CASE1:天野美樹

 12月9日、土曜日。
「およ?」
 天野美樹はふと足を止めた。
 龍実町のはずれ、龍根川の川縁の芝生に一人寝転がる男を見つけたのだ。
「お〜い恭一郎〜なにやってんの〜?」
 声に気付き上半身を起こした恭一郎の隣にぽんっと座る。
「美樹か・・・おまえこそ何やってんだ?こんなとこで」
「あたし?あたしはただの買い物。駅前のスーパー、安売りなのよ」
 言って片手に提げていた袋を揺すってみせる美樹に恭一郎は軽い笑みをこぼした。
「相変わらず見かけに反して家庭的な奴だな・・・」
「べ、別にいいでしょ!?それよりあんたは何こんなとこで似合わない黄昏状態作ってんのよ?」
 赤くなった美樹から空へと視線を移して恭一郎はポキポキと首を鳴らす。
「ジョギングの途中だったんだけどな。ここで気持ちよさそうに寝てる二人組を発見してちょっと真似してみた」
「ふーん・・・」
 美樹は軽く頷き、芝生にころんと寝転がってみた。
「あ、なんかいい感じ」
 思わず呟く。芝生の柔らかさと暖かさ。吹き抜ける風は冷たいが傾いた午後の日差しは暖かく身体を包む。
「だろ?」
 恭一郎は嬉しそうに笑い再び芝生に倒れ込んだ。
 しばらくの間ぼーっと雲の流れを眺めてから美樹はふと口を開いた。
「ねぇ恭一郎。もうすぐクリスマスだけどちゃんと葵ちゃんを誘った?」
「あ?んなわけねぇだろ」
 ぶっきらぼうな恭一郎の答えに美樹はバッと身を起こし人差し指を突き出す。
「甘いっ!いくら不景気だからってギリギリになってからホテルがとれるなんて思っちゃ駄目よッ!」
「ぶっ!?・・・馬鹿野郎!何を言いだしやがる!」
 美樹は慌てて起きあがった恭一郎にひらひらと手を振って見せた。
「冗談よ。軽いじょ・う・だ・ん!・・・でも、せっかくのクリスマスなのにほっとくわけ?ぷりてぃ葵ちゃんを」
「・・・忙しいんだよ。あいつは。毎年クリスマスには神楽坂主催のでかいパーティがある。俺達に付き合ってる暇はねぇんだよ。ちなみに誕生日もな」
 ぼそっとした呟きに美樹はばつが悪そうに黙り込んだ。
「それよりおまえはどーなんだよ。せっかくの冬休みだしクリスマスは京都に帰って彼氏と過ごしてくるのか?」
「・・・そーしたいけどね・・・お金がないのよ。京都まで往復する・・・」
 恭一郎の言葉に今度は美樹がぼそっと答えを返す。
 気まずく沈黙した二人は何となく視線を遠くに投げた。遙かに広がる山並みにいつの間にか夕日がかかっている。明日も良い天気だろう。
「・・・虚しいわね」
「・・・そだな」
 恭一郎達はだーっと涙を流しながら固く握手を交わした。
 その時。
「相変わらず、馬鹿なようですね・・・」
 心底呆れたような声が頭上から降ってきた。
「え?」
 振り返った美樹の目にこちらを見下ろす少女がうつる。
 しっとりとした、妙に艶のある黒髪を無造作に・・・しかし美しく伸ばした女の子。年の頃は美樹達と同じか少し下か。どちらかといえばたれ目がちな目を精一杯つり上げていかめしい顔をしている。
「なんだ、紀香かよ」
 恭一郎はちらりと少女を見てからつまらなさそうに芝に寝ころぶ。
「・・・ずいぶんな挨拶ですわね恭一郎。裏切り者の分際で」
「裏切ったわけじゃねぇだろ。俺は生まれてから今まで一貫しててめぇらが嫌いだ」
 恭一郎は投げやりな声で答えてから美樹に視線を向けた。事情がわからずに目を白黒させているのに気付き苦笑する。
「美樹、このツンツンしてるお嬢様は四井紀香。世にもくだらねぇ家に拘束されている哀れにして愚かなるお姫様だ」
「四井・・・?」
 呟いた美樹の脳裏で検索エンジンが唸る。
(四井って、たしか恭一郎のお父さんの家・・・よね)
「くだらない・・・ですって!?」
 紀香はぎりっと歯ぎしりする。
「あなたにはそうかもしれませんわね!?名家の血を引く自覚もなく、何の義務も果たそうとせずにのうのうと暮らしているあなたには!」
「俺は風間恭一郎だ。誰の血を引いてようが知ったことかよ。四井の義務なんか果たしたい奴にやらせとけばいい」
 恭一郎の冷たい答えに紀香の顔が怒りに染まった。
「出来るものなら私がやっています!ですが・・・あなたが私よりも早く生まれ、しかも男であることは厳然たる事実なのです!何故・・・何故それなのにあなたは風間なのですか!」
「俺がそう決めたからだ。不肖の妹よ。俺がこうあろうと思ったから、俺は風間恭一郎なんだよ。それに文句があるならいくらでも聞いてやるけどな・・・」
 恭一郎はすっと立ち上がった。並んでみると、紀香の身長は思ったほど高くない。 
「おまえは、おまえが望んで四井紀香なのか?そうでないならば、俺の行動に口を出すな。人形の声にまでいちいち耳を傾ける趣味はねぇんだよ。俺にはな」
 容赦ない恭一郎の言葉に紀香はほんの一瞬だけ表情を崩し踵を返した。
「・・・あなたの馬鹿げた言葉に耳を傾ける趣味が私にはありません。時間の無駄でした」
 そのまま歩み去り、近くに止めてあったいかにもな外車の後部座席に座る。
 あっという間に見えなくなったその車を見送り美樹は去り際の紀香を思いだしていた。
(あの顔は・・・あの表情は・・・思慕・・・?)
「・・・やれやれ。いい気分が台無しだ。帰るとすっか」
 恭一郎はそんな美樹に気付かず肩をすくめる。
「そだね・・・あたしも帰って夕御飯つくんなきゃ」
 呟いて立ち上がる。
「もう少し走ってこうかとも思ったんだが・・・おまえ方向音痴だったよな。送ってこうか?」
 からかうような声に美樹は顔を赤くした。
「さ、さすがにもう迷わないわよ!引っ越してきてから何カ月たってると思ってんのよ!この天野美樹、家へ帰るに人の手は借りぬ!!」
「・・・巨星、墜つか」
 マニアックな二人であった。


