眠っている姿を見下ろし、乱れた髪を梳く。
意識を失うように眠ったを起こさないように、そっと。
はじめの頃は、今と同じように無理矢理強く抱いて眠らせた。本人には気づかれないように観察していると、4日前後は浅い眠りでもどうにか動くことができているが、それを過ぎると動きが鈍くなる。そんな時に戦闘があれば危険だ。
そうなる前に、を自室へ呼ぶことにした。
好きだとか愛しているだとか、そういった言葉はかけたことはない。
欲しいと言われたこともない。言葉をかけた方が安心するだろうか、とも思うが、自分がそう伝えることが想像できなかった。
ベッドに腰かけたまま、指での前髪をかきあげ、見えた額に唇を落とす。
「ん……?」
軽く触れるだけのそれに気づいたのか、は寝ぼけたまま、瞼を開いた。
「そのまま寝てろ。まだ時間がある」
灰色の瞳に、自分の姿があることに満足する。まだ余韻の残っている瞳は潤み、そのまま視線を合わせていればもう一度と求めてしまいそうだ。
「キャプテンは……?」
「名前を呼べと言っただろう」
「言われた、けど」
「けど?」
「恥ずかしい……」
「クルーは呼び捨てなのにか?」
ローは少々、面白くない。自分が『特別』だから恥ずかしいと言っているのは理解できている。頭で理解していても、感情は複雑なのである。
潤んだままの瞳をローからそらしたは、目元を赤く染めて、顔を隠すように布団をひきあげてしまう。
「そうやって隠されると、暴きたくなる」
医者だからか、元からの性格か、隠されたものを見つけたくなるのだとローは言う。
布団をひきあげたの指を手に取って自身の口元へ持っていき、唇で触れる。びくりと体を震えさせたに気をよくして、ぺろりと舌先でその指を舐めた。
「んっ」
再度体を震わせたは、その指をローから取り返そうと力を入れるとあっさり解放された。
「やべぇ」
ローは呟き、目をすがめる。その表情は重傷患者を前にしたときと同じ表情で、本性丸出しの黒い笑みだ。
の何かが、ローの琴線に触れたらしい。
「抱き潰してぇ」
「明日起きれなくなっちゃうんで、遠慮します」
顔を赤くしながら、それでもNOというをローは見下ろす。
「仕方ねぇな」
その言葉にこれ以上の触れ合いはないと思った彼女は、もう一度寝ようと瞼を閉じる。そこに、温かい感触。
「キャプテン?!」
慌てたように瞼をあげたの呼びかけに、ローはため息をこぼす。
「ペナルティだな」
「えっ!?」
ローはの頬へ唇を寄せると、耳元へ移動させて。
「5回呼ぶごとに、俺の望む通りにしてもらう。もちろん、ベッドの上でな」
「そんな……っ、ん!」
文句を言おうとしたの言葉をキスで塞ぎ、指で顎を押さえる。強引に開かせた唇に舌を差し込めば、ビクリと体を震わせた。
「……んーっ!」
息苦しさからが言葉にならない文句を言えば、ようやくローが唇を離した。
「本当は1回でも呼んだらペナルティを与えたいぐらいだ。――俺の優しさだと思って諦めろ」
まだ文句がありそうなの唇を再度塞いで、ローはシャツの裾から指を忍ばせる。
右手で彼女の短い髪を撫で、忍ばせた左手で薄い腹を撫でて胸まで移動させる。
「……っ」
まだ肌を重ねたのは両手で足りるほどだ。それでもローは、彼女が体を震わせる場所を的確に覚えている。
漏れる声は、すべて彼に吸い込まれてしまう。息さえも閉じ込められて、はローの胸を息苦しいと叩いた。
「は、ぁ」
彼女から零れる息は熱く、濡れた唇に誘われるようにキスをする。
「も、そこばっかり……ヤだ」
男として生活しているには重宝していた同じ年齢の女性からすれば膨らみの少ない胸を、ローはひとしきり撫でまわす。胸の頂をこよりを作るように擦れば、びくびくと体を震わせ、吐き出す息が更に熱くなる。
