神楽坂無双流剣術

 

     1・その歴史

       そもそも神楽坂無双流とは神楽舞剣(かぐらまいのつ
       るぎ)と呼ばれる神楽坂家に伝わる舞闘法と無双を名
       乗る剣客の剣技が融合して生まれたものである。

       古来より霊鎮めをその生業としていた神楽坂家の神楽
       舞は霊を慰撫するための剣の舞であると同時に神より
       伝えられたと称される戦闘術でもあった。
       戦国時代の中期、戦場を渡り歩く一人の剣客が人里離
       れた神楽坂の屋敷へ迷い込んだところから無双流の歴
       史は始まる。
       排他的な神楽坂の警護兵に攻撃され、修羅のごとき剣
       技でそれを返り討ちにしたその剣客の前に現れたのは
       長く美しい髪と涼しげな眼差しをした一人の少女であっ
       た。少女は襲いかかる剣客を懐の扇子一本だけであし
       らい、彼を殺すことなく捕らえることに成功する。その少
       女こそが当代の神楽舞剣を伝承する当主であった。
       多数の死者を出した神楽坂の警護兵達は即刻首をは
       ねることを主張したが当主の少女は頑としてそれを拒
       んだという。意識を取り戻した剣客に少女は一つの提
       案をした。それは死んだ兵達の代わりに彼女を守れと
       いう頼み。当初こそ馬鹿にするな、殺せと叫んでいた
       剣客だが数日の間頼み込まれる内に少女の美しさと
       純粋さに惹かれるようになり、神楽坂の忠実なる剣と
       なることを決心することになる。
       この流れの裏には、当主の少女もまた剣客の男に一
       目惚れしていたと言う事情があった。数百年後の葵の
       例を見るまでもなく、神楽坂の娘はその手のタイプの
       男に弱いのである。
       流れ着いた事情が事情だったため最初の1年こそ嫌
       がらせや闇討ちなどをうけていた剣客だったがその圧
       倒的な剣技と忠実さ、そして以外と人が良かった事な
       どが混ざり合い、数年の内にすっかり神楽坂にとけ込
       むことができていた。だが時代は戦国。古来より神の眷
       属として不可侵とされていた神楽坂の領地にも武将達
       の手がのび始めていた。
       何度目かの大規模な襲撃。それはかつて無い大規模
       なものだった。護衛兵達は次々に倒れ、ついには背中
       合わせで戦い続けていた当主と剣各の二人だけが包
       囲網の中に残った。活路を求めあたりを見渡している
       剣客に対し、当主は土壇場で告白を敢行。剣客を大い
       に呆れさせるのに成功する。
       剣客はそれに苦笑を一つ返し、少女を背中にかばいな
       がら突撃を開始した。これが神楽坂の歴史にその名を
       残す無双百騎抜きである。その鬼神のような戦いぶり
       によって何とか逃げ延びた二人は諸国を流れながら祝
       言をあげ、互いの技法を一つにまとめ上げた「神楽坂
       無双流」でもって戦国の世を駆け抜けていった。自由と
       放浪を愛した剣客とすっかり旅に魅せられた当主の間
       に生まれた子供達もまた一つどころにとどまらなかった
       ため歴史にその名を残すことこそ無かったが、常に戦
       いの中に身を置いていたにも関わらずその術技と名が
       今の世にまで残っていることこそが無双流の実力を何
       よりも雄弁に証明していると言えるだろう。 

 

      2・その技

       神楽坂無双流剣術は創始者である少女の信念に端を
       発する、他に類を見ない技で構成されている。その信
       念に近づくため無双流の技巧は常に研鑽と改良を繰
       り返され、風間恭一郎の代においてほぼ達成されるに
       至った。

       無双流の技は基本技の武技(ぶぎ)をはじめとして
       奥技(おくわざ)・絶技(ぜつぎ)・神技で構成されて
       いる。

      <奥技>
        奥技六輪とも呼ばれ、それぞれの技から他の技へ
        と自由に派生させることが出来、変幻自在の連続
        技を構成できる。

       風牙・・・特異な足動により生まれる瞬発力を生かし相
             手の意識の死角を突いて駆け抜け胴を放つ。
       岩槌・・・刀の柄による打撃。密着、ゼロ距離での格闘
             戦で多用される。
       雷突・・・剣を逆手に持ち替えての打ち下ろし。これも風
            牙、火車後などの近距離で用いられる。
       火車・・・空手で言う裏拳のように身体を一回転させて
            威力を増した横薙ぎの一撃。
       氷雨・・・風牙とは逆に高速のすり足で間合いを離しな
            がらの切り払い。
       閃光・・・奥技の中では最難関。『完全な脱力』によって
            りきみをなくし本来よりも拳二つ分ほど間合い
            が広くなった片手平突き。

 

      <絶技>
          神楽坂無双流の培った超常の技を各技術ごと
          に突き詰めた技。一撃で相手を倒す事を目的と
          した大技ばかりである。

       天照・・・剄技の極み。身体のひねり、踏み込み、呼吸、
            遠心力、ありとあらゆる力を刀身で相手に打ち
            込む技。最強の『打ち込み』

       月読・・・操剣の極み。最強の『いなし』

       火具槌・・・無双流にしては珍しく名前が三文字。体術
              の極みで素手でも使える『投げ技』。

 

       <神技>
          ありとあらゆる技術を駆使して初めて撃てる神楽
          坂無双流の結論。

        壱の太刀・虚空雷鳴 
           フェイントと高速接近を組み合わせた突撃系の
           剣技。網膜に残像が残るほどの速さだと言われ
           ている。

        弐の太刀・天地無双
           創始者、無双の剣士が編み出したとされる技。豊
           富な経験と戦術センス、見切りの瞳を全て持ち合
           わせて初めて可能になる回避も防御も効かない
           抜刀斬り。

        参の太刀・最終技
           神楽坂無双流の技を全て修めた後に自分なり
           の剣に対する結論として編み出すオリジナル技。
           神楽坂雄大は『天照』をさらに突き詰めた『双龍』、
           風間恭一郎は後に『蒼天』を最終技としている。

           ちなみにネーミングの由来は『あおい』と『あまの』
           でだそうだ。

     <伝承技>・・・神楽舞

           神楽舞剣の奥義だった技であり、これを使えて
           はじめて神楽坂無双流の剣士と認められる。そ
           う言う意味でエレンは無双流の技を使えるが神
           楽坂の剣士とは言えない。極度の神経集中によ
           り一種のトランス状態へと自分を導き身体が覚
           えている『もっとも熟練した技』を一瞬で数発分
           打ち込む技。恭一郎の神楽舞は現在奥技クラ
           スで構成されているが雄大は絶技で神楽舞が
           出来るし初代神楽坂は神技すら神楽舞に組み
           込めたと言われている。

      <闇技>

           神楽坂無双流の信念の為に伝承者が最終技
           とともに編みだし、自ら封印することを求められ
           る『使えば確実に相手が死ぬ技』 

           雄大の場合肋骨の間を刺し抜いて心臓を破壊
           する『御霊屠り』、恭一郎は足動、いなし、投げ、
           関節を全て組み合わせた『闇神楽』を闇技とし
           て編み出している。無論、二人とも実戦でそれを
           使ったことはない。