灰のなか夜のいろ 拍手SS





 
「ようやく海に出たか・・・」

 赤い髪の男はニヤリと笑う。

「10年か・・・」

 煙草の煙を吐き出しながら、額に傷のある男がつぶやく。

「海に出たなら、応援してやらねぇとな」

 嬉しそうな声音で赤髪が言うと、男はため息交じりに言葉を返す。

「お頭が応援したら、アイツは嫌がるだろう。派手なことが嫌いだからな」

 手配書には 『ONLY ALIVE』  5000万ベリーの文字。

「相変わらずの 『ONLY ALIVE』 か」

「あの左目がある限り、変わらないだろう」

 言葉を返しながら、男は赤髪に手配書を渡す。

 灰色の瞳に黒い髪。風の強い日に撮られたものか、風に髪が揺れている。その両目が撮られていることに、赤髪は笑みを深めた。

「目をさらけ出すこたぁないと思っていたが」

 左目に特殊な能力があるため 『ONLY ALIVE』 となっているアイツが、その目を出すということは、相当な覚悟があるからだ。

 遠目から、ほぼ全身を撮られた写真。

 右手には抜き身の剣を、左手にはその鞘を持っているその姿は、凛としていた。そして、その背後に写っているのは、黄色と黒のシャツに白い帽子。そして、長い刀。

 背中を預けあうようにしている姿に、赤髪は目を細めた。

「へぇ・・・アイツがねぇ・・・」

 よく見ると、2人の姿の背後に幾人かの白いツナギが写っている。

「ハートの海賊団か」

 白いツナギはその海賊団の特徴で、船長は億越えのルーキーだ。

「アイツを丸ごと受け止めるヤツが出てきたか・・・」

 先が楽しみだ、と赤髪は言って、手配書をたき火へと放り投げた。














2020.11.08