 恭一郎と別れ一人家へと帰ってきた美樹は郵便受けの中に一通の手紙を見つけて目を輝かせた。
「やっぱノリからだ!」
 その封筒に彼氏の名前をみつけて満面の笑みを浮かべた美樹はダッシュで家に入り玄関に腰掛けてペリペリと封を開ける。
「ん〜ん〜・・・ん〜」
 鼻歌混じりに読む手紙の中にはクリスマスに一緒にいられないことをしきりに残念がる言葉が連ねてあった。
「・・・・・・」
 美樹は読み終わり、ふと沈んだ目を手の中の紙に向ける。
 その内容は愛に満ちている・・・ように見えた。だが・・・
 だが、あまりにもあからさまに残念がる言葉が美樹を不安にする。いつもなら電話もなかなか通じず手紙の返事もなかなか返ってこないのにこの手紙だけは妙に反応が早かったことも気になる。
「・・・ノリ・・・あたしは・・・」
 何を呟こうとしたのか。
 それは美樹本人にも、わからない。


CASE2 : 神楽坂葵

「うーん、もう12月10日かぁ・・・早いなぁ・・・」
 神楽坂葵は呟きながらカレンダーの『9』にマジックで×を付けた。
「・・・クリスマス」
 ぽつりと呟き『24』の数字を眺める。その下に書き込まれた『大広間にて定例のパーティー』の文字をも。
 トントントン・・・
「はい?」
 規則正しいノックに葵は振り返った。
「葵お嬢様。天野様がお見えです。どちらにお通ししますか?」
「ここでお願いします松坂さん」
 ドアの向こうでお辞儀する気配と共に松坂が去り、しばらくして一変して元気の良いノックが鳴り響いた。
「やっほー。あたしだよん!」
「どうぞ〜開いてるよ〜」
 紅茶をカップに注ぎながら答えるとドアを勢い良く開けて美樹が姿を現した。
「やっほー!今日もいい感じに青い部屋だね!」
「ふふふ・・・いらっしゃい美樹さん」
 部屋の壁沿いにぐるりと配置された水槽の数々に挨拶して回る美樹に葵は微笑みかける。
「はい、美樹さんはミルクティーだよね」
「お、さんきゅ。砂糖も入れてね」
 美樹は小テーブルにつきふと真顔になって正面でニコニコしている葵をじっとながめた。
「・・・?どうしたの美樹さん」
「うーん・・・葵ちゃん。クリスマスにさ、あたし達と遊ばない?」
 不意の言葉に葵はキョトンとした顔を見せた。
「・・・ごめんなさい美樹さん。私は家のパーティーに出なくちゃいけないから・・・」
 困ったような笑顔に美樹は首を振る。
「それは知ってる。恭一郎から聞いたから・・・でもさ、それって葵ちゃんが出たいから出るの?義務だからって安易に従ってない?」
「え・・・」
 表情の抜け落ちた葵に美樹はパタパタと手を振る。
「なんてね。これは恭一郎の受け売り。なんか四井とかいう人にそんな事言ってたよ」
「私は・・・」
 黙り込んだ葵に美樹は暖かい視線を向ける。
「そんな深刻な顔しないでよ。今日は学園祭のときの写真を持ってきただけだからさ」
「・・・うん」 


