気狂いの筆

   
 
× 断頭台に、登る。
 
× こわい。こわいんだよ。救(たす)けてくれ!
 
× 私を本当に理解してくれる人は、友人にも教師にも家族にもいない。太宰だけが私を解(わか)ってくれる。彼が私の前から消えたら、私は発狂するだろう。
 
× 「ここから出してくれ!」「黙れやかましい!」 どすんばたん。……。彼は黙るしかない。
 
× テストとは何だ、テストとは。
 
× 入学説明会の時、遅れてきた生徒(いやまだ入学していないから生徒とは言わぬのかもしれぬ)を教師が、それは高校に入ったら遅刻ですよ気をつけなさい、とめざとくいちいち指摘していた。いいじゃないか、それぐらい。ちょっと失望。
  × コカイン、ヘロイン、アヘン、モルヒネ、ヒロポン、アドルム、カルモチン、プロバリン、パビナール、アトロピン、ジアール、アスピリン。
 
× 人を嫌い、嫌われ、嫌おうとし、嫌わなければならなくなる。ああ、いやだ。
 
× 指導だって? 偉そうに。何様のつもりなんだ。高飛車だ。
 
× 中学は荒れていた。勉強のできる高校は安穏だと聞いていた。ところが陰口ばかり。一向に変わらない。余計苦しいかもしれない。陰惨さが表に出るか裏に隠れるかの違いである。大いに幻滅。劣等生と優等生。問題児と偽善者。
 
× 女は馬鹿で男は愚か。
 
× 集会で注意する生徒部も生徒部なら、される生徒も生徒である。どっちもどっちだ。情けねえ。
 
× 光秀の苦悩。
 
× 昨日、斬られた。今日も、斬られた。明日も斬られに行く。
 
× ルーズソックス、ミニスカート、茶髪、ベスト、ピアス、遅刻、煙草(たばこ)、エスケープ、云々。
 
× 最近、目が悪いのに気附いた。世界がまるで見通せぬ。
 
× ラスコーリニコフの様な気分。
 
× 太宰に狂い、安吾にうたれ、織田作に酔う。ああ、いい気持ち。
 
× 自分の瞼を(まぶた)歯車がぐるぐると回っている。うわあっ。
 
× 自惚(うぬぼ)れるな!
 
× 直治の夕顔日誌より。思想? ウソだ。主義? ウソだ。理想? ウソだ。秩序? ウソだ。誠実? 真理? 純粋? みなウソだ。歴史、哲学、教育、宗教、法律、経済、社会、そんな学問より、ひとりの処女の微笑が尊い。学問とは、虚栄の別称である。人間が人間でなくなろうとする努力である。不良でない人間があるだろうか。味気ない思い。金が欲しい。さもなくば、眠りながらの自然死! デカダン? しかし、こうでもしなけりゃ生きておれないんだよ。そんな事を言って、僕を非難する人よりは、死ね! といってくれる人のほうがありがたい。さっぱりする。けれども人は、めったに、死ね! とは言わないものだ。ケチくさく、用心深い偽善者どもよ。正義? 所謂(いわゆる)階級闘争の本質は、そんなところにありはせぬ。人道? 冗談じゃない。僕は知っているよ。自分たちの幸福のために、相手を倒す事だ。死ね! という宣告でなかったら、何だ。ごまかしちゃいけねえ。しかし、僕たちの階級にも、ろくな奴がいない。白痴、幽霊、守銭奴、狂犬、ほら吹き、ゴザイマスル。雲の上からの小便。死ね! という言葉を与えるのさえ、もったいない。人間は、嘘をつく時には、必ず、まじめな顔をしているものである。この頃の、指導者たちの、あの、まじめさ。ぷ! 人から尊敬されようと思わぬ人たちと遊びたい。けれども、そんないい人たちは、僕と遊んでくれやしない。僕が早熟を装って見せたら、人々は僕を、早熟だと噂した。僕が、なまけものの振りをして見せたら、人々は僕を、なまけものだと噂した。僕が小説を書けない振りをしたら、人々は僕を、書けないのだと噂した。僕が嘘つきの振りをしたら、人々は僕を、嘘つきだと噂した。僕が金持ちの振りをしたら、人々は僕を、金持ちだと噂した。僕が冷淡を装ってみせたら、人々は僕を、冷淡なやつだと噂した。けれども、僕が本当に苦しくて、思わず呻(うめ)いた時、人々は僕を、苦しい振りを装っていると噂した。どうも、くいちがう。結局、自殺するよりほか仕様がないじゃないか。このように苦しんでも、ただ、自殺で終るだけなのだ、と思ったら、声を放って泣いてしまった。プライドとは何だ、プライドとは。人間は、いや、男は、(おれはすぐれている)(おれにはいいところがあるんだ)などと思わずに、生きて行く事が出来ぬものか。人を嫌い、人に嫌われる。ちえくらべ。厳粛=阿呆感 とにかくね、生きているのだからね、インチキをやっているに違いないのさ。――俺を代弁しているよ。
 
