『愛してる』の筈だったのに‥‥(- -;)

・・・・言える訳ねーだろっ!




家に帰って来て、そのまま、地下室に直行。

それが、いつものパターン。



それが。



半地下のその扉をあけると、中に小さな灯りがついていた。

確かに消していった筈なのに。

荷物を作業机に放りなげ、周りを見る。

考えられる事は、一つだけ。





‥‥見つけた。





部屋の隅の小さなソファに、電球の暖かな光を受けて光る金色。

すぅくすぅくと気持ち良さげな寝息をたてながら、そこにいるのは−−−アンジェリーク。

その周りには、雑誌やらあの機械の梱包材料のエアパットが散乱している。

エアパットは半分以上、プチプチが潰されてて、その手にも潰しかけのが残っている。

‥‥どうやら、俺を待ってる間、これで時間を潰してたらしい。

良く見ると、寝ていながらも眉間に皺が寄っている。

なにやら怒っているような顔にも見える。

うん‥?




やばい‥‥。







背中を冷たい汗が流れる。

今日は、会う約束を取り付けていたんだ。

それを今朝になり、直前キャンセル。

怒るのは、わかっていた。

それで当分無視されるのも覚悟していた。

だが‥‥。





当日、その日の内に家に押し掛けられるのは、考えてなかった。





夕べ、深夜、陛下から内密の連絡を受けた。

ある惑星の異常が、思ったより大事で緑と鋼と地のサクリアが必要だと。

その夜の内に、出かけた。

心配させるのも厭だったし、それにもしこの出来事を知っていたら、こいつは今日の休みもほっぽといて、宇宙の安定化に奔走するだろう?





ロザリアが新女王になって、たった一ヶ月。

でも、その間、アンジェリークは補佐官として一日も休まず頑張った。そして今日は、初めての休日。

その貴重な休みを潰させるのは、凄く厭で。

でも、そんなことを素直に言う程、俺はまだ大人になってなくて。

『造りかけのメカが完成しそうなンで、パス』

と書いたメモだけをアンジェの家のドアに挟んで出かけた。







出掛けたんだが‥‥。









どうしよう?







枕元にしゃがみ込んで、顔を覗き込む。

‥‥ちょっと痩せたみたいだ。

もともと白かった肌が、更に白く透き通るようだ。

もう少し、宇宙が安定すれば、こいつの苦労も減るんだが‥‥。





その顔を眺めている間も、アンジェはまったく起きる気配がなかった。

疲れているんだろう。





その寝顔が、あんまり可愛くて、俺はつい瞼にキスをした。

‥‥これくらいは、許されるだろう?





実は、キスも俺達は、まだだ。

忙しくてそれどころじゃなかったってこともある。

何度『試験終了前に決めてればっ!』と思ったことだろう?

後悔することは好きじゃないが。

‥‥閑話休題。







ところが。

次の瞬間、俺は生まれて最大の後悔をする羽目になった‥‥。





瞼から唇を離した瞬間。

その瞳が開かれた。





隙間から覗くエメラルドの瞳は、眠ってた為、まだ霞がかってる。

「ゼ‥フェル‥?」







ドキーンッッ!!







心臓が口から飛び出そうになった。

ばれてないよな、今やったこと。

思わず手で口を隠して、そっぽ向く。

耳まで真っ赤なのが、自分でもわかる。





だが、アンジェはやっぱり寝ぼけていたらしい。





あんなに待ったんだ。俺だと認めると、怒り出すのが本当だろう?
それなのに、にっこり微笑んだ。

その笑顔が凄く可愛くて、またドキッとする。





そんなこっちの思いも知らず、アンジェは腕を俺の首に絡めた。

「おかえりなさい〜〜」

ほにゃぁという笑みをたたえて、俺に抱きついたのだ!





「ア、ア、アアアッ、アンジェッッ」

‥‥声が震えてると、笑わば笑え。

こんなファーストコンタクトは反則だぁァァァァァァ!!







だが。







「?‥‥アンジェ?」

次の瞬間。

俺に抱きついたまま、見事にこいつは寝息をたててた‥‥。







な‥なんだ、今の‥‥?

思いっきり、俺が今まで築き上げた全てのイメージが崩れそうになった気がする‥‥。





まぁ、いいや。





俺にもたれながら、寝息をたてているアンジェを起こさないようにちょっと抱き締める。





あんな笑顔を見せるのは、俺だけにしろよ?

じゃねーと、とてもじゃないけど俺、もたねーわ。









え〜と‥‥その。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

‥‥やっぱり、言えねー!





『言葉でなきゃ、伝わらないこともあるよっ』

ってこいつは良く言うけど、やっぱり言えねー。いくら寝てても。





取りあえず、今日はこのまま家まで送っていってやる。

それで、今度の休みは、必ずどっか行こうな。

アンジェリーク。







あとがきもどき

見つけられましたね。はい、そうです。これは『好き』の対になるものです。
いかがでしたか?
本当は、題名すべて『愛してる』で統一されてたんですが、やっぱりゼフェル様ってば(笑)
いざとなるとやっぱり言えなかったですね。題名まで巻き込んでこの始末。
う〜ん、ゼフェル様ってやっぱりいいなぁ。書きやすい(^^)
いつかこのゼフェル様の初ちゅーなんて書けたらいいなぁ、なんて思っております。
因にZ×Aのこの文と画面の色は、それぞれ想う人の髪と瞳の色になっております。
一番、苦労しました(^^;)
あ〜、なんで色にエメラルドグリーンがないんだろう?




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