 数時間後、美樹の帰った部屋に一人座り葵は水槽を眺めていた。
 思えば、恭一郎に出会う前から変わらないものは海へのあこがれだけかもしれない。・・・あえていうならば臆病な心も、か。
「恭ちゃん・・・」
 葵は呟き、震える足で立ち上がった。
 部屋を出て、少し離れた父の書斎へ向かう。
「お父様・・・少々よろしいでしょうか?」
「ん?葵か。入れ」
 軽くノックをして呼ばわるとすぐに返事が返ってきた。
「失礼します」
 背の高い本棚とCDラックに囲まれたテーブルに葵の父である神楽坂雄大は座っている。そこに置かれた端末で何か調べものをしていたらしい。
「どうした?」
 呟きながらマウスをカチカチと動かす雄大の背中を眺めて葵は一瞬以上躊躇した。
「・・・あの、お願いが・・・」
「おう。言ってみろ」
 相変わらず背を向けたままの雄大に葵は二度、三度と口を開けそのまま閉じるのを繰り返した。そして・・・
「いえ、何でもないです。ごめんなさい」
 結局何も言えず踵を返す。
「なぁ葵」
 雄大は軽くため息をつき振り返った。
「・・・何でしょう?」
「ほれ」
 声と共に飛んできた物を何とかキャッチして葵は眼を見開いた。
「これは・・・別荘の鍵?」
「今年のクリスマスパーティーは深夜24時からの仮装舞踏会にした。酒を飲むのを前提にした企画だからお子さまなおまえは邪魔にならねぇように別荘にでも行ってな。友達でも呼んでよ」
 思いがけない言葉に葵は目を白黒させるばかりだ。
「なぁ葵・・・おまえは神楽坂だがそれ以前に一人の高校生だろ?たまにはわがまま言ったっていいんだぜ?今は・・・今くらいは素直にあそんどけよ」
 雄大の笑顔に葵は涙ぐんだ目を軽く拭った。
「ありがとうございます。お父様・・・」
「・・・一応言っとくが、これはおまえの為だからな。間違ってもあの馬鹿にいいおもいをさせようというわけではないぞ。二人ッきりは許さんのでそこんとこ注意」
 照れ隠しにまくしたてて再び端末に向かった雄大に、葵は微笑みと共に頭を下げた。


「と、言うわけでね恭ちゃん。クリスマスのスケジュール、空いてるかなぁ・・・」
「何ィ!?」
 学食で相も変わらずキツネうどんをすする葵の言葉に恭一郎は味噌カツを吹き出しそうになった。
「当然空いてるっしょ?恭一郎」
 エビフライの尻尾を噛み砕く美樹に恭一郎は難しい顔を向ける。
「当然とか言うな。・・・空いてるんだが・・・結局・・・」
「よかったぁ・・・美樹さんも大丈夫?一泊二日だけど」
「え?あたしも?」
 千切りキャベツをまき散らしそうになった美樹の言葉に葵は事も無げに頷く。
「うん、他にもいっぱい呼ぼうと思ってるんだけど」
「そ、そうなんだ。まぁ、あたしも暇だけどね。でも、あたしお金無いよ?」
 葵は心底幸せそうに油揚げを噛み締めて首を傾げる。
「そーだよね・・・交通費がかかるとみんな来てくれないかなぁ。車はあるんだけど運転できる人が居ないし・・・」
「俺、運転できるぞ」
「無免許は禁止」
 美樹は恭一郎の胸元にえぐり込むようなつっこみを放った。
 良いアイデアもなく、三人はそれぞれの昼食を無言で平らげる。ちなみにエレンは親衛隊の誘いを断りきれず別のテーブルだ。
「葵の兄貴に頼めりゃいいんだが・・・今はアメリカだしな・・・」
「え!?葵ちゃんって一人っ子じゃなかったの!?」
 味噌汁片手に叫ぶ美樹に葵は『あれ?』と首を傾げた。
「うん、居るよ・・・言ってなかったかな」
「初耳よ」
「まあなあ、向こうの大学院で経済学かなんかをやってるらしいしな。知らねぇだろ」
 恭一郎は食べ終わったどんぶりに残ったご飯粒を丁寧に集めながら苦笑する。
「ふーん、お兄ちゃんかぁ・・・ん?そういや他にも誰かお兄ちゃんが居る人がいなかったっけ?」
「あ?俺にはいねぇしエレンは妹だけって言ってたし貴も愛里もいねぇ・・・」
 指折り数えて恭一郎は首を傾げる。
「それ、私」
 答えは、テーブルの下から返ってきた。
「私、兄居る」
「あ、みーさん。こんにちは」
 焼きそばパンとコーヒー牛乳の瓶を片手にテーブルの下から這い出てきたみーさんに葵は笑顔で挨拶する。
「・・・葵、その反応は絶対に間違ってるぞ」
 半眼で突っ込む恭一郎をきょとんと見つめる葵の隣に座ってみーさんは焼きそばパンをかじる。
「あ!そーだよ。みーさんのお兄ちゃんって母さんのアシの人だ!」
「うん。御伽凪光久。自称みっちー」
「・・・おまえの家族はみんなそのノリかよ」
 コーヒー牛乳の蓋を専用の針でピンっと外しながら呟くみーさんに恭一郎はため息をついた。
「兄、免許ある。クリスマスも、ここ15年ほど暇。今年も当然暇」
「じゃあ、お願いして貰えるかなみーさん」
 ニコニコと微笑む葵に聞こえないように恭一郎と美樹は顔を寄せた。
「・・・今の台詞を笑顔で受け流せるとは、葵ちゃんもやるわね」
「・・・俺なんて、何だかしらんが涙が・・・」
 こうして、葵にとって初めて神楽坂としてではないクリスマスが始まる。