× ニヒリズムとは、ペシミズムの反対の方角にあるものである。
  × 恋に恋い焦がれるなんて下らないものだと思ってた。恋はしたくてするもんじゃねえんだって。それが自分だと解った時、打ちのめされた。
  
  × 最近授業を聞いていない。考え事ばかりしている。
 
× 俺が文学少年だって? 笑わせないでくれ。変な期待されちゃ困る。鴎外を読んだ事のない文学少年がいるもんか。私は少々気がふれているだけだ。
 
× この世に、教育家と政治家と宗教家ほど嘘つきなものはいない。
 
× 高校とは、処世術を教える所なのか?
 
× 砂時計はね、止まることはないんだ。だからね、落ちきる前に、何をするかということなんだ。それが大事。
 
× 優等生は頭が悪い。さらに困るのは、嘘つきだという事だ。
 
× ヨシ子に恋をしたい。彼女は信頼の天才だ。でも彼女でさえ犯された。社会は悪魔である。
 
× ああ、焼け死ぬ、焼け死ぬ、焼け死ぬ!
 
× 女を抱きたいという奴はごまんといるだろう。しかし童貞を失いたい奴は、おるまい。逆も然り。
 
× 私は化粧をする女は嫌いである。大人はまだ許せるが、若者の場合はうんざりする。何故(な ぜ)大人は許せるかだって? 大人は汚れているからさ。だからああやって表面を隠しているんだ。俺たちはね、覆う必要はないのさ。そんなことをする奴は、卑怯だ。化粧をしている連中は、処女を失っている様に思える。
 
× 何だ、なんでも差別々々って。そんな事言うんだったら、哲学者や思想家はみんな差別主義だ。てやんでえ。
 
× 勉強=努力
 
× あの人は私のことを想ってくれているんだろうか。ああ、辛い。息が詰まりそうだ。原因不明の焦躁が(しょうそう)募る!
 
× 生き方というものはね、そう簡単には変えられないのさ。
 
× まわりは蒙昧(もうまい)な連中ばかりである。こういう連中が大人になっていくのである。大人なんて、所詮そんなもんだ。そうして大人になってみんな偉そうな事ばかり言う。どうりで世の中よくならない筈だ。
 
× 私が自殺するんだったら、太宰の墓の前で死にたい。そうすれば少しは救われるだろう。田中秀光のように。今度彼の作品を読んでみよう。
 
× 今度髪を染めてみようか。まわりの人間がどんな視線になるか試してみよう。
 
× 毒を喰らわば皿まで。
 
× 純白の雪だってね、そのうち汚れるんだよ。
 
× この世の赤シャツと野だをぶん殴りたい。しかし私にはそれだけの度胸が無い。それが誰だか解らないのも、情けない事だ。
 
× 彼は雪掻きが嫌いである。近所付き合いのごたごたがあるからだそうだ。父が過去に、その人達にぬぐいきれぬ様な酷烈な迷惑(酷烈すぎて母は具体内容を彼に教えてくれぬようである)をかけ、母は異常な怒気(端から見れば狂っている様だと彼は語る)をむきだしにして、他人の家の前まで掻きなさいと強いるんだそうだ。父は威厳を保ち動じないそうで、こういう事になる度(たび)、夫婦喧嘩が勃発する。彼はその労働よりその因果に辟易(へきえき)する。母に反発するのも可哀想(か わいそう)だし父は強権を持っている。何よりも彼の知らない昔からの情実かわだかまっている様である。何故大人というのは言いたい事を言い合えないのか。そんな社会を嫌い、彼は将来隠遁生活を送りたいそうである。
 
