(つづき)
肝心のポップも見当たらないことだし、そろそろ帰ろうかと思った時、レオナがある一ヶ所を指差した。
「ダイ君、あそこ! あそこだけ緑があるんじゃない?」
たしかに、荒地ばかりのところに、僅かだがオアシスのように、緑のようなものが見える。
「よし、行ってみよう」
ダイはレオナを抱えるとそこに向かった。
近づいてみると、そこは明らかに人の手で植林された一帯だった。
まだ植えられて間もないものが多いが、確実に育って葉を茂らせている。
さらに近づくと、見慣れた人影が見えてきた。
「え? ポップ?!」
「ポップ君?!」
2人はほぼ同時に、気付いて思わず口にしていた。
もともと彼を探していたくせに、見つけてみると意外な気がしていた。
始めは、2人してポップの目の前に突然現れて、慌てふためかせようとか、企んでいたのだが。
実際は何の芸もなく、2人に気付かないのか、黙々と草や木の世話をしているポップの後方に降り立った。
「やっぱり 後をつけてきてたのか」
作業を続けながらポップは、降り立った2人を見ることもなく言う。
2人はキョトンと顔を見合す。
「どうも最近様子がおかしいと思ってたけど、姫さんの発案か?」
ようやくポップは、振り返って2人を見る。
その顔は、不機嫌そのものだ。
「あの…最近、ポップがさ、いなくなることが多いからさ…何してるのかな〜って」
「ふ〜ん、それで後をつけた、と?」
ダイがしどろもどろに言い訳するも、ポップの返事は全く抑揚が無く、ぶっきらぼうだ。
そんな様子に、レオナも口を開く。
「あら、それを言うならポップ君、あなたこそコソコソ隠れて何してるって言うの?」
「べ、別に、隠れてたわけじゃねーよ」
「それに、あたしのあげた種、育ててるでしょ?なんで隠してるの?」
「うっ…!」
このことがバレているのは、ポップにとって意外だったようだ。一瞬うろたえる。
「それとこれとは、話が違うだろっ…」
「違わないわよ、それが気になって後をつけたんだもの」
「やっぱり、姫さんが黒幕か…」
「そうよ、 …で? ココで何してるの?」
ちくしょう…開き直りやがったぜ、姫さんの奴…!
こうなっしまったレオナは、もう頑として引かない。
不毛なコトは基本的にしない、のがポップの性質だった。
仕方なく諦めて、自白する。
「隠すつもりは無かったんだよ、ただ、失敗するかもしれねぇから…上手くいってから知らせようと思ってたんだ」
「上手くいってから? 一体何を?」
「見ての通りだよ、木ィ植えてんだよ」
「木を植えるのが失敗するかもって、何で?」
思わずダイも口を挟む。
木を植えて上手く育つか否かは、自然に任せるしかない。
水や土を整えてやるとかぐらいは必要だろうが、大部分は時間が解決する問題だ。
それをどう、失敗だの成功と見なすというのだろう。
「ただ植えてるだけじゃねぇんだよ、魔法力で成長を促してるんだ」
「え?」
「だからさ、魔法力を込めれば木が早く育つかもしれねぇ、と思ってさ、イロイロ試してたんだよ」
「あの花のように…?」
「うっ…! そ、そうだよ、あの花みてぇに魔法力に影響を受ける植物があるんだったら、他でもできると思っただけだ!」
あの花のことを指摘されると、流石に歩が悪いと思うらしく、ポップはそっぽを向いてしまう。
それでもレオナは、間髪入れずに問いただす。
「じゃ、ポップ君、あの花育ててるのね?」
「!」
顔を反らしているので表情は見れなかったが、明らかに揺れた肩から、図星なのは明白だった。
「ね? 何処にあるの? 見せてくれてもいいでしょ?」
「〜〜〜っ! 嫌な予感はしてたんだが、目的はソレだったんだな…」
「もったいぶらないで、見せてくれてもいいじゃないの!もともとあたしがあげた種なんだから〜」
「わーってんよ! そのことについては、とぼけてて悪かったよ、本当に最初は興味なかったんだ」
「今咲いてるの?研究のために育ててるんでしょ?」
「ああ、 ほら、その辺のがそうだよ」
ポップは仕方ない、といった感じで、ちょうどレオナとダイが立っている後ろの辺を指差した。
2人は後ろを振り向く。
ポップの指差した先には、ほんの一角地面が耕してあり、その中に確かになにか植えられている。
少し見たところでは、草が茂っているようで、花が咲いているようには見えない。
レオナはもっとよく見ようと近づいていく。 ダイもそれに続く。
「ポップ君〜、花、咲いてないじゃないー まだ早いの?それとも、もう終わっちゃった?」
レオナは歩きながら、後方のポップに尋ねる。
だんだん近づいてきているにも関わらず、一向に花が咲いているとは見えないからだ。
すぐそばにいるダイも、まだ花らしきものは見当たらない。
「咲いてるってば、 も〜っと近くでよく見てみな」
ポップは、2人の後をゆっくり歩きながら答える。
今さら嘘をつく理由も無いから、本当なのだろう。
ダイとレオナは花畑…、と思われる、草むらに到着する。
レオナはしゃがみこんで、目線を草むらと同じ高さ持っていく。
「え?! まさか、コレ?!!!」
何か発見したらしいレオナが、明らかに驚いて声を上げる。
その声に驚いたダイは、ポップのほうに向けていた視線をもどした。
つづく
ここまで長くなるとは…今度こそ、終わりに… ガクッ。