CASE3 エレン・ミラ・マクライト

 家の扉をカラカラと・・・そう、カラカラと横に開けてエレンは玄関にきっちりと踵を合わせて靴を脱いだ。
「ただいま戻りました」
「お帰りなさい江蓮」
 長い板張りの廊下の奥に声をかけると、母は夕食でも作っているらしく返事だけ返してきた。
 ふすまを静かに開けてエレンは自分の部屋に入った。畳敷8畳のその部屋はあちこちに謎の掛け軸がぶら下がり、何故か『臥薪嘗胆』と書かれた額が飾ってあったりもする。
「ふぅ・・・」
 エレンは軽く息をついて桐箪笥から普段着を出して着替え始めた。
「うむ」
 締め終わった帯を整えて大きく頷く。エレンの普段着は着物だ。気分によって袴になったり浴衣になったりもする。
 流石にそこだけは洋風な洗面所で顔を洗いエレンは居間へとやってきた。襖を開けると大きめのちゃぶ台とその上で湯気を立てる煮物が目に入る。
「あ、お姉さま。お帰りなさいまし」
「ただいま恵瑠奈」
 ちゃぶ台の座布団に行儀良く正座していた妹に微笑んでエレンはその隣に正座した。
 ちなみに妹の本名はエルナ・ミラ・マクライト。母親の方の血が濃く出たためブラウンの髪を後ろで三つ編みにした文化系お嬢様である。今日は浴衣の気分らしい。
「すぐご飯にしますからね」
 こちらも着物姿の母、シエナは味噌汁の入った鍋をちゃぶ台にコトリと置いて微笑む。
「母上、ご飯をよそいますね」
 エルナが側のお櫃からご飯をよそい、三人仲良くちゃぶ台をかこむ。
「では、いただきます」
 両手を合わせてからエレンは茶碗を手にした。ちなみに、マクライト家の食事はよっぽどのことがなければ和食だ。幸いエレンもエルナも和食好きに育ったが洋食党に育っていたら非道い目にあっていたことだろう。
「今日はカレイの煮付けですか」
 魚を丁寧にほぐしながら尋ねるとシエナはええと頷いてみせた。
 カレイを口に運び、味噌汁をすする。だし入り味噌では出ないこの味が、エレンは大好きだった。ついでに言えば、先天的に料理下手な自分の指先がちょっと恨めしくもなったりする。
「お姉さま、こちらのぬか漬けの味を見ては頂けませんか?」
 対照的に料理が得意な妹が差しだしたキュウリの漬け物をぱりぱりと囓る。
「・・・おいしい。これ、恵瑠奈がつけたの?」
「はい」
 姉からの賛辞にエルナはぽっと顔を染める。お姉ちゃんっ子なのだ。
「父君は今日も遅いのですか?」 
 幸せそうにぼーっとしているエルナに構わずエレンはシエナに尋ねる。
「ええ・・・まだしばらくは夕食時には帰れないそうよ」
 少し暗い顔をしたシエナだったが、すぐに微笑みを取り返した。
「でも、もうすぐこっちでの仕事が一区切りつくから・・・そうすればお父さんも少しは楽になるわ」
 何気なく頷いたエレンはそれに続いたエルナの言葉に凍り付いた。
「では、もうすぐ亜米利加に帰るのですか?」
「そうねぇ・・・まだわからないけどその可能性もあるわ」
 わかっていたことではあった。もともと家族ぐるみで引っ越してくるような仕事ではないのだ。本来単身赴任で十分であるにもかかわらず全員で日本に来たのは家族揃って日本マニアだったからであり・・・
「残念です。日本にも友達がたくさん出来たのですが・・・」
「そうね。ご近所の奥様方ともようやく打ち解けたのだけど」
 二人の会話を聞きながら、エレンは力無く夕食をかき込んだ。