× 群盲象を評す。
 
× 私も推薦面接の時には、高校へのべんちゃらを述べたもんである。いったいどれだけの人間が真実だけを陳述しているか。でも彼らは仕方が無いのだ。追いつめられているのだ。当校を選んだ理由? 学力がそこらに位置してるからに決まってるじゃないか。推薦を受ける気になったのは何故? それだけチャンスが増えるからだ。人物を見てもらいたいからだって? ふん、そんなもんは内申だけで決まるもんだ、馬鹿野郎。高校教師ごときが決まりきった質問だけで、そうそう人間の本質を見抜けてたまるもんか。
 
× 殺せ殺せ、殺してくれ!
 
× 三つ子の魂、百まで。
 
× 虚栄と自尊の為に勉強するのは間違いか?
 
× 頑張れ頑張れ、芹川進! 僕は君を応援しているぞ。一高に落ちても挫(くじ)けるな。はりきって、前へ進め!
 
× 蒼天已(すで)に死す。
 
× 今にね、ルーズソックス履いている様な連中がね、教師になったら、生徒の流行を指導するに違えねえんだ。ざまあみろ!
 
× 私は本当に笑った事があるんだろうか。
 
× 宿題を自力で半分ぐらいやって怖くて提出しない奴よりも、他人のを丸写しして出した奴の方が評価が高い。
 
× 子の心親知らず。親の心子知らず。
 
× 私は高校生失格どころか、人間失格なんです。生きている資格が無いんです。理窟(り くつ)ではうまく説明できないけど、そうなんです。私は人間失格なんです。
 
× 大人は体裁ばかりにこだわる。中身というものを知らん。
 
× 「誰なんです、あなたは――」 汝、(なんじ)黙然。
 
× やんぬるかな。
 
× 私に麻薬をやらせようとして、「集中力が高まるよ」とか「やせるよ」とか誘っても無駄である。私にやらせるんだったら麻薬そのものの害を言えばすむ。「精神がずたずたになるよ」「廃人になるよ」、ふらっとやっちまうかもしれない。「太宰も、これをやっていたんだよ」 もう駄目だ、我慢できない。
 
× 彷徨(ほうこう)。
 
× 汚職する奴は、名門大学出のエリートである。
 
× 私は教師にはなりたくない。生徒には反抗されるし、上からの命令で好きな様に授業できないし、生徒の親も何かと口出しする。第一、しゃべるのが下手糞だ。
 
× 職員会議や保護者会を見学してみたい。情報公開制度。知る権利。
 
× 政治家を批判する連中。ならてめえがやってみろ。「官僚が腐っている」なんてありきたりな言葉を吐く連中。そんなに自分は人生を全うに生きてんのか。大衆もどす黒いわ。
 
× 私の人生は慚死(ざんし)ばかりである。
 
× なんで勉強なんかやるんだ。
 
× 定義づける。
 
× 大学大学大学大学大学大学大学大学大学大学大学大学大学大学大学大学大学大学大学大学大学。
 
× 腹が減った。何か喰いてえ。
 
× 彩子と雪と(きよみ)早由利と夏目とツネ子とシヅ子とシゲ子とヨシちゃんとスガちゃんとさっちゃんと森ちゃん。
 
× 虚々実々。みんないい奴である。しかし気を許せず、いつも間に壁がある様で、我を曝(さら)け出した事は無い。高校に入ってからである。そんな時、人間失格を読んだ。うちのめされた。
 
× どうやら彼の父親は、親権とか父権とかいうものをはき違えている様である。
 
× 清兵衛と瓢箪。(ひょうたん)
 
× まわりは好色漢ばかりである。しかし性慾というものが何なのであるかということを知る奴は一人もいない。
 
× 世の中、なあなあで生きている奴が多すぎる。
 
× くたばれおばさんども! おばさんという人の噂を喰い物にしている姦賊(かんぞく)は、消滅した方が世の為である。
 
× 売春婦、淫売婦、娼婦、娼妓、売笑婦、相方、パンパン、ブラックガール、ストリートガール、街娼、闇の女。今の日本に、そんなのはいやしない。みんな偽物である。
 
× 人間の真理とはなんぞや?
 