は胸を愛撫されるのが苦手だ。年齢相応でないことは理解しているし、ローが気にするとも思えないが、それでもみすぼらしいと自分で思ってしまうのだ。
深く口づけ舌を擦り合わせて絡ませながら、胸を弄っていた指を下肢へと移動させて下着の奥へともぐりこませる。
「んっ! んぅ……っ……ぁ、」
「濡れてる」
羞恥を煽るためにわざと口に出すと、体中に朱を走らせるを可愛いと思う。
小さな水音を響かせて指で入口付近を撫でると、はびくびくと体を震わせた。感じると声よりも体が反応して、ローに伝えてくる。
人差し指だけを奥へ入れてすぐに引き出すと、また少しだけ入れて入口だけを撫でる。くるりと指を回すと、の指が縋るようにローへと伸ばされた。
「あ、……あ、ぁ……っ……ふ……っ」
ローは抱き寄せられたままの首筋に顔を埋め、手に少しずつ力を入れる。まだ慣れていないの体を慣らすためだ。
濡れた音が増えたのを見計らって、ローは体を離した。服を脱ぐと、の服も脱がしてしまう。諦めたのか、は荒い息をしながらも、脱がされるままだ。
「マジで嫌だったら、蹴りでもなんでもしろよ?」
毎回、ローからこの台詞を聞いている。声に出せなかったら態度に示せ、ということだろうが、きっと自分は、ローから与えられるもので嫌なものはないだろうと思っている。
「……ァ……ッ! ダ、メ……ッ」
ローの指の腹がざらりとした場所を掠めると、彼女は大きく体を震わせ息をのんだ。刺激が強すぎたのか、息をのんだ瞬間、体が硬直してしまう。
掠めただけでコレか……。
今までほとんどその場所に触れていない。こうなるだろうと予想ができていたからだ。
強い刺激に固く目を閉じたの緊張をほぐすように、その場所をはずしながら、濡れた蜜壺に触れる。触れるだけのキスを顔中にしていると、ゆっくりとだが体を弛緩させていく。
「あ、……っ」
は溶けていくいく視界に、目を細めて薄く笑みを浮かべたローを捉えて、自分以外にもこの表情を見る人がいたのだろうかと思う。視界と同様に熱に溶かされた思考が、の理性を少しずつ蝕んでいるようだ。
「」
少しずつ艶を帯びていたその部屋が、部屋の主が低く名前を呼んだことで、甘く変わった。
「……片時も離したくないと思うのは、お前だけだ」
その言葉に、驚いたように目を丸くしたは、ローがまっすぐに見つめて視線を外さないことに耐えかねて、そっと目を閉じる。
「女に戻れとは言わない。ありのままので俺の横にいろ」
続いた言葉には目尻から涙をこぼす。それをローは舌で舐めとると、唇を重ねた。
熱い体は視野や思考だけでなく、言葉さえも奪っていく。ローの言葉に何かしらの言葉を返したいのに、喉から出るのは言葉にならない声ばかり。
「やっ……!」
蜜壺の中を蹂躙していた指を引き抜くと、その蜜に濡れた指で花芽を撫でる。高くあがった声に、彼は満足そうだ。
「そこ、だめっ」
両手で足を広げさせて隠れたそこを晒させると、の高い声を無視して吸いつく。
「あぁぁっ! だめっ」
舌で舐めて吸い付くたびに、は駄目だと啼いた。
「駄目じゃねぇだろ、舐めるたびにこっちがひくひくしてる」
こっち、と言いながら彼は指を蜜壺へ入れる。途端にあがる声が、珍しく彼女の音色が違うことにほくそ笑んだ。
いつもより執拗なローに、の意識は半ば白い。
刺青をした指が、先ほど体を硬直させたほど感じたその場所を撫でた。
自分の意識とは関係なくひくつく体は、どこを触れられても快感を拾い上げる。
「やだ……っ」
子供のように嫌だと繰り返すに、ローは手加減できなくなりそうだと苦く思う。普段の態度とはまるで違う姿に煽られてしまっている事実を、自分の雄が如実に示していた。