「おいエレン、なんか元気ねぇな」
 乱取りを中止して恭一郎は眉をひそめた。
「す、すいません。殿・・・」
 戸惑った顔で頭を下げるエレンに頭をかく。
「別に謝るような事じゃねぇが・・・おまえの持ち味である思いきりのいい踏み込みが今日はボロボロだ。なんか悩みでもあんのか?心の悩みはすぐ剣に出るぞ」
 ぶっきらぼうながらも自分を気遣う恭一郎の優しい眼差しにエレンは熱くなった目頭を押さえた。
 ・・・ちなみに、エレンの目には実際の恭一郎よりもずいぶんと誇張された姿が映っていることを断っておく。
「大丈夫です殿!このエレン・・・このエレンっ!偉大なる主君と出会えたと言うだけで一生誇り高く生きていけます!ご飯三杯はいけそうですっっ!」
「そ、そうか・・・」
 あまりの勢いにちょっと引き気味な恭一郎にエレンは元気良く剣を構え直した。
「行きます!とぉあああああああああああ!」
「甘い」
 べき。


CASE4:風間恭一郎

「む・・・」
 ウォーターベッドに沈み、とろとろとまどろんでいた恭一郎はぱちっと目を開けた。
「ふん!」
 そのまま天に突きつけた手刀を真横に振り下ろす。
 べち。
 軽い音を立てて手刀は今まさに鳴り響こうとしていた目覚まし時計のスイッチを止めた。
「これで通算1253連勝っと」
 満足げに呟いて恭一郎は起きあがった。
 基本的に恭一郎はパジャマを着ない。『男の寝間着はブリーフで十分』が信条である。
「お、さみぃな今日は・・・」
 呟きながらクロゼットへ向かおうとした恭一郎の足がふと止まった。
「そうか・・・今日って24日だな。よっしゃ!」
 日めくりカレンダー(たれOんだ)を勢い良く引きちぎりその勢いのまま恭一郎はカーテンを開けた。
「快晴快晴。いい感じだぜ」
 燦々と降り注ぐ日差しを浴びる。
「・・・きょ、きょういちろう・・・?」
「あん?」
 ふと聞こえた声に恭一郎はあたりを見渡した。
「おう、美樹か。いい天気で良かったな」
 探すまでもなかった。正面、隣の家で雨戸を開けていた美樹が硬直していただけだったのだから。
「・・・・・・」
「どうした?顔色が悪いぞ?」
 美樹は1分にわたる硬直から開放され、こめかみをひくひくと痙攣させた。
「恭一郎・・・?」
「なんだ?」
 何事も無いかのような恭一郎の声に美樹はカッと目を見開く。
「パンツ一丁で・・・しかも朝に女の子の前に出てくるなぁああああああっっっ!!!」
 直後、鉄の左腕から放たれた和英辞典が恭一郎を完膚無きまでにノックアウトした。


「ったく・・・ここ最近喰らった攻撃ん中で一番痛かったぞ」
 ずきずきと痛むあごをさすりながら恭一郎はぼやいた。
「あんたねぇ、あれはセクハラよセクハラ?っつーかむしろ性犯罪?」
 不機嫌そうな美樹の言葉に肩をすくめる。
「目をつぶるとか逸らすとか・・・いろいろあんだろうが。まじまじと見つめやがって」
「だっ、いきなりだったし・・・見たこと無かったし・・・」
 馬鹿なことを言い合いながら二人はいつもの公園まで歩いてきていた。
「あ、おはよ恭ちゃん、美樹さん」
 いつも通り二人を迎えた葵は暖かそうなワンピースの上にケープを羽織っている。ベレー帽が可愛い。
「おう、早ぇえな」
 恭一郎はぶら下げていたバックを振り回すように挨拶を返す。
「おはようございます、殿」
 いつもより更に深々と頭を下げるエレンは着物姿である。
「結局何人来るんだ?」
「えっとね」
 恭一郎の問いに葵はペラペラとメモをめくった。
「この前の劇に協力して貰った人達と神戸さん、あと貴ちゃんだね」
 言っている間にだんだんとメンバーが集まってきた。
「ねぇ葵ちゃん。全部で11人っしょ?車一台なのに乗れるの?」
「だいじょぶ。マイクロバスだから」
 事も無げに言う葵に恭一郎は首を傾げる。
「・・・大型免許が居るんじゃねぇのか?」
「大丈夫ですYO!私は大型免許も特機免許もヘリの運転資格も持っているのDeath」
「うわ!?びっくりした!」
 不意に現れた御伽凪光久・・・みーさんの兄に美樹はびくっと飛び跳ねた。
「・・・おはよう」
 そのは背後から音もなくみーさん自身も現れる。
「おはようみーさん。ごめんね?車の準備に付き合わせちゃって・・・」
「大丈夫。葵、らぶりぃ」
「いや、会話が成り立ってねーだろ。みー」
 恭一郎のつっこみを無視してみーさんは葵をぎゅっと抱き上げる。
「聞いてねぇし」
 呆れたように首を振った恭一郎の鼻にふわっと薔薇の香りが漂う。
「ふっ・・・良い朝だね諸君。エレガントな僕にふさわしく陽光が降り注いでいるよ」
「・・・何でこいつまで呼んでるんだよ葵・・・」
 唸るような呟きに綾小路はふっと微笑んだ。
「それは、僕がエレガントだからさっ!」
 髪をかき上げて断言した綾小路にちょっと引きながら美樹は引きつった笑みを浮かべる。
「ま、まあ野球の時も手伝って貰ったし・・・あはは・・・はぁ」
 恭一郎は騒がしくなってきた公園内を見回し苦笑した。
「ま、退屈だけはしねぇだろ」
 彼にとっては、それが一番大事なのだ。