× 地球もこんなものに住みつかれてしまっては、後百年ももつまい。
 
× そりゃ君、どだい無理な注文だ。
 
× なんだい、あたりさわりのない陳腐な事を、もっともらしくクソ叮嚀(ていねい)にしたり顔で言いやがって。
 
× 餓鬼の頃、大人というものはみんな人間ができていて立派なものなのだと思ってた。何の事はない、俺のまわりにいる高校生が数年後に汚れるというだけの生き物である。
 
× あの人のことを考えると、もう駄目なんです。そこ、そこ、と指さす可憐な姿に、僕はもう参ってしまったんです。
 
× ニーチェを読んだ。さっぱり解らん。数ページでやめた。
 
× 政治家とか警官とか教師とかいうもんは、人徳とか、道義とか、識見とか、所謂人道において最も優れた人がやるもんだと思ってた。坊ちゃんや破戒を見よ! 宗田理(そうだおさむ)でも可。
 
× 現実てなァ、そんなもんさ。
 
× 葉藏と竹一と堀木とヒラメ、そして私。
 
× 大学というのはいったいどんな所なんだろう。同志が集まって夜まで語り合うんだろうか、竹林の七賢の如く。勉強しようかな。
 
× 果して、無垢の信頼心は、罪の原泉なりや。
 
× 黒田先生曰(いわ)く。「実際、教師と生徒の仲なんて、いい加減なものだ。教師が退職してしまえば、それっきり他人になるんだ。じっせえ、教師なんて馬鹿野郎ばっかりさ。男だか女だか、わからねえ野郎ばっかりだ。こんな事を君たちに向って言っちゃ悪いけど、俺はもう、我慢が出来なくなったんだ。教員室の空気が、さ。無学だ! エゴだ。生徒を愛していないんだ。俺は、もう、二年間も教員室で頑張ってきたんだ。もういけねえ。クビになる前に、俺のほうからよした。きょう、この時間だけで、おしまいなんだ。もう君たちとは逢えねえかも知れないけど、お互いに、これから、うんと勉強しよう。勉強というものは、いいものだ。代数や幾何の勉強が、学校を卒業してしまえば、もう何の役にも立たないものだと思っている人もあるようだが、大間違いだ。植物でも動物でも、物理でも化学でも、時間のゆるす限り勉強して置かなければならん。日常の生活に直接役に立たないような勉強こそ、将来、君たちの人格を完成させるのだ。何も自分の知識を誇る必要はない。勉強して、それから、けろりと忘れてもいいんだ。覚えるということが大事なのではなくて、大事なのは、カルチベートされるということなんだ。カルチュアというのは、公式や単語をたくさん暗記していることではなくて、心を広く持つという事なんだ。つまり、愛するという事を知る事だ。学生時代に不勉強だった人は、社会に出てからも、かならずむごいエゴイストだ。学問なんて、覚えると同時に忘れてしまってもいいものなんだ。けれども、全部忘れてしまっても、その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものだ。これだ。これが貴いのだ。勉強しなければいかん。そうして、その学問を、生活に無理に直接に役立てようとあせってはいかん。ゆったりと、真にカルチベートされた人間になれ! これだけだ、俺の言いたいのは。」 素晴らしい言葉だ。目からうろこが落ちた。俺も一つかみの砂金の為に、勉強したい。
 
× 少年よ大志を抱け! と言ったクラーク博士が、その後何て言ったか知ってるかい? そしてこの私の様になれ! と言ったらしい。偉大な人でなくちゃこうは言えねえ。立派、立派。この言葉、両方とも好きだ。
 
× 恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか
 
× さみしい。
 
× 女と男と微笑と涙と酒と佞奸(ねいかん)と姦淫。
 
× 教師だってね、性慾ってものは、あるんだ。当たり前の事だけど、改めて考えてみなよ、これはすごい事だよ。僕は昔、例の調子だから教師なんてもんは、女の体に興味がないもんだと思ってたんだ。女子の生徒を見て、こいつあいい女だ、とか、美人だとか、可愛いとか、内心思ってるに違えねえ。まあ、それが悪いとはいわないけど。でも、不祥事を起こしてテレビに出てくる様なのが、身近にいるとも限らねえ。女子生徒諸君、用心したまえ。あまり足をむきだしにしてると、やばいぞ。
 
× 梁山泊百(りょうざんぱく)八人。俺もあの様になりたい、加えてくれ。
 
× 高校生で本当に反抗してる奴なんかいるもんか。みんな意気地なし。俺も含めて。
 
× 生徒も教師も馬鹿ばっかである。流行にも、体制にも、便乗するのは嫌だ。さて、どうしよう?
 