「嫌ならやめるか?」
蜜壺を犯す指を引き抜くと、それだけでが小さく声をあげた。刺激がなくなっても震える体は止められず、彼女は途方にくれているようだ。
その様子を見ながらローは自嘲する。いじめすぎると痛みになることはわかっているが、止められない。優しくしたいと思う気持ちと、枷をはめて自分しか見えないようにしてしまいたいという狂気のような思いが交錯する。
を失ったら自分はどうするだろう、とふと思う。
はぁ、と熱い息を吐いたが、ローに両手を伸ばす。いまだ過ぎた快感に体を震わせながら伸ばした手を、彼は絡めとって自分の首に回させる。
「 」
かすれた声が発せられたが、ローの耳には届かない。
リップ音を響かせてローはにキスをすると、「どうした?」と問いかける。彼女は首に縋りついたまま、熱い息と一緒に声を吐き出す。
「ロー」
名前を呼ばれて、口元を緩める。名前を呼ばれただけで、鼓動が跳ね上がる。こんなことははじめてだ。
「」
愛しさが募ってその思いのまま名前を呼ぶと、彼女は花が咲くようにふわりと笑った。
女だとは理解していたし、体も重ねている。だが、これほどまでに『女』であることを感じたのははじめてだ。
――はじめて尽くしだな、今夜は。
「やめないで、ロ……」
彼女の言葉尻を奪うように口づけて舌を絡ませる。が苦しくないように、時々唇を離すが、それはほんの一瞬。口腔内をあますことなく舐めてから、唇を名残惜し気に離す。
キスの間中、はローの首に縋りついていた。肌が触れているその場所が燃えるように熱い。その熱さが生きていることを実感させた。
「ロー」
熱に浮かされたように名前を呼ばれて、潤んだ瞳を見た瞬間、理性を放棄した。
「、止められねぇぞ」
「ん」
こくりと頷いた彼女は、すがりつく手を首から背中へと移す。その指の動きにローは目を見開き――そのあと、舌打ちしそうなぐらい不機嫌な顔をした。
「ロー……?」
急に変わった空気には伺いをたてるように言えば、彼はすぐに先ほどまでの甘い雰囲気を纏って。
「何でもねぇよ」
首からゆっくりと肩甲骨を撫でて背まで移動したの指に、不覚にも感じてしまったとは言えない。それが意図したものでないから、余計だ。
「おまえは俺のことだけ考えて、感じてろ」
小さく首を縦に振ったの動きに、彼は再び蜜壺へと指を入れ、ざらりとしたその場所を撫でる。
「ああ……っ! んっ……んんっ」
「声出せ」
「ん、……だっ、て……恥ずかし、……っ!」
蜜を塗りこむようにその場所を撫で続けると、蜜壺が指を食むような動きをはじめる。ローはそれを感じ取ると指を増やす。2本、3本と増やして、淫らな音を響かせながら同じ場所を指を出し入れして擦り、親指を花芽へあてると、同じリズムで撫でる。
「あぁぁっ!」
急激な刺激に悲鳴のような声をあげるの、尖ったままの胸の頂を舌で舐めた。咥えて舌を絡ませ、吸い付く。
「ああっ、……まっ、て……ゆっくり、……っ」
の指に力がこもる。与えられる快感を逃がそうとしているのだろう。
ローは胸の尖りから唇を離すと、自分の唾液で濡れた胸に強く吸い付いた。
「ああっ! あ、あ……っ……!」
指の動きはそのままに、反対の胸の頂を散々舐めつくしたあと、同じように吸い付いた。
「んっ! もっ……おねが、……っ」
痙攣する蜜壺から溢れた音に満足しつつ、ローは更に腹に足の付け根にと吸い付く。強く吸い付いたその場所は、ピンク色の花が散っている。
「やっ……! おかしく、なる……っ」
「当たり前だ、おかしくさせてんだよ。――だから、気にするな。……全部、受け止めてやるから」
「あぁぁっ! ……あ、ん、ん……っ……っ!」
「大丈夫だ」