 バスは気持ち良いエンジン音を立てて突き進む。
「おや、見えてきたようDeathね?」
 光久の声にトランプで『大富豪』をやっていた恭一郎達は窓の外に目を向けた。
「へぇ・・・なんか、いー感じじゃない」
 真っ白な景色の中で静かな佇まいを見せている山小屋風のロッジに美樹は感心の声をあげる。
「しかしこの雪がな・・・水道管とか凍ってんじゃねぇか?」
「いやいやいやホワイトクリスマスって感じで最高っすよ!」
 面倒そうな恭一郎に神戸由綺がものすごい勢いで首を振る。
「食材届いてる聞いた。準備人員振り分けるがいいと思う」
 勢い余って床に倒れた神戸を無造作に座席に放りこんでみーさんは首を傾げる。
「うん、ターキーとかは暖めるだけだけど煮込み物はちょっと手が掛かるね」
「・・・俺と美樹と、あと貴は料理が出来る。他には?」
 恭一郎の問いに神戸が勢い良く手を上げる。
「魚をおろすのと煮込むのは得意っす!」
「肉中心だけどな・・・まあいいか。中村はどうだ?料理」
 いきなり話を振られて中村愛里はびくっと跳び上がった。例の舞台以来自分の気持ちを再認識してしまった為、過敏になっているのだ。
「・・・?どうしたんだ中村?」
「い、いや・・・ゴホン。料理は、その・・・ほとんど出来ない・・・」
 肩を落として答える愛里に恭一郎はふむと頷きバスの中を見渡す。
「まあいいか。取り敢えず美樹中心で料理は何とかしといてもらおう。男集は飾り付けその他の雑用だな。俺と貴は・・・まあその場その場で対応しよう」
 恭一郎の無理矢理なまとめと同時に車はゆっくりと停車した。
「さぁ着きましたYO」


 大きな厨房に立ち、戦士達は苦悩していた。
「・・・えっと、隠し包丁ってなんだろう」
 葵の呟きにエレンが首を傾げる。
「包丁を、隠す・・・奇襲か何かでしょうか?」
「・・・煮物のテクニックの一つだ。小さく切れ目を入れておいて味が染み込みやすくすんだよ」
 少しあきれた恭一郎の解説に料理下手三人娘はポンッと手を打った。
「なるほど!流石は殿!」
「・・・日本の料理界は暗いぞおい」
 恭一郎は呟きながら匠の技でシチュー用の野菜を刻む。
「ねぇ美樹さん。とろ火ってどれくらい?」
「どれくらいって言われても・・・」
 結局自分で火加減を整えながら美樹はうーむと唸った。
「結構大変だわこりゃ」
「フォンデュ用の下ごしらえは大体終わったよ。恭」
「よし、後はクラッカーに乗せるもんを地下から探してきてくれ。・・・中村もそっち頼む。適当でいいから」
 指示を出しながらも手を止めない恭一郎に美樹はコキンと首を傾げた。
「しっかしあんた手際良いわね。料理なんかとは縁がなさそうなのに・・・」
「・・・おまえ、俺の母さんは見たことあんだろ?料理するような奴か?餓死をまぬがれるためには自分で何とかするしかなかったんだよ」
 苦笑する恭一郎をよそにみーさんは葵の肩をちょんちょんとつつく。
「葵。ツリー出来た。テーブルクロスどこか?」
「あ、二階の奥の部屋だよ。えっと・・・12号室の向こう側に備品室があって、入って左側の棚の上から2段目だね」
「・・・その記憶力が何故こう料理にはいかされねぇんだか」