× ええい、ままよ!
 
× 源頼朝と足利尊氏と徳川家康。さて、俺たちのは?
 
× 因果の自惚(うぬぼ)れと唱二の謙虚さと彈正の(だんじょう)思い込み。
 
× 生きるって何なんだい。俺たちは、何の為に生きているんだ。何の為に、生きなければならないんだ?
 
× 文学作家はだいたい、早死にするか、長生きするかである。もう一つ、自殺する奴が多い。
 
× みんなタテマエばっかし。
 
× そんな事は、生徒手帳に書かれていません。
 
× 親が私の小説自体を批評するのは大いに結構だが、それを私そのものへの説教の材料にするのには、うんざりする。
 
× いちいちうるせえなあ。それぐらい、いいじゃねえか。
 
× 春は、まだか。
 
× 人を嫌うんなら、独りで嫌え! 他人を巻き込むな。それはおまえがその事に自信がなく、臆病だからだ。腰抜けめ! そんなものの為にできた仲間の、なんとはしたないことか。
 
× 俺だってね、勉強したいんだよ。でもいざ机に向かうと、進まないんだ。意志が弱いのかなあ。この矛盾撞着が(どうちゃく)解るかい?
 
× 私は女子がピアスをする事については、とやかく言うつもりはない(でも、やたらめったにつけてたり、重そうなのをぶらさげているのは、痛そうである)。男には、似合わない。たとえ素行が良かろうが成績が良かろうがナントカ賞をとろうが何歳になろうが、いけない。古くさい? 因循姑息? 男女差別? だからどうした!
 
× みんな本当に流行に乗りたくて乗っているのか?
 
× 今の大人だってね、若い時は、「今時の若いもんは――」てえ言われたんだ。そんでもって、今時の若いもん、所謂だらしない恰好してて、髪を七色に染めてる様な連中だって、おっさんおばはん、じじいばばあになれば、「今時の若いもんは――」を繰り返すに違えねえんだ。輪廻転生(りんねてんしょう)というやつですな。
 
× 白無垢鉄火(しろむ く てっか)め!
 
× 何故頑張らにゃならんのか、その理由を説明してくれ。
 
× 文学は、凶器である。不良が読むものである。
 
× みんな俺を、過大評価するか過小評価するか、そのどちらかである。
 
× それが差別というのなら、俺は堂々と差別してやる!
 
× どうやら一番愚昧(ぐ まい)かつ周囲を欺いている偽善者なのは、私の様である。
 
× 恋って何?
 
× もうよい、彈正。たくさんだ。いい加減にしたら、どうか。
 
× 人間の評価なんてもんは、自分がするものなんだ。人から聞いた事を、鵜呑(う の)みにするんじゃねえ。自分が行って、見て、よーく確かめてから判断しろ。蜚語(ひ ご)に惑わされるな。百聞は一見にしかず。
 
× みんな、よく平然としていられるなあ。
 
× 四面楚歌、鰥寡(かんか)孤独、孤城落日、孤立無援、天涯孤独。
 
× 星辰(せいしん)を出したのは、間違いだったかもしれない。
 
× 教育とは、齟齬(そ ご)の別称である。
 
× 茶髪とかピアスとか、外面で中身を判断するのは、別に大人に限ったことじゃない。当事者でさえそうである。
 
× 成績の悪い奴は、素行も悪いんだそうである。
 
× 当然がね、正しいとは限らないんだ。今間違っていると思われてる奴が、正しいかもしれない。
 
× 集中力散漫。
 
× マニアというものは、周囲から変な目で見られる。蔑まれる。馬鹿にされる。何故ある事に一途に惚れ込み、傾倒するのがいけないのか。だいたい、おまえらだってマニアじゃないか。俳優マニア、歌手マニア、ドラママニア、芸能人マニア、菓子マニア、バイトマニア。やたらと多いのが、可愛い子マニアとエロマニアである。訳の解らない語句が出てきて、ついてゆけぬ。戦国武将の名をたくさん知っているだけで嗤笑(ししょう)されるならば、七、八組の男子が一、二組の女子の顔と名を合致させているという事も、嗤笑されてしかるべきである。
 