はこの先がいつもと違うことに気付いているのだろう、目を固く閉じていた。怖いのだろうと見て取り、ローは上体を倒しての手を取り指を絡める。
指の動きを速めて強く擦ると、彼女は音にならない声で啼き、息をつめた。
「んっ……」
ゆっくりと指を引き抜くと、一緒に蜜が零れ落ちる。滴が肌を伝う感触にも、は体を震わせた。呼吸を落ち着かせようとする彼女から体を離し、避妊具を着ける。
「挿れていいか?」
こくり、と頷いたの頬に口づけて、蜜をこぼすそこに自身をあてがった。
「あ……! んっ、ふ……は、ぁ」
いつも以上に柔らかくなっているとはいえ、ゆっくりと腰をすすめる。胸につくぐらいの足を折らせて、深く繋げる。
動きたい衝動を抑え込んで彼女の様子を伺うと、体を赤く染めて目を固く閉じている。痛みや苦しさなどが表情に出ていないのを確認して、腰を引く。
「あぁっ!」
くちゅり、と音をさせて引いた分だけ押し込む。それだけで、は体の両横に置いたローの腕に縋った。
「大丈夫か?」
「ん、大丈夫、だから……もっと……」
「煽るな……っ」
人が我慢してゆっくりしてるっていうのに。相手がどうでもいい人間なら、さっさと突っこんで終わりにしている、と物騒なことを胸中でつぶやく。
――淡泊だったはずなんだけどな。
医者という自分の立場が関係しているのか、女性の裸を見ても欲情したりはしなかった。まったくないわけではないが、それでも相手のことを思って自分を律しながらセックスするのは、だけだ。
指で撫でられて酷く感じた場所を、ローの雄で擦られては啼いた。腕に縋る力が強められて、まだもう少し慣れてからがいいだろうと腰を最奥に押し付ける。腰を振りながらの縋る指を自分の指に絡ませると、それに安堵したのか瞳が開かれる。
灰色の瞳を潤ませてローと視線を合わせた。
「ローは……気持ちいい?」
自分本位で動いていないことに気付いているのか、がそう聞いてくる。
「当たり前だ」
最奥を、耐えきれずにコツリと穿つと、が体をびくびくと震わせる。そのまま奥を緩く穿ちながら、ローはニヤリと笑った。
「すげぇイイ。……大きくなってるの、わかるだろ?」
わざと露骨に言えば、の蜜壺がきゅ、と締まる。その瞬間を逃さず腰を動かせば、喉を反らして息を詰めた。その白い喉元に舌を這わせれば、濡れた息を吐き出しローの名前を呼んだ。
蜜壺の中に溢れた蜜を塗り込むように腰を動かし、最奥を穿つ。
「あぁぁっ! ん、あ、あ、あ」
「はっ……」
指で感じたその場所を穿つと、の蜜壺が収縮を繰り返す。
「……っ、だめっ、……あぁっ」
蜜壺の動きが早くなるのを感じて、花芽へ指を滑らす。
「……ッ」
「あぁぁぁぁっ!! ……っ」
繋いだ指が力いっぱい握られて、が体が硬直する。体全体をひくつかせるの最奥へ深く押し込み、雄に絡みつく蜜壺の動きを感じながら欲望を放った。
「……んっ……」
体から抜ける雄の感触にさえ感じてしまうが、ゆるゆると瞼を開ける。焦点の合わない灰色の瞳がローを見つけて、震える指を伸ばす。
手早く自分の後処理をして、ローはその手を取った。
「やりすぎたな。大丈夫か?」
「だい、じょ……ぶ」
掠れた声しかでないようで、は小さく言って少しだけ苦く笑った。
ローは時計を見ると、の髪を撫で、唇に触れるだけのキスを落とす。
「時間になったら起こしてやる」
から体を離そうとしたローを、彼女は腕を掴んで止める。
「一緒に、いて」
「……あぁ」
ローはに腕枕をして、もう片方の手でその体を抱きしめる。
「ん……ありがとう」
は抱きしめられたまま、ローに体を預けて目を閉じた。
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