 燭台の蝋燭に火を付けて恭一郎は満足げに振り返った。
「よし、じゃあ乾杯・・・だ・・・」
 言葉が途中で途切れる。
 既に、みんな食っていた。立食なので、こっちを見ている奴すら居ない。
「この七面鳥めちゃうまっすよ先輩!」
「ふむ、カモミールが実にエレガントなアクセントをかもしだしているよ」
 恭一郎は凶暴な笑みを浮かべて木刀を探した。残念ながら客室に置きっぱなしなのだが。
「あはは・・・一応止めたんだけど・・・」
 苦笑する葵に咳払いをし恭一郎は側に置いてあったコップにウーロン茶を注ぎ無言でそれを飲み干す。
「よし、俺的乾杯終了。食うぞ葵!」
「神楽坂女史を喰っちゃうのDeathか?」
「違うっ!しかも字も違うっ!」
 光久に遠慮無しの突っ込みアッパーを打ち込んで恭一郎はテーブル狭しと並べられた料理の数々に手を伸ばす。
「・・・苦労してから食うと感動も一際だぜ」
 脳裏に葵達の失敗の数々と何とか軌道修正している自分の姿が浮かんでは消える。
「・・・おめでとう、俺。ありがとう、俺・・・」
 熱い涙を拭いながら食べ続ける恭一郎に葵はしょぼんと肩を落とした。以心伝心である。
「みんなぁっ!注目!」
 食事も一段落着いたところで大食堂中に響いたのは、美樹の声だった。入り口近くでニヤニヤしながら一同を見渡している。
「プレゼント交換の時間よ!カモン、サンタさん!」
 叫びながら美樹はドアを開けた。
「め、めりーくりすます・・・」
 そこに立っていたのは大きな白い袋を背負い、赤地に白を配色した服・・・よーするにサンタ服を着込んだ愛里だった。
 但し、ミニスカサンタだ。
「な、何で私がこんな事をせねばならんのだ・・・」
「・・・?だって、”着せ替え愛里さん”だから」
 さも不思議そうに首を傾げる美樹に愛里はぐっと拳を握った。
「まあまあ、どうやら好評のようだしさっさとプレゼントを配っちゃいなよ。ほら、恭一郎もニヤニヤしてるよ?」
「バ・・・風間恭一郎は関係ないっ!」
 口では否定しながらも愛里は顔を赤くしてプレゼントを配り始める。
「ちなみに、プレゼントは各自が持ち寄った物をあたしが適当にシャッフルしたのよん」
「誰に説明してんだ?」
 恭一郎のつっこみに美樹は笑って首を振った。

「殿のプレゼントが当たりますように・・・」
 口の中で呟きながらエレンは渡された箱を慎重に開封した。
「・・・ビデオテープ?」
 中から出てきた思いがけない品にキョトンとする。
「おお、それは僕のプレゼントだねマクライト君!」
「あ、綾小路殿・・・!?」
 エレンの顔がさっと青ざめた。
「ち、ちなみに内容は・・・」
「それはもちろん!エレガントな僕の華麗なるダンスが120分テープの3倍録画で6時間たっぷりと堪能できるという・・・おや、マクライト君どうしたんだね?目の焦点があって無いようだが・・・」
「・・・合掌」
 恭一郎は呟いて自分のプレゼントをペリペリと開け始めた。手のひらに入りそうな小さな箱だ。
「でかければいいってもんじゃねぇが・・・何だ?これ」
 首を捻りながら蓋を開けると・・・
「ピアス?」
 中には、澄んだ銀色に光るリング状のピアスが納められていた。
「・・・・・・」
 恭一郎は無言で自分の左耳のピアスに触れてから静かに笑う。
「葵だな、これ」
「わ!?な、なんでわかったの?」
 ドキドキしながらそれを見守っていた葵に恭一郎は苦笑してみせた。
「俺がピアスを買い換えようとしてるのに気付いてたのはおまえくらいのもんだろ。・・・しかし俺以外の奴が当たったらどうする気だったんだ?」
「・・・ずいぶん前から買ってたの。プレゼント交換の話、私だけ伝わってなかったみたいでね、恭一郎に渡そうとしてたこれしかなかったから・・・ちゃんと恭一郎にあげられてよかったよ」
 にこっと微笑んだ葵にちょっと顔を赤くしながら恭一郎はピアスを外し、箱の中のピアスをそっと自分の耳に付けた。
「・・・どうだ?」
「うん、似合ってる」
 素直な賛辞に照れくさくなった恭一郎はわざとらしく腕を組みそっぽを向いた。
「まあアレだ、偶然ってのもあるってことだな」
 その台詞をテーブルの反対側で盗み聞きながら美樹はニヤリと笑う。
「・・・それが、偶然ってわけでもなかったりして」
 呟きながら自分の分のプレゼントを開封する。
「ん?目覚まし時計か。ベル式とはまた昔懐かしい」
「それは、私の」
 いつの間にか隣に来ていたみーさんがぼそっと呟く。
「絶対に目が覚める目覚まし」
「絶対?そんなすごいの?」
 美樹はしげしげとその時計を眺めた。本体から突き出した小さなハンマーが両脇のベルを叩く、一昔前なら何処にでもあったような素朴な目覚まし時計だ。
「確実に目が覚めると思う」
「普通の目覚ましに見えるんだけどなぁ」
 ぽんっと自分の胸を叩くみーさんに不審の目を向けながら美樹は目覚ましを一分後にセットする。
「あ」
 美樹が目覚ましをテーブルに置き、みーさんが呟いた瞬間。
 ズドンッ・・・!
 低い音を立ててその時計は粉々に爆発した。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 焼けこげて穴が空いたテーブルクロスと飛び散ったネジやバネを眺めてその場にいた全員が沈黙する。
「・・・確実に目は覚める」
「確実すぎるわぁあああっっっ!しかも一回きりじゃないのっ!」
 

