3-4 HOTSCRAMBLE(1)
『敵襲!』
自室のベッドでシャワー上がりのビールを楽しんでいたランサーは電話から飛び込んできたその声にバッと飛び起きた。
「今どこだ?相手は?」
『柳洞寺の傍!魔力弾をガンガン撃ってくるローブの奴に追われてる!』
「ちっ・・・おい、あんりとまゆも一緒なのか!?」
『居る! 来た・・・っ』
ゴウッ、という音に舌打ち一つ。
「いいか! そいつらに戦わせるな! その二人からはヤバイ臭いがすんだよ! 絶対やらせんじゃねえぞ!」
『わかってる!』
叫ばれた答えに頷き、ランサーは部屋の隅に投げ捨ててあったジーンズを履き、Gジャンを羽織る。
「寺からどっちに逃げてんだ? ・・・よし。人気のない方に誘導すんのは正解だな。このまま電話は繋いで逃げつづけろ。マスター連中にも連絡してすぐ行く!」
そこまで行って部屋のドアをズガンと蹴り開け、廊下へ飛び出す。
「全員出て来いっ! 戦闘だ!」
瞬間。空気が変わった。
穏から緊へ、日常から戦場へ。
英霊達本来の、空気へ。
「ランサー! どういうことです!」
「凛達に何かあったのか?」
居間に続々と集まってくるサーヴァント達を見回してランサーは唇の端を吊り上げる。
「いや、襲われてるのはイスカンダルとチビどもだ。相手はおそらくキャスター。柳洞寺の近くに潜んでいやがったらしい」
「・・・葛木さまが、不審な人物を見たとおっしゃっていました。わたくし、魔力の感知等はできないので確かめることもできませんでしたが・・・」
悔しげな佐々木にセイバーは首を振る。
「今更後悔したところで意味はない。それに、おそらく敵は何らかの魔力殺しを使って気配を消しているのだろう。我々も昨日気づかなかったのだから同罪だ」
ランサーは頷いてそれに同意し、ポケットに入れた鍵をジャラリと弄ぶ。
「少年達と連絡は取れねぇか?」
「無理だな。衛宮士郎は携帯電話を持っていないし凛は所有こそしているが常時不携帯だ。直接会いに行くしか―――」
りりりりりりりり・・・
アーチャーの言葉を遮りベルの音が鳴り響いた。それは、居間にすえつけられた電話の音。
「! ・・・もしもし! 衛宮だ!」
ランサーは素早く受話器を取り、その向こうの声に耳を傾ける。そして、ニヤリと笑顔。
「いいタイミングだ。嬢ちゃん達だぜ!」