんもくがあふれます。へいしもきしも、だいじんもおうさまも、いたいたしいめであんさつしゃをみつめていました。
さむい。
みなのきもちはいっしょ。わんふぉあおーる。おーるふぉあわんです。
「・・・きりん」
あんさつしゃは、もういちどくりかえし、ゆーらーゆーらとうでをゆらします。おやゆびをぱかぱかとほかのゆびからはなしたりとじたりしてるのは、くちをあらわしているのでしょうか。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
そして、またちんもく。
「・・・以上だ」
あんさつしゃはそういってうでをおろしました。ぬののおくにてをひっこめて、うつむいています。
「あ、あの・・・た、たのしかったです」
「な、慰めは無用・・・く・・・ぅううううううううううっ!」
おうさまはなんとかそれだけことばをしぼりだしましたが、ざんねんながらぎゃくこうかだったようです。あんさつしゃはめになみだをためてどこかへはしりさってしまいました。
「あ・・・」
「仕方ないわよセイバー。後で休暇とボーナスでもあげましょ」
だいじんはしみじみつぶやき、きをとりなおします。
「次は誰?」
「私だ、凛」
「え? あ、そっか。あんたが居たわね」
あらわれたのはあかいころもをまとったおとこでした。だいじんちょくぞくのぶかであるゆみへいです。
「あんた、笑えるようなこと出来たっけ? あ、存在自体はわりと笑えるんだけど」
「・・・凛、君は時々非常に失礼だ」
ゆみへいはぶぜんとしてつぶやきます。かんけいありませんが、ゆみへいというじはなみへいとにています。
「セイバー、これを見ろ」
ゆみへいはそういっててをのばしました。いつのまにか、そこにはけんがにぎられています。きんとあおのそうしょくをほどこされたそれは、かりばーんというおうさまのけんです。
「失われたそれをそこまで再現するとは・・・」
「凄いけど、笑いとは関係無いわよね」
おうさまとだいじんのりあくしょんにはかまわず、あーちゃーはぶんぶんとけんをゆらしだしました。
てはまっすぐのばしたまま、かるくにぎったけんだけゆらすようにしてじょうげにふりふりふりふり。
すると。
「おお、剣が曲がった!」
へいしのこえにゆみへいはにやりとわらいます。たしかに、かれがにぎったけんは、ごむでできているかのように、とうしんがぐんにゃりまがってみえます。みんなも、てもとのぺんでやってみよう!
「ラバーペンシル現象というらしいぞ」
「帰れ!」
だいじんはうでをかかげてさけびました。そこにきざまれたもんしょうがひかるとともに、ゆみへいはけんをうにょんうにょんまげたまましょうめつします。
つっこみにれいじゅをつかうのもなんですが、べつだんせんそうちゅうでもないのできにしないきにしない。
「ああもう、宴会芸みたいなの禁止! 一応聞いておくけどセイバー、さっきので笑える?」
「・・・・・・」
はなしかけられましたが、おうさまはじぶんのけんをうにょんうにょんまげるのにむちゅうで、きいていません。
たのしそうですが、わらうまではとどかないようです。ざんねん。
「・・・次!」
たけだけしくさけぶだいじんにおそれをなし、へいしはいそいでつぎのえいゆうをつれてきました。
「よ、嬢ちゃん。ひさしぶりだな」
やってきたのはたびのやりつかいでした。だいじんのようなじょせいはわりとこのみらしく、いろいろとたすけてくれるないすがいなのです。
「久しぶりね、ランサー。女好きな貴方の実力に期待してるんだけどどうかしら?」
「女好きって・・・まあ否定はしないけどな」
やりつかいはかたをすくめます。
「でもな、むりに笑かすひつようはないんじゃねぇか? 好きな奴らとつるんで、うまいもんでも食って好みの女とやってからぐっすりねりゃあ自然に笑えて来るもんだぜ?」
かいらくしゅぎばんざいなせりふにだいじんはひたいをおさえます。
「それはそうかもしれないけど・・・それじゃストーリーがすすまないのよ」