「・・・ふう」
 喧噪を極める食堂から恭一郎は一人抜け出した。そのままふらりと庭に出る。
「ま、小休止だな」
 呟いて空を見上げる。
 真円に近い月が柔らかな光でもって夜空を彩っている。龍実町のある神奈川県よりもずいぶんと北上したせいか星の数が多い。
 ふと振り返る。
 中の連中はどうやらカラオケを始めたらしい。元気の良い歌声は神戸あたりだろうか。
 再び視線を外に向ける。街道沿いに建てられたこの別荘の周りは一面の森だ。どんなに騒がしくしても誰も文句は言わないので安心だ。
「騒がしく、か」
 この一年は、ずいぶんと騒がしかったと恭一郎は回想する。
 それまでも葵をナンパしに来る連中を殴り倒したり剣道部の連中と小競り合いをしたりとそれなりの騒動は起こしていたが今年は・・・いや、4月からこっちはほとんど毎日が大騒動だ。
「・・・より正確に言えば、あいつが落っこちてきてからか」
 美樹が二階のベランダから落下してきたあの日から、確かに何かが変わった。
 それは良いことなのか・・・それとも・・・
「らしくもねぇな」
 恭一郎は苦笑して頭を振った。何かに悩むのは性に合わない。
「おーい恭一郎〜!」
 頭上から振ってきた声に恭一郎は『ん?』と顔を上げた。
「一人でハードボイルドしてないでこっちで飲も?」
 二階のベランダから身を乗り出して美樹と葵が笑っている。
「おう!ちょっと待ってろ!」


 ひんやりとしたベランダの小さなテーブルに美樹と葵は座っていた。
「お?ワイ・・・赤い水か」
「そ。地下室にあったのを持ってきたのよ。葵ちゃんに聞いたけど飲んじゃっていいってさ」
 やってきた恭一郎の言葉に美樹はニヤリと笑ってみせた。
「うむ、やっぱこいつがねぇとクリスマスじゃねぇよな」
 下の階のピアノが奏でるオールディーズのクリスマスソングに合わせるようにトクトクと音を立ててグラスが朱に染まっていく。
「ところで、このピアノ弾いてんの誰なのかしら?」
「多分貴ちゃんだね。賞も取ったことあるんだよ?」
 美樹はふうんと頷いて最後の三つ目のグラスに注ぎながら首を傾げた。
「そういえば・・・葵ちゃん飲めるの?」
「葵はすげぇぞ・・・底なしだ」
「べ、別にそんなすごくは・・・ちょっと人よりも強いかなってくらいで・・・」
 恭一郎の言葉に葵は顔を赤くしてブンブンと手を振った。
「あはは、ともかく大丈夫なんだ。じゃあ二人ともグラスを持って」
 恭一郎は深い紅で満たされたグラスを手に取り、ふと笑みをこぼす。
(そうだ。これが、俺の理由だな。こいつらと一緒に居られる奇跡。金や地位では埋めようのないこの時間が、俺が風間である理由の一つなんだな・・・)

 美樹は瓶についた雫をさっと拭き取り自分の分のグラスを掲げる。
(想いが薄れたとは想いたくないけど、不安な気持ちが無くなったわけじゃないけど。でも・・・最高の友達と過ごせるこの夜くらいはいいよね?目一杯、限界まで楽しんじゃってもいいよね?)

 葵はいつもそうしているように柔らかい笑みを浮かべて恭一郎を眺める。
(恭ちゃん、貴ちゃん、美樹さん、エレンさん、みーさん、愛里さん、綾小路さん、みっちーさん、神戸さん・・・みんな、私をただの葵にしてくれる・・・神楽坂じゃなく・・・あきらめたはずだけど、今日くらい・・・いいよね?ただの葵でも・・・)

 そして、いくつもの想いと共にグラスは打ち合わさった。
 聖夜の寒い空に、温かい心を乗せて澄んだ音が響く。


『メリークリスマス        一同』