× 世の中、童貞処女を失っている人間の方が圧倒的に多い。道行く人々、大概そうだ。背筋の寒くなる思い。親も教師も、その口で俺達に小言を言っている訳だ。合掌。
 
× 反逆したい。
 
× 疑心暗鬼と自己嫌悪。
 
× 我思う、故に我あり。
 
× 私の知己のある男が、受験で塾に通い始めた時の事だ。数学のクラスは三つあって彼は真ん中のクラスに位置していたのだが、きつくて三番目のクラスに下げたら、父親にこっぴどく怒られた。「そんなレベルじゃ塾行く意味が無いだろ。月謝をどぶに捨てる様なもんだ。」「でも上げると解らないんだ。」「それはおまえの努力が足りないからだ。一番下のクラスじゃないか。」「なんだ、まるで今のクラスの連中が怠け者ばかりの様な事言うじゃないか。」「当たり前だ! そんなもん、クズの集まりだ。」 とうとう本音を吐きやがった。正体見たり。大人なんて、普段きれいごとを言っていながら、所詮こんなもんである。クズとはなんだ、クズとは。言ってよい事と悪い事がある。彼は一生父親を軽蔑し続けるだろう。
 
× 親は子からしか教師の評価を得られない。従って、子がその教師の悪い所だけ吹き込めば、親の念頭には悪い教師としか映らない。その情報だけによって、口を出す事となる。あわれな生き物である。
 
× 世の中、行き違いだらけだ。どれだけの邂逅(かいこう)が失われたか数えきれぬ。
 
× 人のふり見て我がふり直せ。この諺は( ことわざ)解っている様でいて、実は解ってない奴が多い。ニュースに出てくる様な事をしでかした人間を、馬鹿な奴もいるもんだ、と嘲笑す( ちょうしょう)る人間。自分の行動を振り返れ。またはまわりを凝視して見よ。他人事(ひ と ごと)ではないぞ。うちの学校にだっていじめをする生徒、女生徒にセクハラする教師がいないとは言いきれない。少なくとも限りなく近いものはいるだろう。
 
× 女子に告ぐ。ルーズソックスやミニスカートをいちいち理窟こねて、大人を得心させるような真似はやめろ。実用性もあるかもしれんが、君達はその実用性の為に履いているのか。大人に媚(こび)を売るな。流行、ファッションと言いきるぐらいの反抗の覚悟は持て!
 
× 前項の続き。だからって、私はそれらを支持する訳じゃない。まわりに左右される生き方は嫌いである。自分の意志で履け! 大事な試験とかでも、「これが私のやり方です」と胸を張るぐらい気合いを入れろ!
 
× 燕雀( えんじゃく)安ん(いずく)ぞ鴻鵠(こうこく)の志を知らんや。
 
× この前、中学の友達に会った。時は過ぎるものである。全員が全員、気が置けぬという訳ではないらしい。結局は高校と同じもんだと思いしらされた。皮肉なもんだ。
 
× 点取り虫。
 
× 私が女でもルーズソックスは履いてないであろう。その答えは一言に尽きる。信念もクソもない。めんどいからだ。
 
× 寒いよう。
 
× 僕も両手でバイバイされてみたい。嗚呼(あ あ)、切実なる願い!
 
× 太宰から一文字濁点をとったら、ださい。同音異義語は、堕罪。ふむ。
 
× もう一つ。今度は織田作之助。通称の「オダサク」をワープロで打ち込んだ。一発で「お駄作」と出てきた。笑ってしまった。
 
× 人生が二つあればいい。一つは真面目にコツコツ努力して生きる。一つは何もかも乾坤一擲(けんこんいってき)、我が道をひたすらに突っ走ってやれるだけとことんやってみる。最期はどちらが幸せであろうか。
 
× 死んじまえ!
 
× ???????????????????????????????????????????
 