「そっか。ま、山で採ってきた笑いキノコくらいならやるぞ?」
「いらない。おつかれさま」
しっしっとだいじんがてをふるとやりつかいはじゃあなとわらってかえっていきました。
「っていうかセイバー、いい加減それやめなさいって」
「む、失礼しましたリン」
つっこまれておうさまはようやくけんをうにょうにょさせるのをやめました。
みょうなごびがついているようにもきこえるしゃざいにうなづき、りんはへいしのほうへめをむけます。
「次は誰?」
「ええと、少し特殊な方が・・・」
とまどいがちのへいしにあんないされてやってきたのは、となりのくにのおうさまです。
「ふん、ひさしいなセイバー」
「ギルガメッシュ・・・?」
「なんだ、金ピカか」
だいじんはためいきをつきました。おかねはすきですが、めのまえのきんぴかはじんかくをひていしたいくらいきらいなのです。
「・・・ギルガメッシュ、貴方が私を笑わすと? 自分で笑うのではなく?」
おうさまのしてきにきんぴかはわーっはっは!とたかわらいをあげました。たしかにこのひと、よくわらいます。
「世界の全ては我のものだ。容易い!」
むやみにじしんばかりあるきんぴかにふしんかんをつのらせながら、だいじんはかたをすくめます。
「じゃあ、やってみせて」
「うむ。セイバー」
はなしかけられ、めんどうくさそうにおうさまはかおをあげます。いやがられているのにきづかず、きんぴかはむんっとむねをはりました。
「我のものになれば永劫笑うことを許そう」
それはただのあほぷろぽーずです。だいじんはきんぴかにかけより、そくざにぼでぃーぶろーをたたきこみました。そのまま、あごがあがったところへのびあがってよこなぐりのぱんちをあごにぶちかまします。
「ぼぶっぱああ!」
なすすべもなくこんとうしたきんぴかをみおろし、だいじんはぶかたちにめいじます。
「・・・そいつ、一番高い搭から吊るしといて。財産は全部没収して国庫に放り込んどくこと。内容はわたしがチェックするから手を触れないように」
だいじん、しふくをこやすきまんまんです。
「次から次へと役に立たない・・・後、誰か居たっけ?」
「妹様が城の地下で飼っているという黒いドロドロはいかがでしょうか?」
へいしのひとりがていあんしますが、だいじんはそくざにきゃっかです。
「はじめてのどろあそびー! くらいしかやりようがないでしょ!?」
「リン、貴女はいささかマニアックだ」
おうさまのつっこみはつごうよくするーしてだいじんはうでぐみをします。
「そうなると・・・もうネタぎれね・・・」
「私は結局笑えずじまいですか」
おうさまはしょぼんとかたをおとします。だいじんもへいしたちもきしたちもかたることばをもちません。
すべてがしっぱいにおわり、しずかになったひろまに。
「ん? なにやってんだみんな」
ひょっこりかおをだしたのは、おしろづきのりょうりにんでした。
「・・・セイバーを笑わそうと思って英雄連中を集めたんだけど、結局いいアイデアが出なかったのよ」
だいじんがなげやりなちょうしでそういうと、りょうりにんはふしぎそうにくびをかしげました。
「遠坂、誰かを笑わすなら英雄呼ぶより道化師とかそういうのを呼んだほうがいいんじゃないか?」
「あ」
だいじんはくちにてをあてておどろき、ばつがわるそうにごまかしわらいをうかべます。
とびきりゆうしゅうなのですが、かんじんなときにうっかりさんなのがかのじょのいいところです。
「ほら、変な奴っていったらまずあいつらが思いつくもんで、つい」
「やれやれ・・・セイバー、ご飯の用意できたよ。一休みして食べないか?」
「! はい!」
おうさまはそれをきくがはやいか、だっしゅでひろまをとびだしました。
まんめんのえみをうかべて。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
これはつまり、ただそれだけのおはなし。
あ、ごめん。いしなげないで。
fin