ここは聖地、常春の地・・・だったのですが。
先代まで、聖地は常に春の陽気に包まれておりましたが、現女王の『四季折々の楽しみも大切です!』の一言である程度の温度の変化を味わえるようになったこの頃。
そんな冬の日射しが一杯な公園を、アン・ディアナとアンジェリークはお散歩してました。
風は確かに冷たいですけど、冷たすぎる事はなく。
かえってお日さまの暖かさを再認識させてくれるくらいで、そんな中を二人は手を繋ぎ、仲良くゆっくり歩いてました。
普段は女王補佐官として忙しい毎日を送っているアンジェリークでしたので、こんなゆったりとした時間を娘と二人っきりで過ごすのは久しぶりでした。
え?
オスカー様はどうしたって?
「ぱぱ、元気かなぁ?」
「今日の夜帰るって、今朝わざわざ電話してきたから大丈夫よ。アンに一杯お土産買ったって言ってたし。
お仕事に行ってるのに、おかしいわね」
・・・どうやら出張中みたいです。
今、あのお家に二人きりなので心配した陛下が、アンジェにわざわざ休みをくれ、『アン・ディアナと一緒にいてあげて』と言ってくれたのです。
その為、母娘水入らず状態。
ゆっくりお散歩とあいなった訳です。
公園の中を歩いてるといろんな人が声をかけてきます。
「アンジェリーク様、こんにちは」
「アン・ディアナ様、ごきげんよう」
「楽しそうですね」
「またうちの方へ遊びに来て下さいね」・・・等々。
この天使の母娘は本当に人気者です。
会う人会う人、みんな二人を見るとにっこり微笑み、優しい言葉をかけ、そして満ち足りた幸福そうな顔をして離れてゆきます。
それはまるで、本当の天使の散歩を見る様でした。
そんな中、また一人、声をかけてきました。
「あ、いらっしゃ〜い♪ おふたりで来てくれるなんて今日はごっつーついてるわー。なんぞ見ていったってや〜」
言わずと知れた商人さんです。
商人さんは、あの女王試験が終わった後も自分の力、コネ、経済力、総てをフル活動させ、聖地での販売権を獲得し、今でも日の曜日にお店を開いてます。
もちろん他の店も聖地にはありますが、そこはそれ、豊富な品揃え、注文に対するスピーディーな対応などであの守護聖様やその守護聖様御用達になり、一般の客にも受けておりました。
「あ、しょうにんさん。こんにちは」
「はい、こんにちは。
や〜、アン・ディアナもすっかり大きくなって、こりゃおかんに似てえらいべっぴんさんになるで。それに二人とも今日のべべはごっつぅかわい〜しなぁ」
商人さんがそういうのも無理はありません。
今日の二人の服装はそれはそれは可愛らしいものだったのですから。
アン・ディアナの髪をもっと赤くしたような真っ赤なフレアのスカートに淡いクリーム色のもこもこしたコート。もちろんフード付き。ボタンの代わりに白いポンポンが三つついてます。
コートとお揃いのブーツも良く似合ってて、まるで可愛いうさぎさんのようでした。
そしてアンジェリークもそれとお揃いのを着てました。但し、スカートは焦茶のロングタイトですが。
「そや! ええもんがある!」
ぽんっと商人さんは手を叩くと、品物の山に頭を突っ込み何やらごそごそと探しはじめました。
「なに、しょうにんさん?」
「いいから! ちょっとまっとっとき」
・・・ひとしきり探し回ると、ぷはっと顔を出しました。
「これや」
ぽさっとアン・ディアナの頭に乗せられたのは・・・コートと同じ淡いクリーム色のもこもこした・・・長い耳付きの帽子でした。
「わ〜、これって・・・」
「やっぱり、うさぎには耳がないとな」
それはとてもとてもアン・ディアナに似合いました。
「や〜ん、可愛い! アン、すっごく可愛いよ〜」
「えっ、そう?」
アン・ディアナも嬉しかったのでしょう。ながーいお耳に手をやってぴょこぴょこさせながら、ぴょんぴょん跳ね回りました。
「商人さん、これおいくら?」
「何言うてんのん? 補佐官さまからお金はとれしまへん。聖地中の人を敵に回してしまうわ。それと・・・これもオマケや」
コートのお尻の方に真っ白なまるまるしっぽがポンっと付けられました。
「ほんと、可愛い〜♪ 私も欲しい〜」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「で?」
「『残念やけどこの帽子、子供用しかないんや』ですって」
空になったグラスに赤ワインを注ぎながら、アンジェリークはオスカー様にいなかった間の報告をしてました。
帰って来た時のオスカー様はそれはそれは疲れた様子でしたが、愛娘の超絶可愛い姿に出張の疲れも一気に吹き飛んだ様です。
それはそれは一時も離したがらない様子で、少し奥様の御機嫌も斜めになりそうだったくらい。
一緒に食事し、一緒にお風呂に入り、そして寝かせた後、やっと夫婦二人水入らず・・今はそういう時間です。
「オスカー様があんなに喜ぶんなら、私もうさぎさんの格好してお出迎えすればよかったです」
少しすね気味の妻にワインの香りのキスを一つ落とすとオスカー様は微笑みました。
「俺とお嬢ちゃんの娘だから可愛いんだ。お嬢ちゃんは何も着てなくても最高だからな」
「でも・・・」
「わかった、わかった。それじゃ今度俺がプレゼントしてやるよ」
「ほんとですか?!」
きらきらした瞳で見上げられたオスカー様はもう一つキスを落とすと
「もちろんだ。俺が嘘をついた事があったか?
・・・でも、その前に一番最高なお嬢ちゃんを心ゆくまで見させてくれ・・・・」
「あ・・・オスカー様・・・」
二人の夜は熱く更けて行きました。
後日。
アンジェリークにオスカー様からプレゼントが届きました。
確かにそれは『うさぎさん』セット。
でも。
『うさぎ』は『うさぎ』でも・・・・『ばにーちゃん』セット(爆)
黒いぴったりとしたレオタード(?)に編み目タイツにカフスのあれです。
怒りまくったアンジェリークでしたが、何時の間にかオスカー様に上手い事言い包められて、夜の寝室で着せられる羽目に陥りましたとさ(笑)
おしまい
あとがき?
なんでこんな莫迦話書いてるんでしょう?(笑) 一目惚れしました。縫いぐるみのうさぎさんに。
もともと流那は和風の『兎と月』モチーフが大好きなんですが、それでも変(笑)です。
ロップ・イヤーのピンクのうさぎさん。手のひらに乗るくらいの耳垂れうさぎです。
名前は『すうぴい』。
その内サイトの何処かに現れてくるかもしれません(?)
其れ故の妄想です。許してください(えへ)