3-5  HOTSCRAMBLE(2)

『キャスターが出た! 柳洞寺前の道路を北上中、イスカンダルとチビ共が襲われてるが被害はねぇ!』
 電話の向こうから早口で伝えてくる内容に凛は歯噛みした。
「後手に回ったわね・・・しかも、とうとう戦いを選んだサーヴァントが出てきた・・・」
 目配せすると士郎は大きく頷いて走り出す。桜を呼びに行ったのだ。
「わかった。わたし達もそっちへ行くわ。いざって時に令呪が有ると無いでは大違いだから」
『それは向こうも同じだよな。キャスターのマスターに心当たりは?』
 凛はすっと目を細めた。確証は、ある。
「ええ。ほぼ特定してるわ。唯一キャスターを目撃したっていう人がいる。でも、全く連携できてない現状からして多分まだマスターにはなっていない。今抑えればそれでカタが付くわ」
『よし、対魔力が高い俺とセイバーで先行する。アーチャーをそっちに行かせるから途中で合流してくれ! 万が一だがここの守りはバーサーカーと佐々木。それとギルガメシュでどうだ?』
「ギルガメシュは攻めに回した方がいいとおもうけど他は賛成よ」
『先行できるのが二人までなんだよ! じゃあな!』
 最後にそう言って電話は切れた。苛立ち暴れだそうとする心を捻じ伏せて静かにさせ数分待つと桜を連れた士郎が戻ってくる。
「士郎、桜。キャスターが出たわ。暴れてるらしいの。わたしはこれからアーチャーと合流して取り押さえにいくけど二人はどうする?」
 威圧するような視線に二人は己が力を考える。
 身体的には鍛えられ、基本的な戦闘の素養はあるが魔術において三流以下の士郎。
 魔術においてはそれなりの技能と魔力を持つが戦闘技術を全く持たない桜。
 共に、魔術師やサーヴァントの戦いに耐え得る実力ではない。
 だが。
「行く。足手まといにはならないようにするよ」
「わたしもです。あんりちゃん達を放っておけません!」
 二人は、躊躇無くそう答えた。凛は不敵な笑みと共に頷いてそれに答える
「いいわ。でも約束して。絶対に前へは出ない、無理しない。わかってるみたいだけど二人は戦力としては0に近いんだから。いいわね?」
「ああ」
「わかってます」
 力強い答えに凛は頷き、コートに仕込んだ宝石の位置を確認した。十分とはいえないが、一戦するには問題無い。意思を集中させればこちらに向かうアーチャーの位置も感じ取れる。
「いいわ。じゃあ行きましょう!」