× 我慟哭(どうこく)せり。
 
× 私がある同好会をつくろうとしたら、侮蔑の目、嘲笑の目でみる奴がいる。いったい何がいけないのか。人と違う行動をとるのが、そんなに間違っているのか。個性を出したいとかぬかして、じっせえ臆病な輩ば(やから)かりだ。大勢に流されて生きている附和雷同の徒は、自分達と違う道を走る人間を排撃するものである。
 
× なんだい、あいつは。男だか女だかわかりゃしねえ。どうも今日、そういう奴が多すぎる。
 
× 疲れたという吐息が多い今日この頃。
 
× 薫陶? 笑止千万である。
 
× やたらと私達の世代のいじめばかりが強調されているが、大人の世界にだっていじめはあるのである。唯、それがあまり表沙汰にならないのは、大人がそれを肯定しようとしないからである。批判して、報道するのは大人だからだ。他人を非難するのは簡単である。案外、いじめについての偉そうな理論を述べている知識人の中にも、いじめをしている人間がいるかもしれない。
 
× 男子より女子の方が、頭が冴えている様である。男は単純な奴が多い。私もその一人だ。
 
× 文章では言いたい事をまくしたてている私だが、本人の前で口を動かす事はまるで駄目だ。相手に諭されて、「さよか、すんません。」とひっこむか、激昂して頭に血が上り、言葉が出てこないかのどちらかである。文章には少々自信があるが、この上なく口下手なのだ。卑怯と罵倒されてしまうかもしれない。
 
× 人を平気で傷つけるこの俺が、嫌われないのが不思議なくらいである。そのうちみんな敬遠していくだろう。陰では既に、そうなっているかもしれぬ。
 
× 私は此処(こ こ)で、高校生文学というものを確立させたい。高校生の視点、観点で、友達、教師、親などその他、高校社会というものを如実にリアルに描くのだ。これは大人になってからはできない事だ。今のうちにやらなければならぬ。さあ、卒業までにできるであろうか。
 
× 高校生になってから、女子の前であがる様になってしまった。だが、その度を越したら、おそらく面罵する事になろう。
 
× 俺が女を見ていて不思議なのは、女は恋にやたらと楽観的だという事だ。いつもプラス指向。うかれて、楽しんでいる。男はどっちかというと、悲観的である。女に惚れるというのは、可愛いという感情の上にあるものなのか、それともカテゴリーの全く違うものなのか。
 
× どうも恋という言葉は精神的で清純に感じ、愛という言葉は肉体的に思えていやらしい。いや、これは完全に私の個人的な見方だが。
 
× 私はどうやら今まで、一目惚れという意味を、勘違いしていた様である。
 
× 悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶悶。

  × 惚れた女を強姦(ごうかん)するという男の心境が、私には毛頭解らん。慕わしい女が悲しむ姿を見るのが楽しいのか? 頭がどうかしてるんじゃないのか。それなら、まだその女を殺す方が解る。ただし、その女は処女である。処女のまま殺して、それを永遠のものとする。俺もいかれてるかなあ。でも、だって、君、もし好きな女の子がいて、その人が何時(い つ)かは処女を失うと考えると、激烈な厭世観(えんせいかん)にとらわれないかい。
 
× 血へどが出そうだ。
 
× 私が因果氏を咎(とが)めたのは、どうもああいう風に自己をアピールする事が、なんだか自分を見ているようで、自分がそのうちにあの様な事をしでかすのではないか、と自分を戒める意味もあったのである。いや、それがほとんどだったのかもしれない。私は昔から自惚れが強く、厄介なヒロイズムがまとわりついているのである。これはどうやら害になる事の方が多いようである。
 
× !
 
× 創作に憧る(あこが)。井原退藏という作家によれば、真の創作は未だに日本に於(お)いて明治以後、一篇もあらわれていないそうだ。
 
× 気違いじみたことばかり書いてきた。ここまでまともに読んでくれた人は、果たしてどれほどいるだろうか。頭に浮かぶことを文字にしたらこうなってしまった。でも、一つ言えることは、これには虚飾がないんだ。ストレートなんだ。私の執筆のモットーは、虚栄を書かずに虚構を書く、なのだが、やはり難しい。でもこれだけは、自信を持って言える。ま、こんな所で筆を置く事にしよう。
 
× &÷』∫√,{)〜※$%〉*・¥「/;、]@〃±〆★【”⇔℃×£゛=♪∴≦◇†〕≡♀♂∞
 
× 繰り返し。リピート。エンドレス。
(平成十一年三月)



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